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三話
★洗うだけ
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「お手洗いですか?ご案内します」
「いや、一人で行け…」
「ご案内します」
「はい…」
柴沢に見張られながらトイレに向かう。縁側を通ったおかげで少しだけ外が見えた。高層ビルなど何かしら見えれば今どこにいるのかというヒントになる。しかし家をぐるりと囲ってる壁のせいでとにかく視界が悪い。
(くそっ…マジでどこなんだよここは!)
屋敷の外に目印になりそうな建物は見えなかった。建物が壁の先に見えないということは高台に建てられてるのだろうか。まさか山の上とか。いや、三時間で行ける範囲だから県内ではあると思う…いや思いたいが。
「こちらです」
案内されたトイレに入る。中には個室が二つあった。片方は埋まっていたのでもう片方に入る。
(だめだ、ここの窓も出られそうにない…)
窓は子供がやっと通れるぐらいの大きさだった。ここからの脱出は不可能だ。仕方なく用を足して個室から出た。すると横の個室も同時に開く。お互いが横をみれば
「うわ!」
「わ!」
“俺”がいた。いや、正しくは和服を着た俺だ。自分のそっくりさんに驚いていると“俺”が手を振ってきた。
「やあ、びっくりした~本物のライじゃん」
「その口調…ユウキか?」
「正解!どう?似てるでしょ」
「似てるっつーかそのまんまだな」
自分が目の前にいるみたいで変な感じだ。ここでやっと俺は気付いた。
「って待てよ…!お前まさかドッペルゲンガーの正体だったりする??」
「え?」
商店街で流れているドッペルゲンガーの噂の事を話す。
「へえ、そんな噂が広がってたんだ」
「へえじゃねえよ。絶対お前のせいだろが!どうせポンポン変化しては歩き回ってたんだろ」
「そうだけど~俺だって試験のためにやってたんだから仕方なくね?」
商店街は人が多いからいざとなったら逃げやすいし、知り合いを探すのにも効率的だと思ったんだよねと話している。確かに「変化する」「知り合いを探す」「変化の力をバレずに」を目的にするなら商店街はぴったりの場所だろう。だからといって幻獣たちを怖がらせる(噂が広がる)のは考えものだ。
「ちぇ。そっくりさんだって気付いたなら声かけてくれてもよかったのに。皆照れ屋なんだから~」
「笑い事じゃねえ。お前のせいで困ってる人がいるんだぞ」
「じゃあ試験を止めろって?それは流石に無理だよ。俺も人生がかかってんだから。他の場所でやるとしても結局変な噂は流れちゃうし解決はしないよ」
「…」
「だからライが手伝ってよ。俺の知り合いとして演じてくれるか、一緒に作戦考えて。ライがいればきっと合格できると思う!そうすれば俺は試験合格!商店街の噂も消える!バッチリ解決じゃん!?」
「バッチリって…試験合格したら俺は帰れるのか?」
「ん~?」
どういう事?ととぼけられる。この距離で聞こえないわけがないのに。このガキ一発殴ってやろうか。
「ねえ、それよりもさ。さらっと受け入れられちゃったけど、俺に化けられて嫌じゃないの?」
「?…ああ別に」
「そう…結構気持ち悪く思う人多いんだけどね。不快にさせてなくてよかった」
そういってユウキは自分の姿に戻った。そのまま外に出る。俺も後ろから続けば柴沢は姿を消していた。空には一番星が光っていてすっかり暗くなっていた。
「もういい時間だね。ライ、このまま風呂入ろう!なんとうちのはサウナ付き!すごいっしょ!」
「…」
「ほら、もう夜になったし色々考えるのは明日にしとこ!ライの連れの人も流石に帰っちゃったでしょ」
フィンに限っては諦めて帰るという選択肢はないと思うが。それを説明しても理解してもらえなそうなので止めておく。
「だから家でゆっくりしようよ」
な~?と上目遣いで見つめてくる。背丈はほぼ同じだし体格も学生とは思えないほどしっかりしてるので「可愛い」という見た目からは程遠い。
(俺一人だと行動範囲が狭いしユウキといた方がチャンスがあるか…)
「…はあ。わかった。風呂入るか」
「おっしゃあ!着替えはあっちの部屋に予備があるはず!和服しかなくてごめんだけど!」
「着れるものなら何でもいい…おい、引っ張るな」
「こっちこっち!」
手を引かれる。ルンルンと楽しげな背中。
(どうしてこんなに懐かれたんだか…)
ふとユウキの今までの人生を想像してみた。変化の能力を持ち、一族を背負う立場で生まれたユウキ。
(かなり苦労してるんだろうな)
変化のことを他人に話せず、ほとんどの悩み・葛藤を家の外に持ち出せないのだ。かといって家の誰かが家族以上に寄り添ってくれてる感じはない。ユウキを見ていると、放任されて育った印象を受ける。家の者達からも、外の人間からも距離を置かれて育つのはどんな気持ちだろうか。
『こんな風に普通に接してくれて…優しくしてもらえたの初めてだった。すごく嬉しかったんだよ』
先ほどのユウキの言葉。あれは嘘じゃないんだろう。同年代の友人はおろか、俺みたいに言い返してくる者すらいなかったはずだ。
(俺が好きというより新鮮な反応を見せる存在に面白くなってるだけなんだろうな)
どっちにしろ同情しないわけにはいかなかった。強く握りしめてくるユウキの手を振り払わず、俺は大人しくついていくのだった。
***
「はい、脱いで脱いで!行くよ!」
「そんなに急かすな…一人で脱げるって」
「えー早く入りたいんだもん」
「だもんってその年で言ってるとキモいぞ」
「ひど!わかったよ、もう言わないー」
「よし」
素直に言う事を聞いたので頭を撫でてやる。ユウキは嬉しそうに目を細めた。
「えへへ、もっと撫でて~」
「頭を押し付けるな」
「ちょっ!待って!ライ、置いてくなー!」
ユウキを置いて先に中へ入った。まるで旅館か?と言いたくなる立派な風呂が広がっている。ご丁寧に体を洗うブースまであった。体を洗うために腰かけるとユウキも横に座ってくる。そして遠慮なく体を覗いてきた。
「ライって細いと思ったけど、うっすら筋肉がついてて綺麗だね。アートだ」
「おい。裸見て褒めるのは恋人だけにしろ。変態と間違われるぞ」
「えーでも俺的にライは恋人枠だから変態になってるつもりないよ」
「誰が恋人枠だ。丁重にお断りだ」
「ちょっとは考えてくれてもいいじゃん!ねえねえ、洗いっこしない?」
「はあ?!」
泡のついた手を近付けてくるので奴の額を掴んで距離を取らせる。だがユウキは諦めず腕を伸ばしてきた。ぴとりと掌が体に触れてくる。
「すべすべだね」
「このっ…離れろ!んっ、怒る、ぞ!」
「もう怒ってるじゃん」
ちゅっと俺の腕に口付けてくる。動揺した隙に腕をほどいて距離を詰められた。目の前にユウキの顔が迫ってくる。
「っ…、ユウキ、」
「大丈夫、洗うだけだから」
ぬるりと泡のついた手が体の上を滑っていく。その刺激だけで背中がゾクリと震えた。ヤバい。濡れた手ってこんなにくすぐったいのか。一歩間違えれば気持ちよさに繋がりそうだ。
「やめっ!ろ、おいっ、どこ触って…!」
「全身洗わないとでしょ?俺が全部洗ってあげるから」
優しく体を撫でながら「今日から毎日ずーっとね」と恐ろしい事を言ってのける。
「っっ!」
いくら育ちが特殊だったとしても、学生のうちからこんな調子ではユウキはどんな大人になってしまうのか。想像するだけで恐ろしい。早めに矯正しないとかなりの被害者がでる気がする。そんな事を考えているとユウキが面白くなさそうに頬を膨らませた。
「ライ、考え事?俺が触ってるのに俺以外のこと考えるなんて余裕だね」
「…っ、お前のこと…だっ、つの!」
「へ?」
「考えてたのはお前の事だ!他事考える余裕なんてあるかよ…」
別に嘘つく必要もないので正直に(半ギレで)言えば、ユウキは顔を真っ赤にして照れた。
「そっそんな…ときめかせないでよ…」
「してねえ…ひっ!お、押し付けんな、バカ!」
「ライが可愛い事言うから…おっきくなっちゃった…」
どうしよう、と上目遣いされても下が可愛くない状態なので全然、全く、これっぽっちも可愛くない。やめろと遠ざけようとしたら手を掴まれ口に運ばれる。そのまま指を強く吸われた。
「じゅるっ…ライの指、美味しい」
「お前!頭おかしいぞ、落ち着…っあ、こら!やめっ…!」
「頭おかしいのはライの方だ。こんなに魅力的で、煽ってきてるのに無自覚なの?こんなの…悪魔だよ…」
「誰が悪魔だ…!ああっ…!」
泡のついた手で胸を弄られる。最後にそこに触れたのは真人だ。胸の奥がぎゅっとなる。だが体は単純なもので、久しぶりの刺激に熱くなるのを感じた。情けない声がでてしまい慌てて口を塞ぐ…が今更意味はない。ユウキがけらけら笑っている。
「ライ、可愛い、好き」
「くるなっ…!ば、かっ…くっ!ンンッ、はあっ…そこ、やめろって、んうっ!」
耳をかじられ、体中撫で回される。泡のせいでやけに気持ちいい。最近ほとんど処理してなかったし、なんだかんだ欲求不満でもあるのだろう。だからと言って今日会った年下男に抱かれるのは屈辱以外の何物でもない。
「ユ、ウキ…!たの、む、からっ!ん、あっ…!」
「ちゅ…なにさ…」
奴の髪を力いっぱい引っ張る。邪魔されたことで不満げに唸っていた。俺は焦る頭を必死に働かせ、なんとか言葉を絞り出す。
「んっ…俺が、やる…から、」
「え?」
「俺がや…るからっ!ユウキはっ…動くな、っ」
「!」
予想外の台詞だったのかユウキはぽかんと口を開けている。それからニコニコと笑みを浮かべて頷いた。
「嬉しい。ライがやってくれるの?」
「…ああ」
「ふーん、ライって実は大胆なんだね」
「うるせえ」
「いいよ。好きなだけ触って」
黙らせるため下に手を伸ばす。すでにたちあがっていたそこは触れるだけでびくりと震えた。
(でかいな…)
真人以外のたった状態のブツを見るのは初めてだがなかなか立派で引いてしまう。これで本当に学生か?
「んんっ、ライ…舐めて、ほしいな…」
「はっ、お前にフェラなんて百年早いわ」
「ええ…っ…けち、…っ」
息を切らせつつユウキはふてくされている。手の中の反応も良いし、時々腰も揺れている。気持ちが良いのは間違いないだろう。舐めなくてもこのままじわじわ責めれば果てるだろうが、そんな時間はない。
「ユウキ、足邪魔」
「ごめ…っ、はあ、ねえ…いれた、い、んっ」
ユウキの指が後ろに沿うように置かれる。ギラギラと獣のような目で見てきたので笑みで応えてやった。
「俺にいれたいのか?」
「うん…っ、はあ、いれたいっ…ライっ」
「はっ」
笑ったあと強めに擦りあげる。そのままの勢いを保ちながら先端に顔を近付けた。ユウキが期待するように目を見開く。その期待を受けながら俺は口を開き、ユウキに舌を添わせた。
「はあ、っ…!ライ…!」
喜びの声をあげるユウキ。
「ユウキ。お前が俺を抱こうなんて…千年早い」
ガジッ
最高に興奮して膨れ上がった先端へ歯を立てる。痛みにならない程度の甘噛みだが、ユウキにとっては初めてであり予想外の刺激だ。その強すぎる刺激にユウキの腰がはねた。
「いっ、ああアっ…!!」
あっけなく放出していくユウキを、スルリと絞りあげていく。その度に鳴いていてやっと少しだけ可愛く見えた。
(まあ、いくら可愛くてもガキを好きになる事はないけどな)
何度か擦ってやると出なくなり、ユウキの全身が脱力する。抱きついてきたので背中をさすってやった。
「はあ、はあ…ひど、いなあ、ライ…っ」
「気持ちよかったろ。ほら椅子から落ちるなよ。頭打つぞ。ちゃんと座れ」
「どこ、いくの…?」
「水。飲んでくる」
ユウキに背を向け立ち上がった。水飲み場が脱衣所にあったのでそこを利用するていで浴室を出る。チラリと後方を見たがユウキが追いかけてくる気配はない。果てたばかりだし、少しだけ自由に動ける時間ができたはず。
(よし…!)
脱衣場から浴衣を取り手早く羽織る。それから付近の窓を確認した。裏側にサウナがありそこの窓が大きめだった。これならいけるだろう。
「悪いな、ユウキ」
窓は内側から外れるようになっている事が多い。この知恵は借金時代の恩恵だ。
ガコンっ
大きめの音を立てて窓が外れる。たぶん今のはユウキにも聞こえただろう。急いで外に出る。ひんやりとした外気に触れ、慌てて浴衣を着た。歩きながら左右を確認するが人の気配はない。
(ま、頭の息子がイチャつく声なんか聞きたくないわな)
表の扉には見張りがいるかもしれないが裏までは立たせてなかったらしい。運がいい。
「…よし。えーっと…縁側から見た感じ、こっちに玄関がありそうだったよな」
玄関とは逆の方へ行く。玄関は100%見張りがいるだろうし詰みだ。脱出するなら台所の方へ向かうべきだ。
たったっ
走って向かうと一分もせずに台所らしき部屋の窓が見えた。煙が上がっていて、お出汁のいい匂いがした。
(ビンゴ…!)
そのまま台所には入らず、近くの壁に向かう。この家は高くて頑丈そうな壁に囲まれている。たぶんこの壁は家を一周するように建ってるのだろう。途切れるとすれば、玄関と裏口のみ。
「ここがきっと裏口…に近い」
思ってた通り台所の正面に小さな扉があった。裏口だからかセキュリティも甘くて機械化されていない。これならピッキングでなんとかなりそうだ。
「まさかこのキーホルダーが役に立つなんてな」
フィンにもらったサツマイモのキーホルダー。これには実はサツマイモ以外にもトングのような細い棒もついていた。
(サツマイモじゃなくて焼きいものキーホルダーだったのか)
よくわからないがこの棒で開けられそうだ。
カチャカチャ
大分久しぶりの事なので手元が狂う。手間取っていると後方が騒がしくなってきた。
(ヤバい、見つかる!)
急げ急げ…でも焦るな!そう心の中で唱えていると
ガチャン
鍵が開いた。急いで扉を開け、外に出る。
「!!」
意外にもそこは街中ではなく木々が生い茂っていた。どこかの公園か森の中か。森の中だとしたら脱出したとしても戻らざるを得ない。夜の森は危険すぎる。
(どこまでいっても森だぞ…!まさか本当に山の上なのかよ?!)
絶望しかけたがふと思い直す。あれだけの人数の見張りを立てていたということは逃げられたら困る環境なのだ。つまり脱出する方法がある。
ざっざっ
自分の勘を信じ、森の中を進んだ。幸か不幸か今日は満月なので歩く分には申し分ない。ただ、明かりになるようなものはなく、もう少し歩いてダメなら諦めて引き返すべきだろう。遭難して死ぬなんて元も子もない。そう思っていると前方に灯りが見えてきた。
「!!」
走っていくと、駐車場のような広い場所に出る。一応車止めが何個か設置されていたが、車はなくガランとしていた。
「はあ、はあ…ここは、屋敷の外だよな…」
コンクリートの地面に懐かしさを感じる。少し進むと、駐車場の先に夜景が広がっているのが見えた。あの夜景は俺たちが住んでいる町の灯りだろう。知ってるビルがいくつかある。
(ここを下りれば帰れるが…どうやって下りるか)
柵の下は崖みたいになってるし、山沿いに走る車道の方を行くしかないか。暗いし危ない上にどれぐらいの時間がかかるか考えたくないが、ユウキに捕まるよりはいいだろう。
(ったく、ほぼ山じゃねえかこれ…)
まさかこの山、ユウキ一族が所有してたりするのだろうか。
「だとしたらとんだ地主だな…」
「みーつけた」
「!!」
振り返れば、息を切らしたユウキが立っていた。蛍光灯に照らされ表情はよく見えないがかなり怒っているらしい。浴衣を着崩れさせ、肩で息をしている。
「いや、一人で行け…」
「ご案内します」
「はい…」
柴沢に見張られながらトイレに向かう。縁側を通ったおかげで少しだけ外が見えた。高層ビルなど何かしら見えれば今どこにいるのかというヒントになる。しかし家をぐるりと囲ってる壁のせいでとにかく視界が悪い。
(くそっ…マジでどこなんだよここは!)
屋敷の外に目印になりそうな建物は見えなかった。建物が壁の先に見えないということは高台に建てられてるのだろうか。まさか山の上とか。いや、三時間で行ける範囲だから県内ではあると思う…いや思いたいが。
「こちらです」
案内されたトイレに入る。中には個室が二つあった。片方は埋まっていたのでもう片方に入る。
(だめだ、ここの窓も出られそうにない…)
窓は子供がやっと通れるぐらいの大きさだった。ここからの脱出は不可能だ。仕方なく用を足して個室から出た。すると横の個室も同時に開く。お互いが横をみれば
「うわ!」
「わ!」
“俺”がいた。いや、正しくは和服を着た俺だ。自分のそっくりさんに驚いていると“俺”が手を振ってきた。
「やあ、びっくりした~本物のライじゃん」
「その口調…ユウキか?」
「正解!どう?似てるでしょ」
「似てるっつーかそのまんまだな」
自分が目の前にいるみたいで変な感じだ。ここでやっと俺は気付いた。
「って待てよ…!お前まさかドッペルゲンガーの正体だったりする??」
「え?」
商店街で流れているドッペルゲンガーの噂の事を話す。
「へえ、そんな噂が広がってたんだ」
「へえじゃねえよ。絶対お前のせいだろが!どうせポンポン変化しては歩き回ってたんだろ」
「そうだけど~俺だって試験のためにやってたんだから仕方なくね?」
商店街は人が多いからいざとなったら逃げやすいし、知り合いを探すのにも効率的だと思ったんだよねと話している。確かに「変化する」「知り合いを探す」「変化の力をバレずに」を目的にするなら商店街はぴったりの場所だろう。だからといって幻獣たちを怖がらせる(噂が広がる)のは考えものだ。
「ちぇ。そっくりさんだって気付いたなら声かけてくれてもよかったのに。皆照れ屋なんだから~」
「笑い事じゃねえ。お前のせいで困ってる人がいるんだぞ」
「じゃあ試験を止めろって?それは流石に無理だよ。俺も人生がかかってんだから。他の場所でやるとしても結局変な噂は流れちゃうし解決はしないよ」
「…」
「だからライが手伝ってよ。俺の知り合いとして演じてくれるか、一緒に作戦考えて。ライがいればきっと合格できると思う!そうすれば俺は試験合格!商店街の噂も消える!バッチリ解決じゃん!?」
「バッチリって…試験合格したら俺は帰れるのか?」
「ん~?」
どういう事?ととぼけられる。この距離で聞こえないわけがないのに。このガキ一発殴ってやろうか。
「ねえ、それよりもさ。さらっと受け入れられちゃったけど、俺に化けられて嫌じゃないの?」
「?…ああ別に」
「そう…結構気持ち悪く思う人多いんだけどね。不快にさせてなくてよかった」
そういってユウキは自分の姿に戻った。そのまま外に出る。俺も後ろから続けば柴沢は姿を消していた。空には一番星が光っていてすっかり暗くなっていた。
「もういい時間だね。ライ、このまま風呂入ろう!なんとうちのはサウナ付き!すごいっしょ!」
「…」
「ほら、もう夜になったし色々考えるのは明日にしとこ!ライの連れの人も流石に帰っちゃったでしょ」
フィンに限っては諦めて帰るという選択肢はないと思うが。それを説明しても理解してもらえなそうなので止めておく。
「だから家でゆっくりしようよ」
な~?と上目遣いで見つめてくる。背丈はほぼ同じだし体格も学生とは思えないほどしっかりしてるので「可愛い」という見た目からは程遠い。
(俺一人だと行動範囲が狭いしユウキといた方がチャンスがあるか…)
「…はあ。わかった。風呂入るか」
「おっしゃあ!着替えはあっちの部屋に予備があるはず!和服しかなくてごめんだけど!」
「着れるものなら何でもいい…おい、引っ張るな」
「こっちこっち!」
手を引かれる。ルンルンと楽しげな背中。
(どうしてこんなに懐かれたんだか…)
ふとユウキの今までの人生を想像してみた。変化の能力を持ち、一族を背負う立場で生まれたユウキ。
(かなり苦労してるんだろうな)
変化のことを他人に話せず、ほとんどの悩み・葛藤を家の外に持ち出せないのだ。かといって家の誰かが家族以上に寄り添ってくれてる感じはない。ユウキを見ていると、放任されて育った印象を受ける。家の者達からも、外の人間からも距離を置かれて育つのはどんな気持ちだろうか。
『こんな風に普通に接してくれて…優しくしてもらえたの初めてだった。すごく嬉しかったんだよ』
先ほどのユウキの言葉。あれは嘘じゃないんだろう。同年代の友人はおろか、俺みたいに言い返してくる者すらいなかったはずだ。
(俺が好きというより新鮮な反応を見せる存在に面白くなってるだけなんだろうな)
どっちにしろ同情しないわけにはいかなかった。強く握りしめてくるユウキの手を振り払わず、俺は大人しくついていくのだった。
***
「はい、脱いで脱いで!行くよ!」
「そんなに急かすな…一人で脱げるって」
「えー早く入りたいんだもん」
「だもんってその年で言ってるとキモいぞ」
「ひど!わかったよ、もう言わないー」
「よし」
素直に言う事を聞いたので頭を撫でてやる。ユウキは嬉しそうに目を細めた。
「えへへ、もっと撫でて~」
「頭を押し付けるな」
「ちょっ!待って!ライ、置いてくなー!」
ユウキを置いて先に中へ入った。まるで旅館か?と言いたくなる立派な風呂が広がっている。ご丁寧に体を洗うブースまであった。体を洗うために腰かけるとユウキも横に座ってくる。そして遠慮なく体を覗いてきた。
「ライって細いと思ったけど、うっすら筋肉がついてて綺麗だね。アートだ」
「おい。裸見て褒めるのは恋人だけにしろ。変態と間違われるぞ」
「えーでも俺的にライは恋人枠だから変態になってるつもりないよ」
「誰が恋人枠だ。丁重にお断りだ」
「ちょっとは考えてくれてもいいじゃん!ねえねえ、洗いっこしない?」
「はあ?!」
泡のついた手を近付けてくるので奴の額を掴んで距離を取らせる。だがユウキは諦めず腕を伸ばしてきた。ぴとりと掌が体に触れてくる。
「すべすべだね」
「このっ…離れろ!んっ、怒る、ぞ!」
「もう怒ってるじゃん」
ちゅっと俺の腕に口付けてくる。動揺した隙に腕をほどいて距離を詰められた。目の前にユウキの顔が迫ってくる。
「っ…、ユウキ、」
「大丈夫、洗うだけだから」
ぬるりと泡のついた手が体の上を滑っていく。その刺激だけで背中がゾクリと震えた。ヤバい。濡れた手ってこんなにくすぐったいのか。一歩間違えれば気持ちよさに繋がりそうだ。
「やめっ!ろ、おいっ、どこ触って…!」
「全身洗わないとでしょ?俺が全部洗ってあげるから」
優しく体を撫でながら「今日から毎日ずーっとね」と恐ろしい事を言ってのける。
「っっ!」
いくら育ちが特殊だったとしても、学生のうちからこんな調子ではユウキはどんな大人になってしまうのか。想像するだけで恐ろしい。早めに矯正しないとかなりの被害者がでる気がする。そんな事を考えているとユウキが面白くなさそうに頬を膨らませた。
「ライ、考え事?俺が触ってるのに俺以外のこと考えるなんて余裕だね」
「…っ、お前のこと…だっ、つの!」
「へ?」
「考えてたのはお前の事だ!他事考える余裕なんてあるかよ…」
別に嘘つく必要もないので正直に(半ギレで)言えば、ユウキは顔を真っ赤にして照れた。
「そっそんな…ときめかせないでよ…」
「してねえ…ひっ!お、押し付けんな、バカ!」
「ライが可愛い事言うから…おっきくなっちゃった…」
どうしよう、と上目遣いされても下が可愛くない状態なので全然、全く、これっぽっちも可愛くない。やめろと遠ざけようとしたら手を掴まれ口に運ばれる。そのまま指を強く吸われた。
「じゅるっ…ライの指、美味しい」
「お前!頭おかしいぞ、落ち着…っあ、こら!やめっ…!」
「頭おかしいのはライの方だ。こんなに魅力的で、煽ってきてるのに無自覚なの?こんなの…悪魔だよ…」
「誰が悪魔だ…!ああっ…!」
泡のついた手で胸を弄られる。最後にそこに触れたのは真人だ。胸の奥がぎゅっとなる。だが体は単純なもので、久しぶりの刺激に熱くなるのを感じた。情けない声がでてしまい慌てて口を塞ぐ…が今更意味はない。ユウキがけらけら笑っている。
「ライ、可愛い、好き」
「くるなっ…!ば、かっ…くっ!ンンッ、はあっ…そこ、やめろって、んうっ!」
耳をかじられ、体中撫で回される。泡のせいでやけに気持ちいい。最近ほとんど処理してなかったし、なんだかんだ欲求不満でもあるのだろう。だからと言って今日会った年下男に抱かれるのは屈辱以外の何物でもない。
「ユ、ウキ…!たの、む、からっ!ん、あっ…!」
「ちゅ…なにさ…」
奴の髪を力いっぱい引っ張る。邪魔されたことで不満げに唸っていた。俺は焦る頭を必死に働かせ、なんとか言葉を絞り出す。
「んっ…俺が、やる…から、」
「え?」
「俺がや…るからっ!ユウキはっ…動くな、っ」
「!」
予想外の台詞だったのかユウキはぽかんと口を開けている。それからニコニコと笑みを浮かべて頷いた。
「嬉しい。ライがやってくれるの?」
「…ああ」
「ふーん、ライって実は大胆なんだね」
「うるせえ」
「いいよ。好きなだけ触って」
黙らせるため下に手を伸ばす。すでにたちあがっていたそこは触れるだけでびくりと震えた。
(でかいな…)
真人以外のたった状態のブツを見るのは初めてだがなかなか立派で引いてしまう。これで本当に学生か?
「んんっ、ライ…舐めて、ほしいな…」
「はっ、お前にフェラなんて百年早いわ」
「ええ…っ…けち、…っ」
息を切らせつつユウキはふてくされている。手の中の反応も良いし、時々腰も揺れている。気持ちが良いのは間違いないだろう。舐めなくてもこのままじわじわ責めれば果てるだろうが、そんな時間はない。
「ユウキ、足邪魔」
「ごめ…っ、はあ、ねえ…いれた、い、んっ」
ユウキの指が後ろに沿うように置かれる。ギラギラと獣のような目で見てきたので笑みで応えてやった。
「俺にいれたいのか?」
「うん…っ、はあ、いれたいっ…ライっ」
「はっ」
笑ったあと強めに擦りあげる。そのままの勢いを保ちながら先端に顔を近付けた。ユウキが期待するように目を見開く。その期待を受けながら俺は口を開き、ユウキに舌を添わせた。
「はあ、っ…!ライ…!」
喜びの声をあげるユウキ。
「ユウキ。お前が俺を抱こうなんて…千年早い」
ガジッ
最高に興奮して膨れ上がった先端へ歯を立てる。痛みにならない程度の甘噛みだが、ユウキにとっては初めてであり予想外の刺激だ。その強すぎる刺激にユウキの腰がはねた。
「いっ、ああアっ…!!」
あっけなく放出していくユウキを、スルリと絞りあげていく。その度に鳴いていてやっと少しだけ可愛く見えた。
(まあ、いくら可愛くてもガキを好きになる事はないけどな)
何度か擦ってやると出なくなり、ユウキの全身が脱力する。抱きついてきたので背中をさすってやった。
「はあ、はあ…ひど、いなあ、ライ…っ」
「気持ちよかったろ。ほら椅子から落ちるなよ。頭打つぞ。ちゃんと座れ」
「どこ、いくの…?」
「水。飲んでくる」
ユウキに背を向け立ち上がった。水飲み場が脱衣所にあったのでそこを利用するていで浴室を出る。チラリと後方を見たがユウキが追いかけてくる気配はない。果てたばかりだし、少しだけ自由に動ける時間ができたはず。
(よし…!)
脱衣場から浴衣を取り手早く羽織る。それから付近の窓を確認した。裏側にサウナがありそこの窓が大きめだった。これならいけるだろう。
「悪いな、ユウキ」
窓は内側から外れるようになっている事が多い。この知恵は借金時代の恩恵だ。
ガコンっ
大きめの音を立てて窓が外れる。たぶん今のはユウキにも聞こえただろう。急いで外に出る。ひんやりとした外気に触れ、慌てて浴衣を着た。歩きながら左右を確認するが人の気配はない。
(ま、頭の息子がイチャつく声なんか聞きたくないわな)
表の扉には見張りがいるかもしれないが裏までは立たせてなかったらしい。運がいい。
「…よし。えーっと…縁側から見た感じ、こっちに玄関がありそうだったよな」
玄関とは逆の方へ行く。玄関は100%見張りがいるだろうし詰みだ。脱出するなら台所の方へ向かうべきだ。
たったっ
走って向かうと一分もせずに台所らしき部屋の窓が見えた。煙が上がっていて、お出汁のいい匂いがした。
(ビンゴ…!)
そのまま台所には入らず、近くの壁に向かう。この家は高くて頑丈そうな壁に囲まれている。たぶんこの壁は家を一周するように建ってるのだろう。途切れるとすれば、玄関と裏口のみ。
「ここがきっと裏口…に近い」
思ってた通り台所の正面に小さな扉があった。裏口だからかセキュリティも甘くて機械化されていない。これならピッキングでなんとかなりそうだ。
「まさかこのキーホルダーが役に立つなんてな」
フィンにもらったサツマイモのキーホルダー。これには実はサツマイモ以外にもトングのような細い棒もついていた。
(サツマイモじゃなくて焼きいものキーホルダーだったのか)
よくわからないがこの棒で開けられそうだ。
カチャカチャ
大分久しぶりの事なので手元が狂う。手間取っていると後方が騒がしくなってきた。
(ヤバい、見つかる!)
急げ急げ…でも焦るな!そう心の中で唱えていると
ガチャン
鍵が開いた。急いで扉を開け、外に出る。
「!!」
意外にもそこは街中ではなく木々が生い茂っていた。どこかの公園か森の中か。森の中だとしたら脱出したとしても戻らざるを得ない。夜の森は危険すぎる。
(どこまでいっても森だぞ…!まさか本当に山の上なのかよ?!)
絶望しかけたがふと思い直す。あれだけの人数の見張りを立てていたということは逃げられたら困る環境なのだ。つまり脱出する方法がある。
ざっざっ
自分の勘を信じ、森の中を進んだ。幸か不幸か今日は満月なので歩く分には申し分ない。ただ、明かりになるようなものはなく、もう少し歩いてダメなら諦めて引き返すべきだろう。遭難して死ぬなんて元も子もない。そう思っていると前方に灯りが見えてきた。
「!!」
走っていくと、駐車場のような広い場所に出る。一応車止めが何個か設置されていたが、車はなくガランとしていた。
「はあ、はあ…ここは、屋敷の外だよな…」
コンクリートの地面に懐かしさを感じる。少し進むと、駐車場の先に夜景が広がっているのが見えた。あの夜景は俺たちが住んでいる町の灯りだろう。知ってるビルがいくつかある。
(ここを下りれば帰れるが…どうやって下りるか)
柵の下は崖みたいになってるし、山沿いに走る車道の方を行くしかないか。暗いし危ない上にどれぐらいの時間がかかるか考えたくないが、ユウキに捕まるよりはいいだろう。
(ったく、ほぼ山じゃねえかこれ…)
まさかこの山、ユウキ一族が所有してたりするのだろうか。
「だとしたらとんだ地主だな…」
「みーつけた」
「!!」
振り返れば、息を切らしたユウキが立っていた。蛍光灯に照らされ表情はよく見えないがかなり怒っているらしい。浴衣を着崩れさせ、肩で息をしている。
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合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
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