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二話
★つけまつける、そしてBL展開になる(WHY)
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「ウタ、にしても今日は露出多めだな。これじゃキャストと間違われるぞ」
半田店長が強面のまま眉を少しだけひそめた。僕はすぐさま太ももに両手を置いて隠す。
「う、お見苦しいものをお見せして…すみません…」
「見苦しくはないが、目には毒だな」
「…?(一緒じゃない?)」
「まあいい。俺から離れなきゃスタッフに無理矢理引っ張っていかれる事もないしな。で…車が到着するまで時間があるし、せっかくだから自分でも店内を探してみるか?」
「えっ!いいんですか!」
「もちろん。ウタには悪い事しちまったからな。協力させてほしい」
店内のどこでも案内するぞ、と扉を開けて先導してくる。初対面の時は問答無用で脱がすし、ドドーンと性器晒すし、この人大丈夫かと思ったけど、面接者じゃない僕にはこんなに紳士的なのかと感動した。ただ、どことなく余所余所しく感じてしまうのも事実で…
(半田さん…あんなに、僕と、エッチな事したのに…)
さっきだってそうだ。可愛いって言ってくれたのに触ってくる気配は皆無。
“俺が触るのは面接時だけだ。もう手出さねえよ”
その言葉通り僕には二度と触ってこないのだろう。流石プロ。いや、店長。線引きがしっかりしている。そこに寂しさを感じてしまうのは、昨日色紙探しで徹夜していてBLタイム(&自慰)ができてない=欲求不満だからだろう。
僕はそれらの煩悩を振り払うようにブンブンと首を振った。
「着いたぞウタ。ここが来客・面接者用のロッカー室だ。今日は誰も使ってないから好きなだけ調べてもらって大丈夫だぞ」
「!…ありがとうございます!」
僕は気を取り直してロッカーを一つ一つ開けて念入りに調べていった。しかし綺麗に掃除されているからこそ、開けた瞬間何もないのがわかってしまう。靴置きの方にも挟まってない。僕は落胆と共に立ち上がった。
「どうだった」
「なかったです…」
「だよなぁ…たまにキャストがここを出入りすることあるからそいつらが持っていったのかもしれんが…」
半田店長が、カタンと閉じられたロッカーの扉に手を置き、僕の肩越しにロッカーを覗く。背中が触れあいそうな距離になると半田店長の大人っぽい香水が漂ってきてドキドキした。
「…ウタ、」
ふと半田店長が名前を呼び、顎先に触れてきた。
すっ
硬い指先を感じた次の瞬間にはくいっと顔を上げさせられ、半田店長と肩越しに目が合う。突然の至近距離にドキリと心臓が跳ねた。
(え、え、何、これ、この距離…まさか、き、キス??!)
僕はわたわたしつつ、半田店長のキスを思い出し…期待して目を閉じる。すると、
「ウタ、つけま、取れかけてるぞ」
「?!」
まさかの台詞に、僕は慌てて目を開けた。そして自分で確認する。
(うわああ…!ほんとだあああ!恥ずかしいっっっ!!)
メイクが崩れた顔をあんな至近距離で見られるなんて恥ずかしすぎる。しかもキスされるかもなんて期待しちゃって、なんて僕は浅ましいんだ。真っ赤になる顔をショルダーバッグから出したメイクポーチで必死に隠した。
「ううっ、今すぐ直してきますっ…!」
「そうだな、目に入って雑菌が入ると良くないからな。ロッカーの鏡じゃ使いにくいだろうし、出て左のトイレを使ってくれ。あそこなら椅子も備品も揃えてあるし直しやすいはずだ」
「はぃっ!ありがとうございますっ!」
「ああ、あと、」
バタバタとロッカー室から出て行きかけたところで半田店長が呼び止めてくる。僕は「ふぇ?」と情けない顔で振り向いた。
「あんな風に可愛く目を閉じられたら男は勘違いするから気をつけろよ」
半田店長は強面の中にほんの少しの大人の色気を忍ばせて微笑んでくる。
「~~~~!!!」
胸がときめく、どころか、下半身も反応しかけた。ヤバイ。
(うう…やっぱ、半田さんは危険だ…)
大人の魅力というか、初めての人効果というか、僕の秘めたるナニカを容赦なく揺さぶってくるのだ。色んな意味でドキドキしていると半田店長はインカムでどこかと話し始めた。
「ああ、その辺りだ。隅まで確認してくれ。なに?またクロが遅刻?…アイツ、何度シメたら真面目に出勤するようになるんだ…ペナルティーイチだな。ああ、その配置でいってくれ」
複数の相手と会話しているのか内容はよく理解できなかった。ずっと立ち聞きしているのも申し訳ないので僕は一度会釈してからそうっとロッカー室を出た。言われたルートでトイレに向かう。三十秒もせずにトイレの前に着いた。
(てか僕…どっちに入ったらいいんだろう…)
男用。女用。もちろん男用なのだろうが、備品を揃えてある、という事は女用に入れという事かもしれない。そもそもここは男性用風俗で、女性のスタッフは一度も見かけた事がない。いるのは女装したキャストか男のスタッフのみ。女性がおらず…ほとんど使わないはずの女用のトイレをわざわざこんな関係者側の場所に作るものなのだろうか。
(ああもう!よくわからないけど、とりあえずは男用に入ろう!)
女用に入って女性と遭遇したら大変だし、男用なら、一瞬驚かせはするかもしれないけど…迷惑にはならないはずだ。自信のなさを飲み込み「たのもー!!」と勢いよく男用の扉を開けると
「ンアアあッ」
いきなり鼻にかかった甘い声が響く。
「へ、」
「ああぁ~!もっと、んあぁっ、そこ、やぁっ!きもちぃ!もっと突いてぇっ!」
「おーい、そんなにうるさいと店長にバレるぞ」
「んあぁんっ!だって、こんな激しくされたら、んう、アアアンっ!」
奥の個室でこっそりと「バレちゃうぞ(ヒソヒソ)」とかやっているならまだしも、普通に、ガッツリ、ナニもかもが丸見えになる洗面台の位置で濃厚に絡み合っていた。一人はスーツでもう一人はキャストらしく淫らな衣装を身に着けている。立ちバックだから色々迫力があって…僕はその、あまりにも突然出くわしたエロ展開に思考停止&棒立ちになった。
「はぁっ、やっ、そこ、アアッ、イキそっ」
「お前ほんと俺のチンコ好きだなぁ」
「ンあっ、うんっ、チンコ、だけ、好きぃ」
「…やり殺すぞゴラァ」
お仕置きだとでも言うように行為を荒々しくさせる男。それに酔いしれるキャスト。僕はそれらを五秒ほど眺めて、そうっと扉を閉じた。
ぱたん…
「お、お幸せに…」
謎のエール(?)を送って、女用トイレに入り直すべく体の向きを変えた。
「ちょっとマテェイ」
しかし、当然見逃してもらえるわけもなく、男用トイレの扉から腕が伸びてきて…ぐいっと引きずり込まれる。
「わわわあっ…!?」
ヤバいヤバイ。トイレセックスなんてBLで山ほど見てきたけど、大体こういう風にモブがトイレセックスに遭遇すると高確率で巻き込まれるのだ(ウタ調べ)。
(このまま連れ込まれたらヤバイ~~~~!)
僕はジタバタと暴れて抵抗したが、キャストの腕力は思ってるより強くてそのまま男用トイレへと引き戻されてしまう。
パタン
「君、今、見たよね」
まだ頬を染めたままのキャストが、扉を背で閉じながら真剣な顔で尋ねてきた。
「み、みてましぁん!!」
「”みてません”なのか、”みてました”なのかどっちだよ」
「見てませんッッッ」
「へえー?じゃあなんでそんな焦ってるわけ?」
「!!」
「もー、放っとこうぜ。どうせコイツもキャストだろ?店長にはチクらねえって」
「うるさい、チンコは黙ってろ」
「アア?!誰がチンコだ!」
「お前だよ」
ほんの一瞬前まで性器を丸出しにして絡み合っていたのに言い合いになるなんてこの二人はケンカップルなのだろうか。…いや、彼氏をチンコ呼びはしないか。僕が妙に悟り顔となっているとキャストが指さしてくる。
「こんなちんちくりん店長の趣味じゃないし、そもそもキャストなら一度は顔見たことあるから…俺が覚えてないって事は部外者確定だよ」
「うわーでたよお前の特技。一回顔見たら絶対忘れないっていう接客向きに見えて風俗では地獄を見る特殊ドМ能力」
「うるさいな。チンコしか特技がないお前よりましだから」
「オイ!」
「とにかく、キャストじゃないなら店長にバラされちゃうし、ちゃんとここで口止めしとかないと俺ら二人ともクビだよ」
(そっか、スタッフとキャストはやっちゃダメなのか…いや、トイレでやるのがダメ?)
どっちもな気がするが、とにかくこの二人にとって目撃者の僕は見逃せないのだけは理解した。僕は必死に弁解する。
「あのっ!僕、今見たモノ、絶対半田店長には言いません!誰にも言いません!だから解放してください!!」
「ほら、ガッツり見たっていってるし、店長の名前知ってるから知り合いっぽいし余計アウト」
「ウッ(墓穴掘った)」
ガシッ
「?!」
死刑宣告のように、スーツの男に羽交い締めにされる。
半田店長が強面のまま眉を少しだけひそめた。僕はすぐさま太ももに両手を置いて隠す。
「う、お見苦しいものをお見せして…すみません…」
「見苦しくはないが、目には毒だな」
「…?(一緒じゃない?)」
「まあいい。俺から離れなきゃスタッフに無理矢理引っ張っていかれる事もないしな。で…車が到着するまで時間があるし、せっかくだから自分でも店内を探してみるか?」
「えっ!いいんですか!」
「もちろん。ウタには悪い事しちまったからな。協力させてほしい」
店内のどこでも案内するぞ、と扉を開けて先導してくる。初対面の時は問答無用で脱がすし、ドドーンと性器晒すし、この人大丈夫かと思ったけど、面接者じゃない僕にはこんなに紳士的なのかと感動した。ただ、どことなく余所余所しく感じてしまうのも事実で…
(半田さん…あんなに、僕と、エッチな事したのに…)
さっきだってそうだ。可愛いって言ってくれたのに触ってくる気配は皆無。
“俺が触るのは面接時だけだ。もう手出さねえよ”
その言葉通り僕には二度と触ってこないのだろう。流石プロ。いや、店長。線引きがしっかりしている。そこに寂しさを感じてしまうのは、昨日色紙探しで徹夜していてBLタイム(&自慰)ができてない=欲求不満だからだろう。
僕はそれらの煩悩を振り払うようにブンブンと首を振った。
「着いたぞウタ。ここが来客・面接者用のロッカー室だ。今日は誰も使ってないから好きなだけ調べてもらって大丈夫だぞ」
「!…ありがとうございます!」
僕は気を取り直してロッカーを一つ一つ開けて念入りに調べていった。しかし綺麗に掃除されているからこそ、開けた瞬間何もないのがわかってしまう。靴置きの方にも挟まってない。僕は落胆と共に立ち上がった。
「どうだった」
「なかったです…」
「だよなぁ…たまにキャストがここを出入りすることあるからそいつらが持っていったのかもしれんが…」
半田店長が、カタンと閉じられたロッカーの扉に手を置き、僕の肩越しにロッカーを覗く。背中が触れあいそうな距離になると半田店長の大人っぽい香水が漂ってきてドキドキした。
「…ウタ、」
ふと半田店長が名前を呼び、顎先に触れてきた。
すっ
硬い指先を感じた次の瞬間にはくいっと顔を上げさせられ、半田店長と肩越しに目が合う。突然の至近距離にドキリと心臓が跳ねた。
(え、え、何、これ、この距離…まさか、き、キス??!)
僕はわたわたしつつ、半田店長のキスを思い出し…期待して目を閉じる。すると、
「ウタ、つけま、取れかけてるぞ」
「?!」
まさかの台詞に、僕は慌てて目を開けた。そして自分で確認する。
(うわああ…!ほんとだあああ!恥ずかしいっっっ!!)
メイクが崩れた顔をあんな至近距離で見られるなんて恥ずかしすぎる。しかもキスされるかもなんて期待しちゃって、なんて僕は浅ましいんだ。真っ赤になる顔をショルダーバッグから出したメイクポーチで必死に隠した。
「ううっ、今すぐ直してきますっ…!」
「そうだな、目に入って雑菌が入ると良くないからな。ロッカーの鏡じゃ使いにくいだろうし、出て左のトイレを使ってくれ。あそこなら椅子も備品も揃えてあるし直しやすいはずだ」
「はぃっ!ありがとうございますっ!」
「ああ、あと、」
バタバタとロッカー室から出て行きかけたところで半田店長が呼び止めてくる。僕は「ふぇ?」と情けない顔で振り向いた。
「あんな風に可愛く目を閉じられたら男は勘違いするから気をつけろよ」
半田店長は強面の中にほんの少しの大人の色気を忍ばせて微笑んでくる。
「~~~~!!!」
胸がときめく、どころか、下半身も反応しかけた。ヤバイ。
(うう…やっぱ、半田さんは危険だ…)
大人の魅力というか、初めての人効果というか、僕の秘めたるナニカを容赦なく揺さぶってくるのだ。色んな意味でドキドキしていると半田店長はインカムでどこかと話し始めた。
「ああ、その辺りだ。隅まで確認してくれ。なに?またクロが遅刻?…アイツ、何度シメたら真面目に出勤するようになるんだ…ペナルティーイチだな。ああ、その配置でいってくれ」
複数の相手と会話しているのか内容はよく理解できなかった。ずっと立ち聞きしているのも申し訳ないので僕は一度会釈してからそうっとロッカー室を出た。言われたルートでトイレに向かう。三十秒もせずにトイレの前に着いた。
(てか僕…どっちに入ったらいいんだろう…)
男用。女用。もちろん男用なのだろうが、備品を揃えてある、という事は女用に入れという事かもしれない。そもそもここは男性用風俗で、女性のスタッフは一度も見かけた事がない。いるのは女装したキャストか男のスタッフのみ。女性がおらず…ほとんど使わないはずの女用のトイレをわざわざこんな関係者側の場所に作るものなのだろうか。
(ああもう!よくわからないけど、とりあえずは男用に入ろう!)
女用に入って女性と遭遇したら大変だし、男用なら、一瞬驚かせはするかもしれないけど…迷惑にはならないはずだ。自信のなさを飲み込み「たのもー!!」と勢いよく男用の扉を開けると
「ンアアあッ」
いきなり鼻にかかった甘い声が響く。
「へ、」
「ああぁ~!もっと、んあぁっ、そこ、やぁっ!きもちぃ!もっと突いてぇっ!」
「おーい、そんなにうるさいと店長にバレるぞ」
「んあぁんっ!だって、こんな激しくされたら、んう、アアアンっ!」
奥の個室でこっそりと「バレちゃうぞ(ヒソヒソ)」とかやっているならまだしも、普通に、ガッツリ、ナニもかもが丸見えになる洗面台の位置で濃厚に絡み合っていた。一人はスーツでもう一人はキャストらしく淫らな衣装を身に着けている。立ちバックだから色々迫力があって…僕はその、あまりにも突然出くわしたエロ展開に思考停止&棒立ちになった。
「はぁっ、やっ、そこ、アアッ、イキそっ」
「お前ほんと俺のチンコ好きだなぁ」
「ンあっ、うんっ、チンコ、だけ、好きぃ」
「…やり殺すぞゴラァ」
お仕置きだとでも言うように行為を荒々しくさせる男。それに酔いしれるキャスト。僕はそれらを五秒ほど眺めて、そうっと扉を閉じた。
ぱたん…
「お、お幸せに…」
謎のエール(?)を送って、女用トイレに入り直すべく体の向きを変えた。
「ちょっとマテェイ」
しかし、当然見逃してもらえるわけもなく、男用トイレの扉から腕が伸びてきて…ぐいっと引きずり込まれる。
「わわわあっ…!?」
ヤバいヤバイ。トイレセックスなんてBLで山ほど見てきたけど、大体こういう風にモブがトイレセックスに遭遇すると高確率で巻き込まれるのだ(ウタ調べ)。
(このまま連れ込まれたらヤバイ~~~~!)
僕はジタバタと暴れて抵抗したが、キャストの腕力は思ってるより強くてそのまま男用トイレへと引き戻されてしまう。
パタン
「君、今、見たよね」
まだ頬を染めたままのキャストが、扉を背で閉じながら真剣な顔で尋ねてきた。
「み、みてましぁん!!」
「”みてません”なのか、”みてました”なのかどっちだよ」
「見てませんッッッ」
「へえー?じゃあなんでそんな焦ってるわけ?」
「!!」
「もー、放っとこうぜ。どうせコイツもキャストだろ?店長にはチクらねえって」
「うるさい、チンコは黙ってろ」
「アア?!誰がチンコだ!」
「お前だよ」
ほんの一瞬前まで性器を丸出しにして絡み合っていたのに言い合いになるなんてこの二人はケンカップルなのだろうか。…いや、彼氏をチンコ呼びはしないか。僕が妙に悟り顔となっているとキャストが指さしてくる。
「こんなちんちくりん店長の趣味じゃないし、そもそもキャストなら一度は顔見たことあるから…俺が覚えてないって事は部外者確定だよ」
「うわーでたよお前の特技。一回顔見たら絶対忘れないっていう接客向きに見えて風俗では地獄を見る特殊ドМ能力」
「うるさいな。チンコしか特技がないお前よりましだから」
「オイ!」
「とにかく、キャストじゃないなら店長にバラされちゃうし、ちゃんとここで口止めしとかないと俺ら二人ともクビだよ」
(そっか、スタッフとキャストはやっちゃダメなのか…いや、トイレでやるのがダメ?)
どっちもな気がするが、とにかくこの二人にとって目撃者の僕は見逃せないのだけは理解した。僕は必死に弁解する。
「あのっ!僕、今見たモノ、絶対半田店長には言いません!誰にも言いません!だから解放してください!!」
「ほら、ガッツり見たっていってるし、店長の名前知ってるから知り合いっぽいし余計アウト」
「ウッ(墓穴掘った)」
ガシッ
「?!」
死刑宣告のように、スーツの男に羽交い締めにされる。
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