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第6章 さぁ、ファッションショータイムだ!

サキュバスの過去 その5 ~違う何か~

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 ……あの日から数日。
 ウチはあることに気付いてしもうた。

 昼間、外に出たとき、何度か男とすれ違った。
 別にこの時間にいる男なんて、ウチと同族……オトンと同じ種族、インキュバスの人たちや。
 せやけど……インキュバスが通り過ぎるたびに、ウチは無意識に、拒絶するようにそそくさと動いてしもうた。
 ……怖い、男が通り過ぎるたびに、ウチは拒否反応を示してまう。

 男は……ケダモノや。
 欲のためなら、どんなことでもする……それが男の本質。
 現に、あの男たちはウチを誘拐し、欲を満たす道具にしようとした。

 男が怖くて……仕方がなかった。
 唯一話せる男は……オトンだけやった。

「ラピス! どないしたんや!?」

 家に戻ると、恐怖で震えていたのを察したのか、オトンが声を掛けてきた。

「オトン……ウチ……男が……怖い……」
「男がか? せやけど、俺とは話せてるやんか」
「オトン……」
「きっと気のせいや、な?」

 オトンはウチを気にかけてくれたのか、ただの勘違いだと……そう言ってくれた。
 せやけど……ウチにはわかっていた。
 ウチは……男が……怖い。



 ……それから数年経った。
 いつものように稽古をし、男に対する恐怖心を抱き、そして一日が過ぎる。
 あともう数年で……ウチは男の相手をせなあかん……。
 ウチはそれが、とてつもなく嫌やった。
 ……オトンもオカンも、ウチがそんなんやと見破っていた。
 それから間もなく……オカンの方から「体調が優れないので今回の話は見送ってほしい」と言ってくれた。
 女将もウチの事を理解してくれて……「一緒に仕事ができないのは悲しいが、また体調がよくなったら声を掛けてくれ」と言ってくれた。
 そんでもってウチは、しばらく……大体100年もの間、無職生活を送ってた。
 オトンもオカンも収入はそれなりにあったので、ウチは不自由なく暮らせたんやけど……それがなんとなく嫌やった。

 ウチは何度も仕事を探そうとしたけど……これがかなり難しかった。

 ……男にビクビクしてるサキュバスなんてウチぐらいなもんや。
 せやから、この街でウチの事を知らん奴はおらんかった。

「ほら、あの子や、噂の……」
「あぁ、男一人もできない子やろ?」
「むしろ男の方が避けとるんや、きっと」
「おいあいつや」
「あはは、お前声掛けたらどうや?」
「無理や無理や、きっと、そそくさと逃げられるだけや」
「せやな! あはは!」

 ……街を歩くだけで、こんなことを言われる。
 まるでウチは見世物の動物や……。
 ……次第に今やっている稽古も、ただ男の欲望のために行っていることやと……そう考えた。
 何か……違う事がしたい。
 今やっている事とは違う何かを……。
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