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第8章 立ち上がライズ! ドワーフじゃーないと!

ドワーフの過去 その1 ~孤児と老人~

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 ワシは物心ついたころから、両親がいなかった。
 人間や獣人よりも圧倒的に命が長いワシらドワーフにとって、「親がいない」というのはかなり珍しい。
 そんなワシを同族は「可哀そうな子」「もはや救いようのない子」という風に見てきた。
 同族は、決してワシを助けようとはしなかった……だが、そんなワシを助けてくれた存在がいた……それが、「お袋」だった。

「はーい、皆さん。お食事の時間ですよ」

 お袋が食事の時間を伝え、ワシを含めた子どもたちが集まる……そう、ここは所謂「孤児院」だ。
 お袋は人間で、女手1つで孤児院を立ち上げ、ワシのような独り身となった子どもを引き取り、育てている。
 ワシら子どもは種族も何もかもバラバラ……だが、同じお袋の元で住んでいる身同士……お互いに意気投合した。

「ゴルド兄ちゃ~ん、イマルの奴が僕を殴った~」
「おいおい、男がそんなんで泣くんじゃねぇよ」
「ゴルド兄ちゃん! 私のぬいぐるみ知らな~い?」
「あぁ、それなら……」

 長命種であるワシは、同じ子供たちの中では圧倒的に上……お袋よりも年上だった。
 だからか、みんなワシの事を兄貴分として見ていた。

「ありがとうね、ゴルド、助かるよ」
「こ、これくらいの事、年上だから当然ですよ」

 お袋の年齢は60歳……ワシからするとまだまだ若いが、人間としては老人、一人で大勢の子供たちの面倒を見るのは限界があった。
 だから、何とか動けるワシが、家事を全体的に手伝った。
 料理に洗濯、赤ん坊のオムツ交換にまだ小さい奴らの遊び相手。
 そんなことを数年続けていると、子どもたちも真似をするようになり、気が付くと、お袋が動かなくても家事が回るようになった。

「凄いねぇ、みんな立派に成長しちゃって」
「これもお袋のおかげですよ」
「そうかい、ふふふ……」

 次第にワシは……お袋の事が恋愛的に好きになった。
 孤独だったワシを拾ってくれただけではなく、色々面倒を見てくれて……それでいて、逞しかった。
 同族の女や、他の種族の若い女には、不思議と興味が湧かなかった。
 同族はあまり好きじゃねぇし、若い女も、子どもたちを見ていると、少し躊躇してしまう。
 ワシがもし、付き合うのなら……お袋みたいな、歳をとって貫禄のある、逞しい人間の女が良い、そう考えた。
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