転生したら神とかチートすぎませんか!?~異世界で始まるメティーのかくれんぼ生活~

りむ

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第1章 神奮励~チョコランタ王国編~

第9話 獣の街ザルク③

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――その後、祭壇に供えられていた大きな猪を男性の獣人達が解体して、女性の獣人達が料理を始め、出来上がったものをみんなで食べるらしい。その準備をする光景は、なんだかお祭りみたいに賑やかで楽しそう。

 さっきは儀式が始まるからジロジロ観察出来なかったけど、行き交う獣人達はみんな獣の顔で、人の姿に近いのはしーちゃんとラビくんだけ。
 正しい種族名はわからないけど、牛、馬、羊、豚、鳥など、ほんとに他種族だけどひとつの一族のように団結してる気がする。獣人という誇り高き絆で結ばれているんだろうな。


「――メティーは料理出来るまで休んでなよ」
「あ! それなら僕の家使って」
「らびくんありがとー」

 しーちゃんの発言にラビくんが続き、私は笑顔でお礼を言う。
 あ! ロウさんの傷も、ラビくんのお家に行けば人目につかず治してあげれるかな?

「ろうしゃんも、ちょっといちょにきてー?」
「ん?」

 不思議そうに返事をしたロウさんを連れて、私はしーちゃんにおんぶされてラビくんの案内でラビくんのお家へと歩き出す。

 そういえば、しーちゃんが人間の街より危ないって言ってたから、もっと怖い所だと思ったけど、さっきから他の獣人達は遠巻きにジロジロ見るだけで近づいてこない。

「あぶなくないよー?」と私の言葉に言いにくそうに黙ったままのしーちゃんを見かねて、ロウさんがニヤニヤして――

「さっき少し言ったろ? 獣人は強き者に従うって。シアは強いから尊敬と憧れの眼差しで見られる……それに毎日をつけてこの街にやってくるんだ」
「ちょ――」
「そのに興味津々しんしんって所だろ!」

 途中しーちゃんは慌てて口を挟むも、私をおんぶしてる都合で強引にロウさんを止める事も出来ず、頬を真っ赤にして俯いた。

「しーちゃん? どーちたの?」
「っ……メティーには関係ない!」
「アリアリだろうが! ふたりはいつもイチャついてんだろ?」
「なっ! メティーちょっと降りて……」

 ニヤニヤ笑うロウさんにからかわれて真っ赤になったしーちゃんから地面に降ろされる。

「……先にラビと行ってて」

 そう言ってしーちゃんは、遠巻きにジロジロ見ている獣人達を睨むと、蜘蛛の子を散らすようにサッと離れ、食事の準備を何食わぬ顔で始める。
 そして、しーちゃんはロウさんと話があると言って、また人気のない入口の通路の方へ向かって行った。

「らびくんは、しゃっきのおはなちわかりゅー?」
「へ!?」

 今度はラビくんが真っ赤になった。しーちゃんといい、なんだろう? 真っ赤になるって事は……恥ずかしい事?
 ロウさんが、さっきみたくイチャつくって言ったのは、ギューしてなでなでの事かな? 寝る時はいつもそうだけど……いつからかしーちゃんが起きたら顔赤くなるようになったのは、ロウさんがからかったせいなんだろうなぁ……。

 視線をラビくんに戻すとまだ顔が赤い。これは聞けなそうだから――もうひとつ気になる事聞こう。
 ロウさんが言うには、しーちゃんが強いから危なくないって事だよね? 今もしーちゃんが睨んだらサッといなくなったし。
 岩壁を持ち上げ殺気を放ったしーちゃん……確かに本能的に強いんだと理屈ではわかるけど、戦うイメージが浮かばないなぁ。

「……しーちゃんはつおいのー?」
「……強いよ……メティーちゃんの事だったんだね」

 ラビくんは複雑そうな顔で私から視線をそらした。

「あのちょきー?」


――首を傾げた私に、ラビくんが優しく笑って歩きながら聞かせてくれたのは、昔のしーちゃんの話。

 約3年前にふらっと獣の街に現れた半獣の存在を、ロウさん達が放って置くはずなく、どんなに殴られても反撃する事のなかったしーちゃん。
 弱い者イジメする子になったらダメって言った頃の事だろう……約束ちゃんと守ってくれてたんだと今になってわかる。あれ? そういえば、なんか……なんだろう?

――そのは、ラビくんが話してくれる次の話を聞く為にどんどん奥へと流されて行ってしまった――

 しーちゃんが、初めて怒ってロウさんを殴ったのは、匂いと匂いの主をバカにされた事が原因らしい。、半獣をそばに置くのは奴隷のように扱う人間だとロウさんはしーちゃんをらしい。

 ロウさんを殴って強さを認められたしーちゃんは、その日以降殴られなくなったと聞いて、ぱったり怪我して来なくなった頃を思い出す。

 しーちゃん、私の為に怒ってくれたんだ――ハッとして私は自分の腕の匂いを嗅ぎ「わたち……くしゃいのー?」と心配で尋ねる。

 ラビくんはクスッと微笑み、突然私を抱きしめるようにして――まさか匂いを嗅いでる!?

「……メティーちゃんは優しくてあったかいお日様みたいで……心地良い匂いかな?」

 あ! やっぱり匂い嗅いでた! 途端に恥ずかしくなって、離れようとバタバタ抵抗してもラビくんは離してくれず――抱きしめたまま教えてくれたのは、獣人はちゃんと嗅げば匂いで性格の善悪ぐらいは見抜ける程に鼻も良い事。

 だから、さっきのしーちゃんの話は、その匂いの主はそんな人間じゃないとわかった上で、しーちゃんを怒らせる為にあえて煽ったとラビくんもさっきのロウさんの一面を知ってわかったみたい。

「……メティーちゃん……ありがとう」
「へ? きゅうになぁに?」
「……僕が今日獣人達みんなに認めてもらえたのは、メティーちゃんのおかげだから……」

 ラビくんはそう言って離れて、照れくさそうに少し赤い顔で微笑む。

 役に立てたならよかった……うん……やっぱり、神の力はこんな風に困った人を助けるのに使いたい!
 私は返事の代わりにニッコリ微笑んだ――


――ラビくんの家に向かう道中は迷路みたいに複雑で、地下だから当然空も見えず方向感覚もなくなり、道がわからない。最初はちびっ子の私の背だから天井も高く見えてるだけと思ったけど、背の高いと思ったロウさんでも天井に余裕があった事を思い出し、この街を作る時の苦労が浮かぶ。

 キョロキョロ見回すと、獣人達の家は壁を掘って空間を作り、入口は布でドアの代わりにして中を隠してるみたい。


「――ここが僕の家」

 ラビくんがそう言って布を持ち上げてくれた。

「おじゃまちまーす」と中に入ると――すぐ視界に入ったのは、ひとりのうさぎの獣人さん! 大きなぬいぐるみみたいで可愛い!

「かわいー」と我慢出来ず抱きつくと――

「あらあら、可愛らしい人間のお客さんだこと。でも、おばさんに可愛いなんて言うもんじゃないよ?」

 そう言ってクスクス笑いながら私の頭を撫でてくれた。
 おばさん? という事は……ラビくんのお母さん? 撫でてくれる手が優しくて心地良くて、私は甘えるようにまたギュッとしがみつく。

「母さん、シアを迎えに行ってくるからメティーちゃん休ませてあげて」

 ラビくんはそう言って、早々はやばやと行ってしまう。

「メティーちゃんっていうのね……この……あなたがシアのなのね」

 ん? また匂い?
 私はキョトンとラビくんのお母さんを見つめる。

「ふふっ。あの子ったらシアのに匂いをつけるなんて……メティーちゃんはモテモテね」

 ラビくんのお母さんはクスクスと楽しそうに笑う。

 んー? さっきから話がよくわからない……あ! 匂いってしーちゃんもラビくんも真っ赤になった話に関係あるのかな? あのふたりは教えてくれなそうだし――

「においー? おきにーり?」

「あらやだ、私ったら……人間の世界ではわからないわよね。獣人の世界では誰かに匂いをつけたり、誰かの匂いを自分につけるのは『君は僕のもの、僕は君のもの』……つまり他の人からすると『この子は僕のだから手を出すな、僕はこの子のものだから他に興味無い』って意味になるのよ」

 え?

「ああ、そうだ! さっきは私だったからいいけど、獣人の男の子に抱きついちゃダメよ? 異性を抱きしめるのは当然匂いもつくから、獣人の間ではなのよ♡」

 ラビくんのお母さんがクスクス笑いながら楽しそうにペラペラと語って教えてくれた事に固まる。

 え? え!? えーーーー!? そりゃふたり共真っ赤になるはずだよ! 知った私も顔が熱い……。

 でも、知らないで私が抱きついてる分はしょうがないとして、そのあとのしーちゃんのギューしてなでなでも、私が頭痛いからでしょうがない事だし。
 ラビくんのも、匂い嗅ぐ為のギューだよね? ギューしなくても嗅ぐ事は出来そうだけど……そのあと私にお礼言うのが恥ずかしくて、顔見ないでお礼言う為のギューだよね!?

――必死にこの顔の熱さを冷やす為に、そうじゃないと思い込む。
 
――すると、入口の方からラビくんの声が聞こえてきた。

「あれ? 父さんも今帰り?」
「ああ……うっ……」
「父さん? どうしたの!? 父さん!」

 聞こえて来たやりとりから、ラビくんのお父さんに何かあったとわかった。
 私とラビくんのお母さんが入口へ向かい、布をめくると――ラビくんとしーちゃんとロウさんがいた。
 そして、うさぎの獣人……ラビくんのお父さんが両膝と両手を地面につけていた。

「あなた! どうしたの!?」
「っ! 離れて下さい」

 ラビくんのお母さんがお父さんに近づこうとしたのを、何かに気付いたようにしーちゃんが腕で近づけないように制する。

「うあああ゛あ゛あ゛あ゛」

 ラビくんのお父さんの声が明らかに

「あなた!」
「父さん!」
「っ! この匂いは! 異形生物ベリアント!? どうなってんだ!?」
「…………」

 ロウさんが初めて聞く言葉を言って何か察したようにしーちゃんを見て、しーちゃんは唖然と言葉を失い立ち尽くす。
 私もわけがわからずみんなを見回して再びラビくんのお父さんに視線を戻すと――ビキッと有り得ない音を立ててラビくんのお父さんの身体がひと回り大きくなる。

「「「え!?」」」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 私とラビくんとラビくんのお母さんが声をあげたのとほぼ同時に、ラビくんのお父さんがそばの壁を殴りドーンと音を立てて壁が砕ける。

 え? え!? 何がどうなってるの!?
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