短編

リナ

文字の大きさ
49 / 55
Ifシリーズ

おとぎ幼稚園👶(不死鳥組)

しおりを挟む
 ※不死鳥シリーズお馴染みのキャラが幼児化するだけ
 ※保育士はライさんとセツさん
 ※保護者枠は柴沢・龍矢(珍しくグレイは幼児こっち側)
 ※一応IFの世界なのでこの位置に置いてます




「ライせんせい」

 くんっと服が引っ張られる感覚がして振り向くと、栗色の髪の、可愛らしい顔立ちをした男の子が立っていた。その手には折り紙が握られている。

「ユウキくん、どうした?」
「これ見て!」

 はい、と渡されたのは狐の形に立体的に折られた折り紙だった。

「すごいな…ユウキくんが折ったのか?」
「うん、こことここがすごくむずかしかったよ」
「そうだよな…こんなの大人だって折れないと思う。ユウキくんは器用だな」

 目線を合わせて「すごいな」と褒めると、えへへと照れ臭そうにして後ろで手を組んだ。

「これね、せんせいにあげるためにつくったんだ」
「え…俺に? 嬉しいけど、こんな大作もらえないよ。ご両親に見せてあげたら?」
「せんせいの為にがんばって作ったから、せんせいにうけとってほしいの」
「そ…うか。わかった。じゃあ、大事に机に飾るよ。ありがとな」
「うん、それみて俺のこと思い出してね」

 ユウキはもじもじと身を捩ってから折り紙を持つ手を両手で包んでくる。

「?」
「それでね」

 チラリと上目遣いで見上げてきた。

「せんせいにお願いがあるの」
「ん? お願い?」
「俺…せんせいにはね、くん付けじゃなくて、ユウキってよびすてしてほしいんだ」
「え」

 くん付けは園のルールとして決められている。だが、何度も折られた形跡のある折り紙を見ていると無下にするのも可哀想で、どうやってうまく断ろうか悩んでいると


「俺ががんばってつくったうけとったよね?」


 じゃあお願い聞いてくれるよね?とユウキはにっこりと笑いながら圧をかけてくる。

 (こ、こわ…)

 幼稚園児の癖に揺すりをかけてくるなんて…将来どうなってしまうのか恐ろしすぎる。俺は呑まれるようにして頷いた。

「わかった。じゃあ、二人の時だけだぞ」
「わーい!」

 ユウキはえくぼができる全開の笑顔を浮かべて「じゃあねー!!」と勢いよく去っていく。走るなよと背中に注意したが多分聞こえてないだろう。俺はやれやれと息を吐きながら立ち上がった。その足でお昼寝部屋に向かう。皆が問題なく眠れているか、起きている子がいないか安全確認の為にも見に行くと

 すやすや

 園児達は仲良く並んで眠っていた。

「皆、問題なさそうだな」
「セーンセ♡」
「うわっ」

 布団に潜っていた頭が脈絡もなくひょっこりと顔を出して悲鳴をあげかける。慌てて口を覆って部屋を見回すが、誰も起き出してくる気配はなかった。ホッと胸を撫で下ろし、例の園児の方を見れば…ひしっと俺の足に抱きついてきた。

「センセーよばいにきたのカシラー?」

 園児らしからぬ事を園児らしからぬ表情で言うその子の名前はグレイ。海外の子という事もあるが、綺麗な顔立ちをしていて他の子より大人っぽく見える。…もっとませてるのは中身の方なのだが。俺は膝をつきながら、小声で語りかける。

「夜這いなんて言葉どこで覚えたんだ。みんなビックリしちゃうから、誰にも言っちゃダメだぞ」
「うふふ、わかってるワ」

 あなただけよ、とこれまたませた事を言いながら

 むー

 頬に唇を押し当てられギョッとする。

「コラ! こ、こういう事はまだ君には早い!(というか俺が捕まる!)」
「あいじょうひょうげんにハヤいオソいはないワヨ?」
「うぐ…確かにそうだけど、こういうのは好きな人とやるものだから…」
「あたし、センセーのコト好きだから問題ないワ」
「またませた事言って…」

「アッ! ズルいー!」

 ちびっこグレイを引き剥がしているところでさっき走り去ったはずのユウキが廊下から顔を出した。俺に抱きつくグレイを指差してズルい!!と地団駄を踏む。

「ズルいズルい~!! ライせんせいは俺のだよ!! はなれてー!」
「エー? センセーは皆のものデショ」
「違うもん! せんせいは俺のお嫁さんになるんだもん!」
「えっ」

 いつそんな話したよ?!とびっくり仰天していると、ユウキがグレイとは反対側の腕をぐいぐい引っ張ってきた。

「いいから俺のライからはなれてー!」
「ヤダ~♡」
「むきー!!!」

「落ち着け二人とも。喧嘩は良くないし、ここは皆がお昼寝する場所だから静かに…」

 ひしっ

 言葉の途中で、腰に、別の園児が抱きついてくる。まだ布団を半分かぶってるが銀色の髪が見えたので誰なのかはすぐにわかった。

「ソルジく」
「ママァ…」
「!」

 ママと言いながらちびっこソルジが顔を押し付けてくる。まだ寝ぼけているのか、悪夢を見たのか、よくわからないが俺を母親と勘違いしているらしい。

 (いつもはやんちゃ坊主なのに…)

 玩具を投げつけてきたり噛みついてきたり揚げ足をとってきたり、起きてる時はあまり可愛げのないやんちゃ坊主なのだが、こうしてしおらしく抱きついてくる姿を見ていると「やっぱり子供だな」と微笑ましくなった。よしよしとその頭を撫でてやる。

「大丈夫、大丈夫…怖くないよ」
「んぅ…」
「ほら、もう一回寝ような」

 俺が布団に誘導してやると、ちびっこソルジは素直にコクリと頷いて布団に潜り込む。しかし、改めて横になると逆に目が冴えてしまったのか、ハッと我に返る。

「?!…!!」

 慌てて部屋を見回し、俺やグレイ・ユウキの姿を捉えると、みるみる顔が赤くなった。

「あああ…」

「ソルジくんってママっ子なんだー」
「うふふ、悪ぶっててもママはだいすきなものよネー」

 さっきまで俺を挟んで言い争っていたはずの二人が「「かわい~」」と仲良く声を揃える。ちびっこソルジはそれが耐えきれなかったのか、顔を真っ赤にしたまま近くにあった枕をゲシ!と二人にそれぞれ投げつけた。

「てめえら、見てんじゃねえ!」
「わー、いたーい」
「キャー、こわーい」

 あははと三人で走り回る。つられるように他の園児達も起きだして、すっかりお昼寝部屋は追いかけっこ部屋になってしまった。

「ちょちょ、みんな! ころんじゃうから! 止まって!」

 一人ずつ捕まえては言い聞かせていると、

 とんとん

「?」

 太腿の横を優しく叩かれた。振り向くと、白金色の髪の人形のように整った顔をした男の子がこちらを見上げていた。

「君はセツ先生のクラスの子の」
「フィン」
「フィンくんか」

 フィンと名乗ったその子は、ぱっちりとした目元と長い睫毛、桃色の唇、陶器のような白い肌も相まって女の子かと思ってしまうほど可愛らしかった。…まあ、園児服は男女で分かれているので性別を見間違える事はないのだが。とはいえ綺麗な白金の髪をしているので地上に舞い降りた天使のように思えてしまう。

 (きっと大人になったらイケメンになるんだろうな…)


「せんせい、あなたの名前をおしえてください」


 ふとちびっこフィンが真剣な顔で尋ねてくる。

「ん? 俺はライだよ」
「ライ」
「っ…あの、先生を呼ぶ時は、最後に“先生”をつけようね」

 膝をつき優しく諭すが、ちびっこフィンはオレンジ色の瞳を瞬かせるだけで肯定も否定もしなかった。

 (あれ、今の言葉、通じなかったかな)

 彼もどう見ても海外の子だし言語の壁があったのかもしれない。ジーっと見つめるだけのフィンを見て、俺はどう言い直そうか首を傾げていると…フィンが一歩、二歩と更に近づいていた。

 すっ

 それから両手を伸ばしてくる。小さな手で頬を包まれたと思えば、フィンは少し背伸びするようにして俺の唇に自分のを重ねてくる。


 ちゅ


「???!!!」
「ライ、けっこんをぜんていに付きあってください」
「な…ッ」
「あなたにひとめぼれしました」
「はいっ??!!」

 なんですと??!俺が素っ頓狂な声をあげて後ずさるとちびっこフィンはその場でにこりと笑った。

「うれしい、こんなにすぐ返事がもらえるなんて…」
「いやいや! そういう意味の“はい”じゃなくて!! って結婚が何かわかって言ってんのか??」
「あいしあうふたりがえいえんをちかってむすばれること」
「!!!」
「わたしはライをあいしてるからキスした」
「なッ…」

 愛してるだなんて初めて言われたし、子供に唇を奪われたことも衝撃だった。海外の子だからこんなに積極的なのだろうか。俺は顔を熱くしながら「えっと…」と俯く。


「あー! よそのクラスの子が! せんせいをイジメてる!」


 ちびっこユウキがとててっと駆けつけてきた。すぐにグレイとソルジもやってきて「まもれまもれ~」と抱きついてくる。

「いや、別にイジメられてはないけど、って、ちょっ、どさくさに紛れて触るな! くすぐったい!」
「うふふ、イイ体~」
「おい見ろよ、腹筋すげーぜ」
「もー! せんせいの体は俺のなのにッ…でもちょっと触りたい…、うわー、すごーい、かたーい」
「ひっ、お前ら…そんなところ、触るな! ほんとっ、いい加減に!」

 三人がかりでもみくちゃにされていると、顔の上側から綺麗な顔が覗き込んできた。

「ライ、もういちど、キスしたい」
「っ?!!」

 俺は慌てて顔を背けて避けるが、四人がかりで押し倒され身動きがとれなくなる(下手に蹴ったら怪我させてしまう)。床で呻いていると同僚の保育士セツが「おーい」と顔を出してきた。

「何やってんだーうるさいぞー」
「セツ! いいところに!」
「お前なあ、子供に押し倒されて情けなくねえのか…ってしかも全員男かよ。おい、君達、クラスにはたくさん可愛い女の子達がいるだろう。彼女達を差し置いてそのデカいのを襲うのはちょっと趣味が悪いんじゃないか?」

 セツは園児達を順番に引き剥がしながら呆れ顔をする。俺が言い返すより先に、横にぺたんと座らされた園児達が一斉に口で抗議した。

「俺らはせんせいが大好きだからデカくても関係ないの! てかデカいほうが泣かせがいがあるし!」
「そうヨ! あなたこそセンセーをとられそうになってジェラってんじゃないノ~?? 器が小さいオトコはきらわれるワヨー!」
「そういうしらけた事言うヤツにかぎってハマるとやべえんだぜ、ヘテロヤロー」
「ライよりきれいな人はいない。目がくさっているんじゃないか?」

「か、火力高えな…この園児達…」

 四人の猛攻に遭い、流石のセツも面食らう。その横顔を見て、思わず俺は噴き出すのだった。




 おわり














 ちょっとだけおまけ



「ユウキさん、お待たせしました」
「えー柴沢もうきたのーやだやだーもっとライせんせいといたいー」
「駄々をこねないでください」
「ぶー!!」

 今日もビシッと黒スーツを着こなした柴沢がちびっこユウキを迎えに来た。完全にカタギではない雰囲気を漂わせているが毎日の事なので俺は慣れてしまった。いつものように今日のユウキの様子を伝えてから、ユウキ本人に向き直る。膝をつき「また明日な」と語りかけるとユウキはむくれ顔のまま「うん…」と頷く。それに苦笑を浮かべ、手を振って見送った。

「こんばんは」
「!」

 ユウキ達と入れ違いで、マスクに帽子、サングラスまで装備した一見すると怪しすぎる男性が入ってくる。怪しいは怪しいのだが、スタイルが良すぎて“変装中”なのだとすぐにわかった。あまり顔の方を見ないようにしつつ誰の父親なのかなと周囲を見回す。

「フェニックス」
「はい」

 すると、男が呼びかけた瞬間、玄関近くで待機していたちびっこフィンが駆け寄ってきた。ぴたりと男の横に並び、こちらを見てくる。

 (フィンくんのお父さんだったのか…)

 似ていないけど、色々事情があるのだろう。

「先生、今日もありがとうございました」
「いえ…あの、俺この子のクラス担任じゃないので、すぐにセツ先生を呼んできますね」
「必要ありません。この通り五体満足で生きているので充分です」

 (五体満足で充分…)

 園児の親にしては結構厳しい事を言う人だなと驚きつつ、少しだけフィンが心配になってそちらを見ると

 ジー

 オレンジの瞳はやけに熱い視線を俺に送ってくる。瞳の奥には炎のような熱を灯していて、見ているだけで溶けてしまいそうな感覚になった。

「…っ」

 唇は一切動いていないのに“好きです”と言われている気がして、また頬が熱くなる。

 くすっ

 笑い声がして正面に顔を戻すと、終始感情の揺らぎがなかった男がくすくすと笑っていた。今までの近寄りがたい雰囲気が一気に柔らかくなる。

「フェニックスはライ先生が大好きなようですね」
「え、あ…そう…みたいですね」
「引き続きこの子をよろしくお願いいたします、では」

 二人はあっさりと姿を消した。俺は一人残されて「俺あの親御さんに名乗ったっけ…?」と首を傾げる。

「まあいいか」

 他に残っている園児がいないか確認していくと、部屋の隅で積み木を退屈そうに並べる子がいた。この子はいつも迎えが遅いので、見慣れた光景でもある。

「ソルジくん」
「…」
「もうすぐお母さんが迎えに来てくれるから…それまで俺と遊ぼうか」
「…ウン」

 また少し泣きそうになってるちびっこソルジの横に俺は座り込むのだった。




 ほんとにおわり👶

 (※グレイはドワーフパパのシモンがお迎え済みです)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...