夢の記憶【朗読台本集】

憑 桜兎 -Yoru Sakuto-

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夢見の人

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―――――――――――――――――――――




『 読み手様 』♂♀ …夢の中で追いかけられ、ひたすらに走る人。




ーMー…モノローグ。


※一二人称・語尾のみ改変有り


―――――――――――――――――――――





『((息切れ))なん…だ…よ……。なん…な……ん…だよ…』





『((絞り出す))っ…なんなんだよっ……お前っ…っ!……。』



ーMー
あいつは…なんなんだ……。黒くて、煙…?もやみたいで…何者なのか分からない…。わかるのは…あの、獣のような…でもどこか、動物とは言い難い、禍々まがまがしさを感じさせる…アイツのうめき声。

俺は今、得体の知れぬモノに追いかけられている。

呻き声を発するだけの…黒いモノ……。


『頼む…頼むから……来ないでくれ…』


『ここ…どこなんだよ…。暗くて何も分からねぇよ…。そもそも…暗い…のか……?場所自体が、黒に…染まってる…のか…?いや、待てよ…何で、辺りが黒い…暗い…のに、アイツが黒だって…何でアイツの姿が分かるんだ……?…アイツが光って…ない……よな。あかり……も、…ない……』






『あぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁ!!もうっ……っ…何もわかんねぇっ!』



ーMー
俺はひたすらに走り続けていた。ひたすらに喋っていた。…恐怖からなのか?恐怖を紛らわす為か…?それとも…アイツに…伝わるかも…とか、期待…してんの…か…?馬鹿言うな!得体の知れないもんに、通じるわけ…ねぇだろ…。

……なんて、頭の中でも…俺はひたすらに、独りで、喋っていた。


『………恐怖…』


ーMー
ふと呟いていた。…きっと、今の俺を…支配しているモノ。

俺は…アイツから……逃げて……


『…っ!違うっ!!違う違う違う…。アイツなんかどうでもいいんだ…俺は……恐怖…そのものから、逃げたい…んだ…。』



ーMー
生きていれば…誰もが自分勝手だ…。

勝手に救って
勝手に救った気になって
勝手に救われて
勝手に救われた気になって

……。

勝手に産んで
勝手に生きて
勝手に…

勝手に……

喜んで、悲しんで、怒って、無になって、怯えて、期待して、楽しんで……

勝手に死んで……((溜息))



『((呟く))…生まれる時だけ…勝手じゃ…ないんだ…な……』





『は!?…っ……まだ居たのかよ!!』







『あぁぁぁあぁ!!…っくそ……』



ーMー
俺はそこで、再び立ち止まった。

もう…疲れた。逃げて何になるんだ…。


『いいよ……なんでも…来いよ…』


ーMー
俺は声のする方へ向き、目を閉じた……





―――――。





『っ……((息切れ))…っ……うっ…((嘔吐))うをぉえあぁぉぉ………』


ーMー
内容物の無い嘔吐をした。[[rb:泪 > なみだ]]が流れていた。感触の悪い汗を…大量に流していた…。


『…っくそっっ……』


ーMー
絞り出すように[[rb:漏 > も]]れた言葉…。

頭を抱えた俺は…


『…夢……だった…の…か……』



ーMー
そう小さく…呟いた。

そうして、あんな夢はりだ…と……


その時の俺は、思っていた…。










END
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