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不死鳥シリーズ
一周年記念のおまけ②(グレイ×ライ)
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※Ifストーリーではあるけど不死鳥本編に載せてるのでこちらに
※一周年記念の『出会う順番が違っていれば』の蛇足
※グレイルートのその後🚬
※グレイがタチになってるので注意(キスシーンあり)
グレイに拾われスナックおとぎを手伝うようになってから三か月。
「またやっちまった…」
すっかり店の仕事にも慣れ、穏やかに暮らしている…はずが、何故か俺はグレイのベッドで腰をさすりながら起床する日々を送っていた。
「くそっ…イテテ…」
「アラ~大丈夫?」
「!?」
ベッドで呻いてると、ひょっこりと廊下からグレイが顔を出してきた。
「おはよう、ライ。昨日激しくしちゃったから腰辛いカシラ?起きれそウ?」
「…っ」
歩いて来たグレイが上体を起こした素っ裸の俺の腰を撫でてくる。長い指先が肌を這っていく感触に、
ぞくり
腰の奥が熱くなるような疼きを感じて…自分の体が恐ろしくなった。
「…平気だ、から、触んな」
「ふふ、ごめんなさい。じゃあ、あたしは朝ご飯温めとくワ。一緒に食べまショ」
「んー…」
素直に頷く気にならず微妙な返答で返せば、グレイはくすっと笑って部屋を出て行った。
パタン
「はぁ…」
未だに燻る自分の体を見下ろしため息を吐く。グレイに抱かれるようになった俺の体は異常に淫乱…もとい、敏感になっていた。真人とするスポーツ感覚のセックスとは違う、心も体も溶かされるようなセックスは麻薬のように俺から思考を奪い前後不覚にしてしまう。止めなくては…と理性が働いてもいつの間にかグレイの腕の中にいる。そして朝を迎えてしまう。そんな恐ろしいループにハマって、気付けば三ヶ月が経っていた。
(昨日の記憶もほとんどねえし…マジでどうなってんだ…)
「はぁぁ…」
二回目のため息の後、のろのろとベッド横に置かれた洗い立ての服を掴む。グレイと寝た日は手を伸ばせる範囲内に全てが揃えられている。タオルしかりスリッパしかり、痛み止め、水、スポーツドリンクだってある。ありがたい事ではあるが、内心複雑だった。
(恋人でも何でもねえのに、こんな事されてもな…)
ただのセフレと思えば割りきれるのに、甲斐甲斐しく世話する姿を見てるとそうも思えない。ただの仕事仲間のはずがどうしてこんな不透明な関係になってしまったのだろう。
「いて、て…」
俺は腰をさすりながらグレイの寝室から出た(※俺にも控え室が自室として与えられているがほとんどそっちで寝る事はない)。洗面所に移動すると、猫背の男が髭を剃っていた。元人間で今は狼男のソルだ。ソルは俺に気が付くと半目のままこちらを向いた。
「おぅ、ライ、おはよ」
「…おはよ」
先々週、突然やってきたソル。最初は狼化で荒れていたが、グレイの霧によって睡眠が確保されるようになってからは大分落ち着き、元々セフレ時代に同居していた事もあって、あっという間にスナックおとぎに馴染んでしまった。しかも持ち前の性欲の強さと図々しさを発揮して当たり前のように俺とグレイの歪な関係にも割り込んできた。つまり乱交。3Pである。冗談じゃない。
(そうだ、昨日もソルとなんかやってた気がする…)
ぼんやりした記憶を探ろうと顔をしかめてるとソルが脛を蹴ってくる。
「なぁ~ライ、そろそろ後ろ使わせてくれよ~」
「…」
「ヨクしてやっからさ?あんなタチリハビリ中の奴よりぜってぇオレのがいいぜ。なぁ?物は試しだぜ、なぁなぁなぁ」
「うるせぇ、カミソリ負けしてろ、ヘンタイ共」
ウザ絡みしてくるソルを一睨みしてから歯ブラシに歯磨き粉を塗りつけていく。
「機嫌ワリーなぁ、昨日イラマしたのまだ怒ってんのか?」
「逆に怒らねえ奴がいるのか(てかイラマしたのか)」
「くくっ、ドMとか泣いて喜ぶだろ。なあ、そういうのはいーから真面目に考えてくれよ。グレイの奴、普段タチやらねえ癖にてめえの後ろだけは頑として譲らねえんだ。あの手この手で攻めてもだめだしよぉ…こうなりゃてめえに“欲しい"って言わせるしかねえ」
「はあ…なんでそんなに俺に固執するんだ。あんたは女もいけるんだろ」
「女もいけるが今はてめえを落とす事に専念してえ」
「専念するな」
淡々とつっこみ、歯ブラシを咥える。シュコシュコと磨いてるとソルが顔を寄せてきた。もう髭は剃り終えたのか洗面台に両手をつき至近距離で見つめてくる。こうして見ると奴の顔も無駄に整っていて…腹が立った。グレイとのセックスはまあ百歩譲って良いとしても、この男とやるのは俺が生きる上で全く、これっぽっちも、一ミクロンも必要のない事だ。だからさっさと締め出せばいいのに…なのに、何故か俺はグレイだけでなくソルも拒否できずにいた。
(この、クソビッチが…)
そんな自分が一番腹立たしかった。
「誰にも深入りしねえネコのアイツが、禁じ手にしてる悪魔の媚薬を使ってまで抱いてんだぜ?そんなてめえに欲しいってねだられたら…流石のアイツも止めらんねえ。絶対いける!」
「あふはほひひゃふ?(悪魔の媚薬?)」
「体液だよ。てめえはグレイの唾液やら精液やら…バンバン飲まされてるだろ?」
「ほれはほほいは(それがどうした)」
「…おい、嘘だろ。まさか説明無しでやられてんのか?」
「??」
「アイツ、どんだけモノにしたかったんだ…手段選ばなすぎだろ…」
俺が首を傾げているのを見てソルは酷く驚いた顔をした。
「いいか、ライ、良い事を教えてやる」
驚きの表情から一転して、ニヤリと悪い笑みを浮かべるソル。肩に腕を回してひそひそと耳打ちしてくる。
「アイツの体液には媚薬と同じ効果があんだよ。劇薬レベルの性淫剤だ」
「!?」
「オレが間違って適用量飲んだ時は一晩中勃ったままだった。頭もぶっ飛ぶし麻薬レベルの効き目だ。そんなのをてめえは毎日飲まされてたんだぜ、くくっ、とんだ悪魔だなぁ、アイツ」
ソルの言葉を聞いて、三か月ずっと気になっていた疑問が晴れた。どうして好きでもないグレイ達との行為を受けいれ、しかも意識を飛ばす程気持ちよくなってしまうのか、
(まさか媚薬を飲まされていたなんて…)
普段のグレイが善良的だからこそ盲点だった。てっきり失恋のショックで体と頭が同時におかしくなったのかと思っていたが、まさかグレイが淫乱化の犯人だったとは…。合点がいくのと同時に、今度はグレイへの不信感がわいて出てくる。
「…」
「おーい、ライ?聞いてんのかー?」
「…」
俺は口をゆすぎ歯磨き粉を洗い流してから廊下に出た。ソルが追いかけてきて何か言っていたがそれらを全てスルーして店内に向かった。
***
「ソル、あんた…ライに何かしたワネ」
スナック営業も終わった深夜頃、夜食を食べに来たソルにグレイが問い詰めた。
「んぁ?何の事だぁ?」
ソルは素知らぬふりをしてカップラーメンを口に運ぶ。
「しらばっくれてもダメヨ。ここ最近ずっとライがあたしを避けているノ。どうせあんたが余計な事を吹き込んだんでショ?白状しなさい」
「くくっ、別に“余計な事”じゃねえだろ。知らずに毒を盛られ続けるなんてフェアじゃねえからな」
「…あたしの事を話したのネ」
「いいだろ。霧は見せてんだから、正体がバレるのも時間の問題だぜ」
「…それは、そうだけど…」
グレイは戸惑うように目を伏せ、最近ずっと結んで過ごしている後ろ髪を撫でた。この三日ほど、ライはグレイを避けていた。物理的な距離はもちろん、会話も、最低限の仕事で必要なものは除き、ほとんどしなくなった。
(ライと話せないのがこんなに寂しいなんて…)
そこまで踏み込んでるつもりはなかったが、ライの態度にも、自分の胸を占める寂しさにも戸惑いが隠せなかった。
「くくっ、ざまぁねえなぁ」
落ち込むグレイを見たソルは楽しそうにくくっと喉で笑う。
「どうしてそこまでライに入れ込むのか理由は知らねえが、媚薬を使わねえでも体を開いてもらえるよう、精々真面目に求愛しろや。…ま、ネコビッチのてめえにタチの求愛ができるとは思えねえけどなぁ、くくっ」
「あんたほんとイイ性格してるワ…」
「お互いサマだろ?ライのケツをシェアしてくれんなら間を取り持ってやってもいいがな」
ソルがニヤリと笑うと、グレイは目を瞑り深いため息を吐くのだった。
***
グレイを避け始めてから一週間。俺が淫乱化する事はなくなり、心身共に健やかな日々を過ごしていた。避けられていると気付いたグレイは、時々少し寂しそうな顔をするだけで、だからといって店から追い出す事もなくいつも通り接してくれた。
(なんだ、普通の仕事仲間に戻れるじゃねえか)
てっきりすぐに部屋に連れ込まれて媚薬を仕込まれるかと思ったが…何もされない事にすごくホッとしたし、拍子抜けもした。
(まあ、グレイってモテるし、今はセフレのソルもいる。相手には困らねえか)
今までの俺とだけやっていた日々がおかしかったのだ。
ちくり
ふと、胸が痛んだ。でもその痛みは気にしないようにして、自分以外誰もいない…静かなベッドに横になるのだった。
『…い、…ぱい、』
誰かの声がする。俺はその声を聞きたくなくて耳を塞いだ。けれど、その声は直接脳に響いてるように、むしろ更に音量を上げて響いてくる。
『センパイ』
はっと弾かれたように顔を上げると、真人を奪った男…後輩が、誰かの膝の上に座った状態で見てくる。後輩が跨いでる膝は、俺もよく知る男のもので…でも、それは真人のものではなく、そう、
「グレイ…!!」
かけ布団を蹴りながら勢いよく起き上がった。はあ、はあ、と息を荒くして横を見ると…誰もいない。俺は息が整わないままグレイの寝室に飛び込んだ。
バタン!
部屋は暗くて、ベッドが乱れた様子もない。まだグレイは戻ってきてないようだ。俺はすぐに扉を閉じて店内に向かった。
「…!」
店内も真っ暗で、誰もいなかった。時計を見ると夜中の三時頃。ちょうどグレイがつじつま合わせで外に出てる時間だ。別におかしい事はない。…だけど、俺は酷く胸騒ぎがして、ずっと鳴り止まない耳鳴りのせいで気持ちが悪くなってくる。
「うっ…」
蹲って口をおさえた時だった。
チリリーン
「ただいまー…って、え、ちょっと、ライ?!大丈夫??」
コートを着たグレイが現れる。蹲る俺を見て、血相を変えて駆け寄ってきた。
「ライ、気持ち悪いノ?」
心配するようにグレイが覗き込んでくる。俺はその姿を見た瞬間、ほとんど反射のように、その体に抱きついていた。
ぎゅっ
驚くグレイの胸に顔を埋めて「よかった…」と呟いた。
「…そう、あんたまた悪夢を見たのネ、可哀想に…」
グレイがそっと背中をさすってくる。その優しい撫で方に色んな感情が込み上げてくる。この三ヶ月、真人や後輩の悪夢で苦しむ俺を支えてくれたのはグレイだった。睡眠障害に摂食障害。どちらも今は乗り越えたがきっとグレイがいなかったらもっと長く引きずっていただろう。
(もしかして、グレイ…俺の失恋を和らげようと媚薬を…?)
そこまで考えたところでグレイの手がトントンと優しく背中を叩いてくる。
「大丈夫、夢は夢ヨ。作り物だから…もう悪夢みたいな事は起きないから安心して」
「……夢に、あんたが出てきたんだ…」
「!」
いつものように後輩が現れる悪夢だったが、その横にいたのは真人ではなく、グレイだった。後輩がその体に触れているのを見て、すごく嫌な気分になった。胸がモヤモヤして、不安になって、居ても立っても居られなくなった。俺はこの焦りの意味をやっと理解した。
「それで俺…」
「ライ、ごめんなさい」
「…!」
俺の言葉を遮るようにグレイが謝ってくる。その声音があまりにも悲しそうで、つられ顔を上げると、眉を下げ苦悩するグレイと目があった。
「媚薬を飲ませて体を奪うなんてひどい事をしてごめんなさい。ライが怒るのも当然よ」
「…」
「最初はね、ライに避けられてすごく寂しかったけど、店を出て行かれないだけありがたい事だって気付いたの。触れ合えなくても一緒に過ごせるなら幸せだって」
「…グレイ」
「…でも、悪夢に出てくるぐらいあたしが嫌になったのなら、もう潮時ね…」
「!!」
違う。そうじゃない。悪夢に出てきたのは、そっち側じゃない。奪われる側だ。
「実は、もうあんたの新しい仕事と部屋は探してあるの。明日には話を通しておくからあんたは荷物をまとめておいて。今週中には移動できると思うわ」
「…っ」
だけど、今の俺にはグレイの言葉を遮ってまで説明する余裕はなくて、唇を震わす事しかできない。そんな様子を見たグレイがますます苦しそうな顔をして笑う。
(違う、違うんだ)
真人の後ろ姿がちらつく。また俺は逃げるのか。言えないまま失うのか。そう思った瞬間…体が動いていた。
ぐいっ
グレイの胸ぐらを掴み、引き寄せて、
ちゅ
リップで潤ったその唇に自分の唇を押し付けた。
「!」
グレイの瞳が大きく見開かれる。床に腰を下ろしたグレイを跨ぐようにして膝立ちになった俺は言葉よりずっと伝えやすい形で想いを伝えた。
「ん、…」
唇の隙間から舌を入れて、グレイのと絡ませた。くちゃ、ちゅくと濡れた音が暗い店内に響く。互いに目を瞑り溶け合うようなキスを味わい、頭の奥を溶かしていく。
(…ああ、これだ)
悪夢で冷え込んだ心が温かく満たされるのを感じた。
「…ふ、…んく、」
口内に溜まった唾液をごくりと嚥下する。まるで禁断の果実を口にするような緊張があった。それはグレイも同じようで、俺が嚥下したのをみて、ぎゅっと腰を抱く腕の力を強めてきた。
「ライ…」
いいの?と問うように見つめてくる瞳に、俺は無言で頷き、もう一度自分から唇を重ねた。グレイの唾液を飲んだ体がじわじわと媚薬で熱されていくのがわかる。それでも俺は構わずグレイとのキスを味わい続けた。やがて互いに息が弾み、服を邪魔に感じ始めた頃
「はぁ、ズルいわ」
とろんと半目になった俺の濡れた唇を指先で拭いながらグレイがぼやいた。
「こっちは禁欲中で飢えてんのに…こんな事されたら、我慢できなくなっちゃうでしょ。わかってやってるの?」
少し怒った様子で言われ、俺は答えるかわりに目の前の甘い指先に噛みついた。カプリと軽く歯を立てて、舌で舐めあげ、ちゅるりと吸えばグレイは深くため息を吐いた。
「もう知らないから」
ふわっと浮遊感を感じたと思えば姫抱きの形で抱かれる。そのまま廊下に進んでいく。その足がどこへ向かっているのかは俺にもわかっていた。だけど、俺はその腕の中から逃げ出さず、逆に「早くしろ」と強請るように唇に噛みつくのだった。
おわり🚬
⚡<最終的に淫乱堕ち…
🚬<うふふ、そんなライも素敵ヨ❣️
🐺<にしてもあれだな。ぜってぇグレイをタチに戻すな、という教訓を得られたな
🦊<ですね…これは…色々と勝てない…
🐥<グレイを侮るなと言っただろう。それで、結局駄犬はライを抱けたのか
🐺<はっ!!
🚬<無理デショ。あたし嫉妬深いモノ
🐺<ここのルートのオレもお預けかよ!もっと頑張れやオレ!!
※一周年記念の『出会う順番が違っていれば』の蛇足
※グレイルートのその後🚬
※グレイがタチになってるので注意(キスシーンあり)
グレイに拾われスナックおとぎを手伝うようになってから三か月。
「またやっちまった…」
すっかり店の仕事にも慣れ、穏やかに暮らしている…はずが、何故か俺はグレイのベッドで腰をさすりながら起床する日々を送っていた。
「くそっ…イテテ…」
「アラ~大丈夫?」
「!?」
ベッドで呻いてると、ひょっこりと廊下からグレイが顔を出してきた。
「おはよう、ライ。昨日激しくしちゃったから腰辛いカシラ?起きれそウ?」
「…っ」
歩いて来たグレイが上体を起こした素っ裸の俺の腰を撫でてくる。長い指先が肌を這っていく感触に、
ぞくり
腰の奥が熱くなるような疼きを感じて…自分の体が恐ろしくなった。
「…平気だ、から、触んな」
「ふふ、ごめんなさい。じゃあ、あたしは朝ご飯温めとくワ。一緒に食べまショ」
「んー…」
素直に頷く気にならず微妙な返答で返せば、グレイはくすっと笑って部屋を出て行った。
パタン
「はぁ…」
未だに燻る自分の体を見下ろしため息を吐く。グレイに抱かれるようになった俺の体は異常に淫乱…もとい、敏感になっていた。真人とするスポーツ感覚のセックスとは違う、心も体も溶かされるようなセックスは麻薬のように俺から思考を奪い前後不覚にしてしまう。止めなくては…と理性が働いてもいつの間にかグレイの腕の中にいる。そして朝を迎えてしまう。そんな恐ろしいループにハマって、気付けば三ヶ月が経っていた。
(昨日の記憶もほとんどねえし…マジでどうなってんだ…)
「はぁぁ…」
二回目のため息の後、のろのろとベッド横に置かれた洗い立ての服を掴む。グレイと寝た日は手を伸ばせる範囲内に全てが揃えられている。タオルしかりスリッパしかり、痛み止め、水、スポーツドリンクだってある。ありがたい事ではあるが、内心複雑だった。
(恋人でも何でもねえのに、こんな事されてもな…)
ただのセフレと思えば割りきれるのに、甲斐甲斐しく世話する姿を見てるとそうも思えない。ただの仕事仲間のはずがどうしてこんな不透明な関係になってしまったのだろう。
「いて、て…」
俺は腰をさすりながらグレイの寝室から出た(※俺にも控え室が自室として与えられているがほとんどそっちで寝る事はない)。洗面所に移動すると、猫背の男が髭を剃っていた。元人間で今は狼男のソルだ。ソルは俺に気が付くと半目のままこちらを向いた。
「おぅ、ライ、おはよ」
「…おはよ」
先々週、突然やってきたソル。最初は狼化で荒れていたが、グレイの霧によって睡眠が確保されるようになってからは大分落ち着き、元々セフレ時代に同居していた事もあって、あっという間にスナックおとぎに馴染んでしまった。しかも持ち前の性欲の強さと図々しさを発揮して当たり前のように俺とグレイの歪な関係にも割り込んできた。つまり乱交。3Pである。冗談じゃない。
(そうだ、昨日もソルとなんかやってた気がする…)
ぼんやりした記憶を探ろうと顔をしかめてるとソルが脛を蹴ってくる。
「なぁ~ライ、そろそろ後ろ使わせてくれよ~」
「…」
「ヨクしてやっからさ?あんなタチリハビリ中の奴よりぜってぇオレのがいいぜ。なぁ?物は試しだぜ、なぁなぁなぁ」
「うるせぇ、カミソリ負けしてろ、ヘンタイ共」
ウザ絡みしてくるソルを一睨みしてから歯ブラシに歯磨き粉を塗りつけていく。
「機嫌ワリーなぁ、昨日イラマしたのまだ怒ってんのか?」
「逆に怒らねえ奴がいるのか(てかイラマしたのか)」
「くくっ、ドMとか泣いて喜ぶだろ。なあ、そういうのはいーから真面目に考えてくれよ。グレイの奴、普段タチやらねえ癖にてめえの後ろだけは頑として譲らねえんだ。あの手この手で攻めてもだめだしよぉ…こうなりゃてめえに“欲しい"って言わせるしかねえ」
「はあ…なんでそんなに俺に固執するんだ。あんたは女もいけるんだろ」
「女もいけるが今はてめえを落とす事に専念してえ」
「専念するな」
淡々とつっこみ、歯ブラシを咥える。シュコシュコと磨いてるとソルが顔を寄せてきた。もう髭は剃り終えたのか洗面台に両手をつき至近距離で見つめてくる。こうして見ると奴の顔も無駄に整っていて…腹が立った。グレイとのセックスはまあ百歩譲って良いとしても、この男とやるのは俺が生きる上で全く、これっぽっちも、一ミクロンも必要のない事だ。だからさっさと締め出せばいいのに…なのに、何故か俺はグレイだけでなくソルも拒否できずにいた。
(この、クソビッチが…)
そんな自分が一番腹立たしかった。
「誰にも深入りしねえネコのアイツが、禁じ手にしてる悪魔の媚薬を使ってまで抱いてんだぜ?そんなてめえに欲しいってねだられたら…流石のアイツも止めらんねえ。絶対いける!」
「あふはほひひゃふ?(悪魔の媚薬?)」
「体液だよ。てめえはグレイの唾液やら精液やら…バンバン飲まされてるだろ?」
「ほれはほほいは(それがどうした)」
「…おい、嘘だろ。まさか説明無しでやられてんのか?」
「??」
「アイツ、どんだけモノにしたかったんだ…手段選ばなすぎだろ…」
俺が首を傾げているのを見てソルは酷く驚いた顔をした。
「いいか、ライ、良い事を教えてやる」
驚きの表情から一転して、ニヤリと悪い笑みを浮かべるソル。肩に腕を回してひそひそと耳打ちしてくる。
「アイツの体液には媚薬と同じ効果があんだよ。劇薬レベルの性淫剤だ」
「!?」
「オレが間違って適用量飲んだ時は一晩中勃ったままだった。頭もぶっ飛ぶし麻薬レベルの効き目だ。そんなのをてめえは毎日飲まされてたんだぜ、くくっ、とんだ悪魔だなぁ、アイツ」
ソルの言葉を聞いて、三か月ずっと気になっていた疑問が晴れた。どうして好きでもないグレイ達との行為を受けいれ、しかも意識を飛ばす程気持ちよくなってしまうのか、
(まさか媚薬を飲まされていたなんて…)
普段のグレイが善良的だからこそ盲点だった。てっきり失恋のショックで体と頭が同時におかしくなったのかと思っていたが、まさかグレイが淫乱化の犯人だったとは…。合点がいくのと同時に、今度はグレイへの不信感がわいて出てくる。
「…」
「おーい、ライ?聞いてんのかー?」
「…」
俺は口をゆすぎ歯磨き粉を洗い流してから廊下に出た。ソルが追いかけてきて何か言っていたがそれらを全てスルーして店内に向かった。
***
「ソル、あんた…ライに何かしたワネ」
スナック営業も終わった深夜頃、夜食を食べに来たソルにグレイが問い詰めた。
「んぁ?何の事だぁ?」
ソルは素知らぬふりをしてカップラーメンを口に運ぶ。
「しらばっくれてもダメヨ。ここ最近ずっとライがあたしを避けているノ。どうせあんたが余計な事を吹き込んだんでショ?白状しなさい」
「くくっ、別に“余計な事”じゃねえだろ。知らずに毒を盛られ続けるなんてフェアじゃねえからな」
「…あたしの事を話したのネ」
「いいだろ。霧は見せてんだから、正体がバレるのも時間の問題だぜ」
「…それは、そうだけど…」
グレイは戸惑うように目を伏せ、最近ずっと結んで過ごしている後ろ髪を撫でた。この三日ほど、ライはグレイを避けていた。物理的な距離はもちろん、会話も、最低限の仕事で必要なものは除き、ほとんどしなくなった。
(ライと話せないのがこんなに寂しいなんて…)
そこまで踏み込んでるつもりはなかったが、ライの態度にも、自分の胸を占める寂しさにも戸惑いが隠せなかった。
「くくっ、ざまぁねえなぁ」
落ち込むグレイを見たソルは楽しそうにくくっと喉で笑う。
「どうしてそこまでライに入れ込むのか理由は知らねえが、媚薬を使わねえでも体を開いてもらえるよう、精々真面目に求愛しろや。…ま、ネコビッチのてめえにタチの求愛ができるとは思えねえけどなぁ、くくっ」
「あんたほんとイイ性格してるワ…」
「お互いサマだろ?ライのケツをシェアしてくれんなら間を取り持ってやってもいいがな」
ソルがニヤリと笑うと、グレイは目を瞑り深いため息を吐くのだった。
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(なんだ、普通の仕事仲間に戻れるじゃねえか)
てっきりすぐに部屋に連れ込まれて媚薬を仕込まれるかと思ったが…何もされない事にすごくホッとしたし、拍子抜けもした。
(まあ、グレイってモテるし、今はセフレのソルもいる。相手には困らねえか)
今までの俺とだけやっていた日々がおかしかったのだ。
ちくり
ふと、胸が痛んだ。でもその痛みは気にしないようにして、自分以外誰もいない…静かなベッドに横になるのだった。
『…い、…ぱい、』
誰かの声がする。俺はその声を聞きたくなくて耳を塞いだ。けれど、その声は直接脳に響いてるように、むしろ更に音量を上げて響いてくる。
『センパイ』
はっと弾かれたように顔を上げると、真人を奪った男…後輩が、誰かの膝の上に座った状態で見てくる。後輩が跨いでる膝は、俺もよく知る男のもので…でも、それは真人のものではなく、そう、
「グレイ…!!」
かけ布団を蹴りながら勢いよく起き上がった。はあ、はあ、と息を荒くして横を見ると…誰もいない。俺は息が整わないままグレイの寝室に飛び込んだ。
バタン!
部屋は暗くて、ベッドが乱れた様子もない。まだグレイは戻ってきてないようだ。俺はすぐに扉を閉じて店内に向かった。
「…!」
店内も真っ暗で、誰もいなかった。時計を見ると夜中の三時頃。ちょうどグレイがつじつま合わせで外に出てる時間だ。別におかしい事はない。…だけど、俺は酷く胸騒ぎがして、ずっと鳴り止まない耳鳴りのせいで気持ちが悪くなってくる。
「うっ…」
蹲って口をおさえた時だった。
チリリーン
「ただいまー…って、え、ちょっと、ライ?!大丈夫??」
コートを着たグレイが現れる。蹲る俺を見て、血相を変えて駆け寄ってきた。
「ライ、気持ち悪いノ?」
心配するようにグレイが覗き込んでくる。俺はその姿を見た瞬間、ほとんど反射のように、その体に抱きついていた。
ぎゅっ
驚くグレイの胸に顔を埋めて「よかった…」と呟いた。
「…そう、あんたまた悪夢を見たのネ、可哀想に…」
グレイがそっと背中をさすってくる。その優しい撫で方に色んな感情が込み上げてくる。この三ヶ月、真人や後輩の悪夢で苦しむ俺を支えてくれたのはグレイだった。睡眠障害に摂食障害。どちらも今は乗り越えたがきっとグレイがいなかったらもっと長く引きずっていただろう。
(もしかして、グレイ…俺の失恋を和らげようと媚薬を…?)
そこまで考えたところでグレイの手がトントンと優しく背中を叩いてくる。
「大丈夫、夢は夢ヨ。作り物だから…もう悪夢みたいな事は起きないから安心して」
「……夢に、あんたが出てきたんだ…」
「!」
いつものように後輩が現れる悪夢だったが、その横にいたのは真人ではなく、グレイだった。後輩がその体に触れているのを見て、すごく嫌な気分になった。胸がモヤモヤして、不安になって、居ても立っても居られなくなった。俺はこの焦りの意味をやっと理解した。
「それで俺…」
「ライ、ごめんなさい」
「…!」
俺の言葉を遮るようにグレイが謝ってくる。その声音があまりにも悲しそうで、つられ顔を上げると、眉を下げ苦悩するグレイと目があった。
「媚薬を飲ませて体を奪うなんてひどい事をしてごめんなさい。ライが怒るのも当然よ」
「…」
「最初はね、ライに避けられてすごく寂しかったけど、店を出て行かれないだけありがたい事だって気付いたの。触れ合えなくても一緒に過ごせるなら幸せだって」
「…グレイ」
「…でも、悪夢に出てくるぐらいあたしが嫌になったのなら、もう潮時ね…」
「!!」
違う。そうじゃない。悪夢に出てきたのは、そっち側じゃない。奪われる側だ。
「実は、もうあんたの新しい仕事と部屋は探してあるの。明日には話を通しておくからあんたは荷物をまとめておいて。今週中には移動できると思うわ」
「…っ」
だけど、今の俺にはグレイの言葉を遮ってまで説明する余裕はなくて、唇を震わす事しかできない。そんな様子を見たグレイがますます苦しそうな顔をして笑う。
(違う、違うんだ)
真人の後ろ姿がちらつく。また俺は逃げるのか。言えないまま失うのか。そう思った瞬間…体が動いていた。
ぐいっ
グレイの胸ぐらを掴み、引き寄せて、
ちゅ
リップで潤ったその唇に自分の唇を押し付けた。
「!」
グレイの瞳が大きく見開かれる。床に腰を下ろしたグレイを跨ぐようにして膝立ちになった俺は言葉よりずっと伝えやすい形で想いを伝えた。
「ん、…」
唇の隙間から舌を入れて、グレイのと絡ませた。くちゃ、ちゅくと濡れた音が暗い店内に響く。互いに目を瞑り溶け合うようなキスを味わい、頭の奥を溶かしていく。
(…ああ、これだ)
悪夢で冷え込んだ心が温かく満たされるのを感じた。
「…ふ、…んく、」
口内に溜まった唾液をごくりと嚥下する。まるで禁断の果実を口にするような緊張があった。それはグレイも同じようで、俺が嚥下したのをみて、ぎゅっと腰を抱く腕の力を強めてきた。
「ライ…」
いいの?と問うように見つめてくる瞳に、俺は無言で頷き、もう一度自分から唇を重ねた。グレイの唾液を飲んだ体がじわじわと媚薬で熱されていくのがわかる。それでも俺は構わずグレイとのキスを味わい続けた。やがて互いに息が弾み、服を邪魔に感じ始めた頃
「はぁ、ズルいわ」
とろんと半目になった俺の濡れた唇を指先で拭いながらグレイがぼやいた。
「こっちは禁欲中で飢えてんのに…こんな事されたら、我慢できなくなっちゃうでしょ。わかってやってるの?」
少し怒った様子で言われ、俺は答えるかわりに目の前の甘い指先に噛みついた。カプリと軽く歯を立てて、舌で舐めあげ、ちゅるりと吸えばグレイは深くため息を吐いた。
「もう知らないから」
ふわっと浮遊感を感じたと思えば姫抱きの形で抱かれる。そのまま廊下に進んでいく。その足がどこへ向かっているのかは俺にもわかっていた。だけど、俺はその腕の中から逃げ出さず、逆に「早くしろ」と強請るように唇に噛みつくのだった。
おわり🚬
⚡<最終的に淫乱堕ち…
🚬<うふふ、そんなライも素敵ヨ❣️
🐺<にしてもあれだな。ぜってぇグレイをタチに戻すな、という教訓を得られたな
🦊<ですね…これは…色々と勝てない…
🐥<グレイを侮るなと言っただろう。それで、結局駄犬はライを抱けたのか
🐺<はっ!!
🚬<無理デショ。あたし嫉妬深いモノ
🐺<ここのルートのオレもお預けかよ!もっと頑張れやオレ!!
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BL
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