牧師に飼われた悪魔様

リナ

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第十七章「死を告げる者」

★さようなら、

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「ざ、く?」
『だからなんで会ったこともないお前に俺様の名前を知られてんだよ。気持ち悪ぃなぁ…』
「…っ」

 俺は意味がわからなくて、何も言えなくなった。

(会ったこともないって…どうして…そんなことを言うんだ…??)

 俺とザクはずっと前に教会で出会っている。それから色々あった。一緒に教会に住んで、あらゆる事件に遭遇してその度に支え合いながら乗り越えてきた。なのに。なのに…。

(なんでそんな、他人を見るような目で俺を見るんだ…ザク…!?)


「あれ、これは…どういう事だ?」


 レインも不思議そうに俺達のやり取りを見ていた。それを見たレイがぼそぼそとレインに耳打ちする。

「…ああ、なるほど」

 俺とザクを交互に見て、納得した、という顔になる。

「面白いな」

 くすっと笑ってレインは何の躊躇いもなくザクに歩み寄っていった。

「やあ、悪魔くん、はじめまして」
『ああ?てめえも何者だ』

 レインを見て掴みかかるわけでもなく、不審がって睨むだけのザク。やっぱり様子がおかしい。

(レインと俺を忘れてるって…ことなのか?)

 レインは人の良い笑みを浮かべてザクに語りかける。

「俺はただの人間だよ。まあ、今はそんなことはどうでもいいよ。それより、君に手伝って欲しいことがあるんだけどいい?」
『は?』
「あの人間を襲ってもらいたい、ここらの悪魔と一緒にね」

 あの人間、と俺を指差してくる。ザクは目を細めて俺を観察してきた。品定めするような視線に、俺は一気に落ち着かない気持ちになる。

『へーを、俺様が?』
「ああ、好きなようにしていい」
『言っとくけど遠慮とか手加減はしねーよ?せっかくの玩具を壊されてもいいのか?』
「殺されたら困るけど、それだけ気をつけてもらえればなんでもしていい。手足がなくなったって問題ないし、気が狂ってもいい。狂う前に呼んでもらえると助かるけど、まあその辺りは臨機応変にね」
『へえ…、同じ人間相手なのに、情け容赦ねーのな』
「はは。まあ、ちょっと手を焼いていて、彼も少し痛い目をみた方がいいと思ってね」
『少しってレベルかこれ?』

 けけ、と笑って檻に歩み寄る。ザクが鉄格子の向こうから、俺を見下ろしてきた。色んなモノで汚れている俺を上から下に眺めていく。

「ざ…く……?」

 ザクが目の前にいる。何度も夢見た瞬間なのに、全然嬉しくない。だって今目の前にいるザクは…まるでサーカスの動物でも見るかのような、好奇な瞳で俺を見てくるのだ。

 ザクは決してこんな下卑た目で俺を見ない。


「違う…ザクじゃない…!お前は、誰だ…!!!」


 噛みつくように言うと、目の前の悪魔はスウっと目を細め、鉄格子に手をかけて、俺を覗き込んできた。近くで見れば見るほど、ザクの体そのままで、余計意味がわからなくなる。

『俺様はザクだぜ、人間』
「ちがう!!ザクじゃない…!!」
『はあ?さっきは俺様をザクって呼んだのに、今度は偽物扱いかよ?失礼な上に意味わかんねー奴だなぁ』
「お前がザクなわけがないっ!」
『…ま、どっちでもいいか』

 そういってザクが牢屋に入ってくる。ぱさっとマントを脱いで俺の前に屈みこんだ。


『ふーん』


 真っ赤な瞳に見つめられ、体の奥が熱くなる。同時に動けなくなった。蛇に睨まれた蛙のように体は停止して、息すらとめてしまう。なのにその恐ろしいほど威圧感を放つ男から目が離せない。

『ボロボロだけど、元々の顔はすげえ綺麗だな、人間』
「…っ」
『けけ、どろどろなのもソソられるぜ?』

 顔を近づけられ、思わず背けた頬をぺろっと舐められる。それだけでも俺の体はゾクリと反応してしまう。触れる指が、舌が…ザクだと体が教えてくるのだ。

 これはザクだ、と。

(でも…こいつは俺のことを知らないって言った…ザクは、そんな事、冗談でも言わない…!こんな事もしない!!)

 最初は、俺に怒って忘れた演技でもしてるのかと思ったが、目の前のザクにそのような素振りはなくて、本当に俺の事を知らないという感じだ。余計に頭が混乱する。

(どうして…ザク、俺の事を忘れちゃったんだ…?)

 体を確認するように撫でられた後肩をぐっと掴まれた。

『すげえ有様だな』
「…」
『とりあえず、味見してみっか』
「ーっ!!」

 ぐいっとすごい力で押し倒される。上から挑戦的な瞳で見下ろされ、ゾクリと鳥肌が立った。まだそこにレインやジャックルがいるのに。こちらを好奇な目で見ているのに。

「い、やだ!…ザク!!」
『けけ、やっぱりザクってよんでんじゃん』
「ああっ…ゃ、め!…っはあ、あ」

 両手を拘束されて首を舐められる。俺の弱いところをすぐさま見つけて攻めてくる。悔しいけどすごく気持ちよくて、酷く混乱した。ザクの偽物が与えてくる熱い刺激に体が震えた。そのままザクの手が下半身に伸びてくる。

『けけ、ぐちゃぐちゃだな』

 指をいれて、確認するように混ぜた。中に入っていた液体が零れでてくる。

『他のやつのなんか汚ねえし、掻きだすぜ』
「あああっ、や、ぬっ、ぬけ!!…んあああ…っ!」

 ザクの腹を蹴ってみたが、気にせずどんどん指をいれてくる。

『けけ…すげえな、これ何人にマワしたわけ?』

 指を入れたまま、ザクが後ろに向く。尋ねられたレインはさあ?と肩をすくめた。

「俺も詳しくは知らないけど、三日はずっとやられっ放しかな」
『そりゃまた…お疲れ様、だな』

 ちゅっと胸に吸い付かれた。与えられる甘い刺激がもどかしくて、やめろと腕で突っぱねる。しかしザク相手にその程度では抵抗のうちにも入らないだろう。


『じゃあちょっとぐらい乱暴にしても大丈夫そうだな』


 にやっと笑って、腰を押し付けてくる。それはもう硬くなっていて、いつでもいれられそうだった。


「…っ!!やめっ…ああああっ!!!」


 中に懐かしい質量が、入ってくる。

(ザク……!)

 ザクだ、これはザクだ。

 引き裂くような乱暴さに体が引き攣りそうになった。でも、それでも体の奥から甘い快感が溢れてくるのも、確かで。

(いやだ…違う、ザク、じゃない…こいつは、ザクじゃ、ないのに…!)

 必死に心と戦う。

 けれど、体はザクを覚えていて…悪魔共にぐちゃぐちゃにされた心が、体が、満たされていくのが悔しかった。全てをいれ終えて、ザクはふうっと息を吐き出した。

『けけ、きもちーなぁ…』
「はあ、っはあ…んあ、う…ハア、」
『ふーん。散々嫌々言っといて、お前も、満更でもなさそうだなぁ?』
「ーっ、あ、さわる、な!ああっ」

 反応してる前を握られ、甘い声が漏れる。ザクは面白そうに俺のを弄り、眺めながら、腰を動かしぐちゃぐちゃと中をかき混ぜた。

『けけ、ひどくして喜ぶとか…とんだ変態だな、お前』

 耳元で囁かれ、顔が赤くなる。

 もう死んでしまいたい。


『にしても、すげえ気持ちいーな…これ、癖になりそうだわ』


 ザクはそういって何度か激しく中を味わった後、


『じゃ、ひとまず一回、いっとくかな…っと』


 そう告げられた次の瞬間、奥の奥にびゅっと熱い飛沫が叩きつけられた。


「あああぁっー…っ!!」


 そのとき、自分の中で何かが崩れる感じがした。今までなんとか抱き続けていた最後の希望を手放す、糸が切れるような脱力感に襲われる。

(もう…)

 中にあるザクのものがどくどくと震え欲の塊を吐き出し、次の瞬間勢いよく引き抜かれた。


「ーっあああ、…ハア、、う……」


 床に倒れ込み、耳鳴りがキーンと響く。脱力した状態で、俺は目を瞑った。

(もう、つかれた…)

 これ以上、何かを考えようとしたら、気が狂ってしまいそうだ。

「はあ…はあ……ん、ハア……」

 四六時中悪魔に襲われて

 舌を噛もうとすれば薬が入ってくる。

 体の自由もない。

 常に体は汚れたままで、

 逃げ出す体力もない。

 そもそも周りにはたくさんの悪魔がいて見張られた状態。

(どうやったら…終われる…死ねるんだよ…)

 ザクに見捨てられたのなら

 もう俺を助けに来てくれる人はいない。

 誰か、誰か、助けて。


『よし、もう一回』


 ザクが服を脱ぎ、また襲い掛かってくる。その姿を見て俺はのろのろと顔を上げた。

(そうだ…こいつに…)

 最後の希望を賭けて、その悪魔に腕を伸ばした。

「お、い…」
『ん?』

 俺の片膝を自分の肩にのせ、再び挿入しようとしてるザク。動きを止めず、中に突きたてながら前屈みになって俺の顔を覗きくる。


『どうしたぁ人間?』
「おね、がい…おれを、…」
『お前を?』

「ころし、て…」

『…はあ?』

 ザクは驚いて腰の動きを止めてしまった。チラリと背後のレイン達を確認してから、ザクにしか聞こえない音量で告げられた囁きにザクは首を傾げる。

『殺すって…なんでだよ、あいつらにお前は殺すなって言われてんだぜ?』
「俺のこと、好きなだけ…使って、いい、か…ら、お前の望むように、俺もやるから……」

 ごくりと、カラカラに乾いた喉を鳴らし、もう一度口を開く。

「だから、最後に…レイン達に渡す前に殺して、くれ…」
『な…?』


 (きっと…これであってる)


 ここが、
 このときが、

 死神に告げられた死の瞬間なんだ。

 そう悟った俺は、ザクの手を掴んで自らの首に持っていく。絞めて、と力を込めれば下にあったザクの手がピクリと震えた。


(さようなら、ザク)


 こんな終わり方、嫌だけど。

 でもお前に見られながら最後を迎えられるなら―――



「お願い…ザク、俺のことを忘れていても…それぐらいは、できるだろ、ばか悪魔…」

『お前…』



 悪魔の指に力が入る。



 グググッ…



 この場の誰でもない。

 ザクに殺されるのなら、それでもいい、と思った。






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