ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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十話

★恋人のワガママ

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 デートと言いつつ、二人で歩いたり話したり…なんて事はなく、ほとんど直行する勢いでラブホに入った。いつもは通りすぎるだけの歓楽街のラブホに、こんな風にちゃんとした目的で入るなんて新鮮だった。

 バタン、ガチャン

「んん、…はぁ、…ちょ、んむ、ん…」

 部屋に入ってすぐ、まだ扉も閉じきってない状態で唇を奪われた。抗議の声もすぐに飲み込まれ、呼吸を整える余裕もない。舌が、掌が、触れ合う体全てが熱い。

「ンンッ、ん、ふぃん、ま、まって、」

 俺としてもなるべく早く抱いてほしかったが、流石に靴も脱げてない状態では嫌だし桐谷に触られた体も綺麗にしたい。ぐぐっと目の前の胸を力一杯押し「待て」と必死に伝える。フィンはキスの合間に、視線だけこちらに向け、形の良い眉をスッと寄せた。

「待つ時間は終わったんじゃないのか」
「おわった、けど…シャワー…、お、い、んっ、なめ、るなっ…」

 ちゅるりと耳に吸い付かれ、すぐ後にぴちゃりと舌先が差し込まれる音がする。他の音が何も聞こえなくなるほど大きくちゃぷ、ぴちゃっと濡れた音が響いて…ぞわぞわっと体が震えた。

「フィン、ンぁ…っ、はぁ、」

 耳を愛撫されながら肩から腰へと熱い掌が移動していく。帯を緩められると浴衣の前も自然と開いていき、そこから手が差し入れられた。少し汗ばんだ俺の体を優しく撫で、脇腹、腹へと指先が移っていく。どこもかしこもフィンに触れられたら気持ちよくて、それだけでイケそうだった。

「んあ、ま、まじ、で、んや、やばい、からっ」

 このままだと本気で玄関セックスコースになる。それだけは避けなくてはいけない。俺は必死に身を捩ってフィンの腕から逃げだし、倒れ込むようにして室内の廊下を進んだ。靴は途中で蹴りながら脱ぐ。

「ライ…」

 どうして逃げるんだと言わんげに据わった目がこちらを向いていた。

「お、落ち着け、フィン、別に逃げるわけじゃねえから…体洗うだけで…少し待てばすぐにやれるから、な??」
「…もう一秒たりともライと離れたくない」

 瞬きすら惜しい、と切羽詰まった顔を向けてくる。今のフィンはヘブンの抱き潰されたあの日に少し似ている。冷たい怒りは感じないが、振り切れ方はほぼ同じだろう。
 (そりゃそうか…)
 一週間もお預けされ、桐谷の元に通う俺を見守るだけの日々。それはそれはストレスが溜まっただろう。わかる。俺も逆の立場だったら今すぐにでもここで抱こうとするだろう。
 (でも、やっぱり駄目だ、桐谷の触れた体でやりたくねえ…!!)
 俺としても譲れなかった。

「フィン…わかった、じゃあ、一緒に入ろう…!それなら離れねえし、いいだろ?」

 ベッドルームの壁に下がりつつ提案すればフィンは眉間の皴を濃くした。

「却下だ。またライをのぼさせてしまう」
「洗うだけならのぼせねえよ…!」
「二人で一緒に入って洗うだけで済むわけがないだろう」
「うっ…」

 そりゃそうだ。事後ならともかく焦らされた後の二人きり(しかも真っ裸)で手が出ないわけがない。…だが、それでも

「フィン、頼むって」

 ヘブンの時は火事で使えなくなってたから諦めたが、今回はちゃんと洗える場所が用意されてる。きちんと綺麗になってから抱き合える選択肢が残ってるのだから、それを諦めたくはない。

「俺の体…今すげえ汚いか、んむっ!んんー!」

 背に壁があたり「あっ」と一瞬視線を外したのがダメだった。壁ドン状態で右手首をとられ…また唇を塞がれる。辛うじて自由な左手で肩を掴むが、本気のフィン相手に片手では敵わない。フィンは空いている方の手で半勃ち状態の俺のに触れてくる。強めに上下に擦られ…そのわかりやすい刺激に、たまらず体の熱が戻ってくる。

「ん、はぁ、あぁ…っ、ふぃ、んっ、うぅ…っ」
「ライは汚くない。だが、どうしても洗いたいというなら…一つ条件がある」
「…条件…?」
「ああ、“これからライは部屋を出るまで自分の体を触れてはいけない"この条件がのめるならシャワーに連れて行こう」
「…いや、それじゃ洗えねえだろ…」
「私が洗えばいい。この条件が嫌なら…悪いが、今ここで抱かれるのを受け入れてくれ」

 もう逃がさないとオレンジの瞳が告げていた。

「フィン…っ」
「この一週間がライにとって必要な時間だった事は理解している。だが、恋人としては、これぐらいのワガママを言う資格はあると思うのだが」
「…っ」

 ごもっとも。ぐうの音も出なかった。

「…わかった、よ」

 俺が頷くと、フィンはやっと眉間の皴を解して、俺の体を抱き上げた。そのまま進み廊下に戻る。両手が塞がるフィンの代わりに俺がドアノブを傾け、体を滑り込ませると結構広めの浴室が広がっていた。掃除の行き届いた白いタイルの壁と床。二つの壁に面したシャワー付きの大きいバスタブ。ライトアップしてる上に四人ぐらい入れそうな広さで、THEラブホという感じだった。逆側の壁には個別のシャワーブースもある(仕切りは透明なので中は丸見え)。

「あちらでは狭いな」

 フィンが個別のシャワーブースを見て呟いた。確かに俺とフィンが一緒に入って洗うには狭い。

「じゃあ別であら…」
「一緒にバスタブに入って洗えばいいな」
「…はい」

 もう好きにしてくれと諦めの境地で頷く。入院期間中、フィンには介助の一環で全身をくまなく洗われている。恥ずかしさは今更だろう。俺が腹をくくったところで、ゆっくりとバスタブの中に下ろされた。肩から浴衣を抜き取られ、フィンも手早く自分の浴衣を脱ぎ、向かい合うようにして中に入ってくる。

「こうしてホテルでライの体を洗うのは水族館デート以来か」
「あん時とは状況がまるで違うけどな…」
「ふふ」

 まだ付き合ってなかったし、洗い合う事になったのもフィンの怪我が理由だった。必死に友人同士(仕事仲間?)と言い聞かせていたあの時の俺達は、今思えばかなりピュアだ。

「懐かしいな」

 フィンが淡く微笑みながら俺の体にお湯をかけていく。汗でべたついた肌が洗い流されていくのは純粋に気持ちよくて、ふうと短く息を吐いた。

「気持ちいいか?」

 コクリと頷き、バスタブから目の前の体に視線を移す。立ったまま向き合ってる状態だから互いの体がよく見える。浴衣では見えなかった部分が晒され…見てはいけないものを見てしまったような気分になる。

「ライ、ボディーソープを取ってくれ」

 背中側の壁に取り付けられたホルダーから目的のものを取りバスタブの縁に置く。

 コト…

 面倒くさいので全て並べておいた。フィンはその間に泡タイプのボディーソープを掌に出し、俺の肩や首に塗りつけていく。

「手を私の肩に」

 言われるままのせると、肩から手首へと順番に洗われた。手首まで終わると、両手で右手を包み込まれる。フィンの長い指先が掌を、手の甲をするすると撫でていき、指の股までしっかりと洗われた。もちろん気持ち良いのだが、手は妙に敏感で、段々とくすぐったさが募ってくる。
 (洗ってるだけ洗ってるだけ…)
 言い聞かせ必死に精神統一するが、腕の仕上げにと脇を触られた瞬間、それが爆発した。

「んあッ、ちょ、くすぐったっ…!!」
「ライ暴れないでくれ。転んだら危ない」
「む、むりっ…!ううっ!」

 脇を人に触られて平気でいられる人なんていないだろう。抗議するように涙目で睨み付けると、フィンは「危ないから縁に座ってくれ」と諭すように言ってくる。仕方なく、背中を壁に預けつつ縁に腰かけた。フィンの手が手首を壁に縫い止めたままだから片手だけ上げてる姿勢になる。

「フィン…腕はなし、うあっ!?なっ、もう、そこは、あッ、ンうッ」

 上げたままの腕の根元、脇に泡を塗りつけられる。新たな耐久プレイなのかと思うほどくすぐったさがMAXとなり、むずむずとした感覚の下に妙な気持ちよさが込み上げてくる。やばいやばい。脇洗われてるだけで勃ったら流石に恥ずかしすぎる。

「ちょ、フィン、まじっ、ひっ、そこ、禁止っ!」
「ダメだ。狼が鼻を突っ込んでいたししっかり洗わなくては」
「狼が触ってたのは服の上っ、うぁッ」

 問答無用だと、左右それぞれ最低一分はかけて洗われた。身を捩るのも疲れて、ぜえぜえ息を弾ませながら壁にもたれかかり、顔を上げれば…ジッと見つめてくるオレンジの瞳とぶつかった。

「…あ、」
「次は胸だな」
「い、いや、まっ、胸はいいっ!」

 こんな熱がこもり始めた体で胸を洗われたら確実に勃つ。というかもうほとんど勃ってるけど。フィンは俺の言葉をさらりと聞き流し、掌に泡を追加していく。そのまま鎖骨から胸下までするすると撫でるように塗り付けられた。

「んんん…っ」

 こっちもくすぐったいが、快感との比率が全然違う。脇が9:1でくすぐったさが大半を占めてるのに対して、胸は6:4…いや5:5で快感もせめぎ合っている。しかも胸の中心も避ける事なくぬるぬると擦られるからたまらなかった。
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