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第4章
19.『待ちに待った?』
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お泊まり会。
訳あって話はこの時にまで飛躍する。
深く話を掘り下げて少年会議を開こうとした(既に開いているような気もする)が、外は暗闇に包まれており、良い子は急いで帰らなければならない時間となっていたのだ。
その後も何とか時間を作ろうと頑張っていたのだが、ある日は雪実の都合が悪く、そしてある日はなごみが盲腸で倒れ、一日で治すという驚異的回復スピードを見せ、またある日は茜の身体を乗っ取った永陽がふらっと何処かへ行くという始末。
ちなみに、なごみの「治った」はイマイチ信用するに足りなかったので三日間安静にするよう言い、容態が変化していないか度々見舞いに行ったのだが、本人の言う「治った」はどうやら体の方にも良い影響をもたらしているようだった。まったく、人間の意志というものは恐ろしいものだ。それか、なごみの身体が人間の能力を超越しているからだろうか、末恐ろしい。
さて、本題に戻るのだがお泊まり会だ。待ちに待った。
いや、蒼にとっては待ちに待って欲しくなかったのかもしれない。彼はと言うと、祀杞家の前に立ってからというもの、微動だにせずカチコチに固まっているのだ。
チャイムを押す手前で雪実がフェイントをかけている。
「お兄様、緊張しすぎ。」
「っあァ!?うるせーな!早くチャイム押せよ!早く!」
「いや、なんか一人だけはしゃいでるように見えて、気持ち悪さで押せないかな。」
「理由が理不尽すぎないか!?」
___ピーンポーン。
隙ありとでも言うようにコンマ一秒の早さでチャイムを押す星野家の火薬庫。
再度、蒼がカチコチに固まる。それを面白そうに眺めるMs.火薬庫。
「雪だるまみたいだよ、おにい。」
「しっ、仕方ねぇだろ!!!女友達の家に訪ねるのなんて初めてなんだからさっ!」
「うぶねぇ……。」
「永陽っ!?テメェも異性経験ないくせに何をババァみたいな事言ってんだよ!」
「しっつれいね、私にだって男性と関わったことくらいありますぅー。」
ぎょっ、とした様子で雪実と茜はふわりと浮く永陽を見遣る。
そんな妹達の反応に気を良くしてか、得意げに鼻を鳴らしてから永陽はこう公言した。
「ほら、現に言えばこうして蒼と話してるのもカウントされるでしょう?」
「え、あ…ま、まぁそうだけど。俺?」
何故かテレッという効果音が付くくらいに顔を紅潮させ頭を掻く蒼。
「ワァ、おにいはさすがオトコノコだネ。」
「何ていうか、羞恥の度合が変だよね。それにお姉ちゃんに目をつけるのなら私が黙っていられないよ。」
第三者から見えない殺気のオーラを放ち、目を光らせて永陽を庇う頼もしい妹の姿。永陽は満足そうに笑みを浮かべている。
一方身の危険を感じた蒼は紅潮させていた顔を一気に青ざめさせ、永陽から目を逸らした。何だか残念そうでもある。
「男性、というとアイツもカウントされるのかしら……。」
「? 永陽おねえ、なんか言った?」
ボソリと微かに聞こえた単語に茜は首を傾げ、永陽に問うた。
永陽は一瞬、しまったと思った。大急ぎで前言撤回しようと「いいえ、何も」と、何も無い風に取り繕えば、茜はそれ以上干渉する事無くその場は終えた。
「(危ないわ……。いくら身内と言えど、言い触らしていい事と悪い事があるわよね。それに、ここでアイツの存在をバラしてしまえば私の作戦も一気に破綻する……ここは、穏便に行くのが最善ね。)」
冷静に分析していると、かなり遅くなごみの声がインターホンから漏れ出した。
その背後からも賑やかな喋り声が聞こえる。来客は着々と増えていっている模様。
『雪実ちゃん達、ようこそ祀杞家へ……ぇえええ!?』
ドンガラガショォーーーン。
変な音がインターホンから聞こえてきた。誰かが転びでもしたのか。
『なごみぃ~、誰と話してんだよぉ~』
見知らぬ少年の声。
『イタタ……。ちょっ、と、桐真…!今お友達と喋って……』
痛そうに身体を起こすなごみの姿が想像できる。大方勢いよくタックルでもされたのだろう。蒼達はそう勝手に結論付けた。
『え、誰?誰誰~?』
『こら林檎!なごみお姉ちゃんが押し潰されてるでしょ!降りなさい!』
幼い女の子達の声、
『お、マジ?今なごみの例の友達がいんの?…ん?なごみに、友達ィ?』
盛大に笑う声が蒼達の耳にも入った。もう何が起きているのかもわからない。ただ一つだけ、気づいた事がある星野家一行。
____なごみは、祀杞家の中で愛のある下っ端扱いを受けている事を。
訳あって話はこの時にまで飛躍する。
深く話を掘り下げて少年会議を開こうとした(既に開いているような気もする)が、外は暗闇に包まれており、良い子は急いで帰らなければならない時間となっていたのだ。
その後も何とか時間を作ろうと頑張っていたのだが、ある日は雪実の都合が悪く、そしてある日はなごみが盲腸で倒れ、一日で治すという驚異的回復スピードを見せ、またある日は茜の身体を乗っ取った永陽がふらっと何処かへ行くという始末。
ちなみに、なごみの「治った」はイマイチ信用するに足りなかったので三日間安静にするよう言い、容態が変化していないか度々見舞いに行ったのだが、本人の言う「治った」はどうやら体の方にも良い影響をもたらしているようだった。まったく、人間の意志というものは恐ろしいものだ。それか、なごみの身体が人間の能力を超越しているからだろうか、末恐ろしい。
さて、本題に戻るのだがお泊まり会だ。待ちに待った。
いや、蒼にとっては待ちに待って欲しくなかったのかもしれない。彼はと言うと、祀杞家の前に立ってからというもの、微動だにせずカチコチに固まっているのだ。
チャイムを押す手前で雪実がフェイントをかけている。
「お兄様、緊張しすぎ。」
「っあァ!?うるせーな!早くチャイム押せよ!早く!」
「いや、なんか一人だけはしゃいでるように見えて、気持ち悪さで押せないかな。」
「理由が理不尽すぎないか!?」
___ピーンポーン。
隙ありとでも言うようにコンマ一秒の早さでチャイムを押す星野家の火薬庫。
再度、蒼がカチコチに固まる。それを面白そうに眺めるMs.火薬庫。
「雪だるまみたいだよ、おにい。」
「しっ、仕方ねぇだろ!!!女友達の家に訪ねるのなんて初めてなんだからさっ!」
「うぶねぇ……。」
「永陽っ!?テメェも異性経験ないくせに何をババァみたいな事言ってんだよ!」
「しっつれいね、私にだって男性と関わったことくらいありますぅー。」
ぎょっ、とした様子で雪実と茜はふわりと浮く永陽を見遣る。
そんな妹達の反応に気を良くしてか、得意げに鼻を鳴らしてから永陽はこう公言した。
「ほら、現に言えばこうして蒼と話してるのもカウントされるでしょう?」
「え、あ…ま、まぁそうだけど。俺?」
何故かテレッという効果音が付くくらいに顔を紅潮させ頭を掻く蒼。
「ワァ、おにいはさすがオトコノコだネ。」
「何ていうか、羞恥の度合が変だよね。それにお姉ちゃんに目をつけるのなら私が黙っていられないよ。」
第三者から見えない殺気のオーラを放ち、目を光らせて永陽を庇う頼もしい妹の姿。永陽は満足そうに笑みを浮かべている。
一方身の危険を感じた蒼は紅潮させていた顔を一気に青ざめさせ、永陽から目を逸らした。何だか残念そうでもある。
「男性、というとアイツもカウントされるのかしら……。」
「? 永陽おねえ、なんか言った?」
ボソリと微かに聞こえた単語に茜は首を傾げ、永陽に問うた。
永陽は一瞬、しまったと思った。大急ぎで前言撤回しようと「いいえ、何も」と、何も無い風に取り繕えば、茜はそれ以上干渉する事無くその場は終えた。
「(危ないわ……。いくら身内と言えど、言い触らしていい事と悪い事があるわよね。それに、ここでアイツの存在をバラしてしまえば私の作戦も一気に破綻する……ここは、穏便に行くのが最善ね。)」
冷静に分析していると、かなり遅くなごみの声がインターホンから漏れ出した。
その背後からも賑やかな喋り声が聞こえる。来客は着々と増えていっている模様。
『雪実ちゃん達、ようこそ祀杞家へ……ぇえええ!?』
ドンガラガショォーーーン。
変な音がインターホンから聞こえてきた。誰かが転びでもしたのか。
『なごみぃ~、誰と話してんだよぉ~』
見知らぬ少年の声。
『イタタ……。ちょっ、と、桐真…!今お友達と喋って……』
痛そうに身体を起こすなごみの姿が想像できる。大方勢いよくタックルでもされたのだろう。蒼達はそう勝手に結論付けた。
『え、誰?誰誰~?』
『こら林檎!なごみお姉ちゃんが押し潰されてるでしょ!降りなさい!』
幼い女の子達の声、
『お、マジ?今なごみの例の友達がいんの?…ん?なごみに、友達ィ?』
盛大に笑う声が蒼達の耳にも入った。もう何が起きているのかもわからない。ただ一つだけ、気づいた事がある星野家一行。
____なごみは、祀杞家の中で愛のある下っ端扱いを受けている事を。
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