近所の公園でバスケを教えていたら教え子のチャラショタに溺愛されるようになりました

田村ケンタッキー

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練習試合応援編

前半戦

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「私、まだ頑張れます」

 鏡が喋る前にマホが切り出す。

「絶対に山添さんを攻略してみせます」

 第2クォーターは残り5分。
 マホだけではない。他のメンバーにも炎のような魂が宿っていた。

「お前ら……」

 鏡の考えは即座に佳子を投入することだった。定石にして常識。勝つためとあればどの監督も同じ判断を下すだろう。
 しかし、

「……そこまで言うなら仕方ない。私も腹をくくろう」

 ここはチームの意思を尊重する。愛弟子の、若人のメラメラと燃えるモチベーションを無駄にしたくなかった。
 そもそも佳子を温存すると決めたのは自分。
 最後まで通すのが筋だが、

「負けたら全員で公民館一周だぞ! 青春の一ページとして輝かしく残そうな!」

 赤信号みんなで渡れば怖くない。監督、選手関係なく責任は共有される。
 そう思っていたが、

「いやそれは先生だけでお願いします」
「なんでよ!!」

 一分が経過する。
 作戦も何も練れなかった。悪い空気を断ち切れたとも言い難い。
 しかし全員が前を向いていた。
 佳子は勇ましく向かうメンバーの背中を声で後押しをする。

「がんばれー! マホちゃーん!」

 マホは肩で口を拭きながら呟く。

「……ほんとそういうところ嫌い」

 一方久慈サイドは、

「……追い詰めているのに河相佳子選手を温存するとは我々も舐められたものですね」

 久慈が丸眼鏡をくいっと上げる。

「それとも怪我や体調不良でしょうか」
「どちらにせよ我々のやることに変わりはありません……山添さん、体力はまだ残っていますか」

 椅子に浅く座ってくつろぐ山添は答える。

「こんなの運動のうちにも入りませんよ」
「頼もしい答えで何よりです。ですがあまり張り切りすぎないように」
「張り切る? この私がですが?」

 山添は靴ひもを結ぶ。新品のバスケットシューズでどこを見てもよれていない。



 試合は再開される。
 士気が上がれど状況は改善されない。
 じわりじわりと点差を縮められ、広げられていく。

「こんの……!」

 ロングパスでゴール下のマホにボールが渡る。山添がいないうちに強引にシュートに持っていく。

「させない!」

 しかし敵センターの守備に阻まれ、こぼしたボールもリバウンドで奪われる。

「今度は決める! みんな戻って!」

 マホの指示は素早く、届いてからの実行も早い。

「速攻速攻! あっ」

 すると敵陣営でパスミスが起きる。サイドラインを越える前に山添がこれを拾う。

「……」

 ゴール下に選手が集まり始めているのを見ると一瞬棒立ちになる。

「ナイス、山添! パス!」

 すると早々にボールを手放す。
 一瞬の出来事であったがこれを鏡と佳子は見逃さなかった。

「見てたか、今の」
「ええ、ばっちり」
「しっかりと覚えとけ」
「はい、鏡ちゃん」

 残り10秒。
 またもゴール下で山添の手にボール。
 ただのジャンプシュートが電信柱のようにでかい。

(この場面は仕方ない!)

 迫りくる巨体に一歩も引かず、立ち続けるマホ。

「な!!?」

 山添と一緒に倒れ込む二人。
 シュートはリングからこぼれる。
 即座に審判の笛が鳴る。
 マホにファール判定が出された。

「え~? 突っ立てただけなのに~?」

 とぼけ顔でフリースローレーンの境界線に立つマホ。
 一方の山添は落ち着かない様子できょろきょろと周囲を見渡す。

「山添、フリースロー二本」
「あぁ、フリースローね……」

 スロワーとなった山添はフリースローサークル内に立つ。
 ボールを渡されて5秒以内に投じる。
 二本ともリングに掠らず、手前で落ちていった。

「どんまいどんまい、山添! こんなときもあるって!」
「そっすね……」

 こうして第2クォーターが終わった。ハーフタイムへ。時間は10分。

「すみませんでした……何も成果を上げられませんでした」

 結果は4-24と一気に追い上げられ逆転を許してしまった。

「トータルで24-35……」
 
 10点差が11点差に。
 決して捲れない数字ではない。しかし捲るためにも山添という壁は避けては通れない。

「もっと私がガンガン攻めていれば……楽できたんですけど」

 判断を誤ったと自責するマホ。

「いや、あれで良かった。最初からガンガン飛ばしてたら第2クォーターでクタクタになった状態で山添とやりあわなくちゃいけなかった。だとしたらもっと点差が開いてただろうな」
「……」
「第3クォーターからマホには抜けてもらって佳子を入れる。異論はないな?」

 マホはスポーツタオルを被る。

(……ああ、私の出番はこれで終わりかな)

 黙ってうなずいた。

「今は体力温存しておいてね! あとで絶対にマホちゃんが必要になるから!」
「……」

 今度は黙ったまま頷きもしなかった。
 佳子の意識は試合に向く。

「それでポイントカードは誰がするんですか?」
「は? そんなのお前に決まってるだろ」
「そうですかー、私ですかー……私!? 先生やけになるのはまだ早いですよ!?」
「やけじゃない。計算づくだ。とにかくやってみろ」
「……裸は一人でやってくださいよ」
「やらせないように頑張れよ。いいか、負けたら変態コーチングチームという不名誉を負うことになるんだぞ」
「頑張ります……頑張りますけど……」

 いまいち気が乗らない。
 原因はとうに自覚しているがどうしようもない。

(見てくれるといいんだけどな……)

 もやもやを抱えたまま、第3クォーターに挑む。
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