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第7話
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森を抜け、パレルトーン帝国に入った私は、サマーン領と全然違うことに驚いた。
現代でいうところの、中世のヨーロッパといった感じだろうか。
道はレンガで整備され、馬車が行き交っている。
シリウスは顔が割れているため、フードを目深に被っている。
それでも、淡い紅色の髪が見えてしまうのは仕方がないか。
シリウスが着ていた服は、馬の荷物の中にある。
必要な時に着替えればいいと持ってきたのだ。
「ここは王都?」
「いや、まだ違うよ。」
「すごい栄えてるのね。」
「そう......かな。」
「ルマンドの村とは全然違うわ。」
「あそこはあそこで、心地よかったよ。」
「私はこっちの方が好きだわ。」
転生する前--現代に戻ってきたような気分になる。
キョロキョロとする私を見て、シリウスは笑った。
「少し、見て回ろうか?」
「え?」
「情報を得たいってのもあるし。」
「あぁ、そういうことね。」
とりあえず、情報収集といえば酒場だ。
私とシリウスは、近くにあった酒場に入った。
思わず、私は耳を塞ぎたくなった。
酒場の人たちの不安や悩みの声が、一気に聞こえてきたからだ。
この力のことは、シリウスにも言っていない。
「アリス? どうかした?」
「ううん、なんでもないわ。」
喧騒の中で、二重に聞こえてくる声に私は耳を澄ませた。
『シリウス様はどこに行ったんだ?』
『国が大変な時に、あのアルタイル様には任せておけんし......』
(国が大変?)
カウンターでエールを頼んでいるシリウスに、私は近寄った。
「ねぇ、今、この国では何が起こってるの?」
その言葉が聞こえたのか、カウンター内にいた店員さんが自嘲気味に言った。
「隣国が攻めてくるって話でね。
それなのに、王宮内では王位継承を争ってるのさ。
困るのは国民だって言うのに。」
「攻めてくるって......本当なんですか?
だって--」
そう言いかけて、酒場内を見回した。
みんな不安の声はあれども、戦争になりそう、なんて思ってはいない。
「おねーちゃんは冒険者か何かかい?」
「えぇ、まぁ。」
「じゃあ、冒険者ギルドに行くといいよ。
そこで警備隊を募っているから。
詳しい情報が聞けるんじゃないか?」
「後で行ってみます。」
シリウスからエールを受け取って、私たちは空いてる席に座った。
複雑そうな表情をしているシリウスに、私は声をかける。
「戦争になりそうって、本当なの?」
「いや、違うんだ。」
「?」
「兄さんが--あぁ、アルタイルって言うんだけどね。
その兄さんが貿易を担当してるんだけど、
その貿易船が襲われたんだ。」
「襲ったのが隣国ってこと?」
「分からない。
分からないのに、隣国にやり返すって......」
「そんな......それで戦争を起こそうとしてるのね?」
「止めようとしたんだけど......ダメだった。
事実を調べて、賠償させればいいって言ったんだけどね。」
「シリウスの方が正しいわ。」
「兄さんは聞く耳持たずだった.......」
「それで毒を飲まされてしまったのね?」
「分からない。
そんなことをする意味がない。
だって、王位継承1位は兄さんなんだし。」
「なるほど......」
シリウスがいても、王位継承は自分な訳だ。
毒を飲ませて、わざわざ遠くの辺境に捨てに行かなくてもいい。
(じゃあ、一体、誰がシリウスに毒を飲ませたの......?)
現代でいうところの、中世のヨーロッパといった感じだろうか。
道はレンガで整備され、馬車が行き交っている。
シリウスは顔が割れているため、フードを目深に被っている。
それでも、淡い紅色の髪が見えてしまうのは仕方がないか。
シリウスが着ていた服は、馬の荷物の中にある。
必要な時に着替えればいいと持ってきたのだ。
「ここは王都?」
「いや、まだ違うよ。」
「すごい栄えてるのね。」
「そう......かな。」
「ルマンドの村とは全然違うわ。」
「あそこはあそこで、心地よかったよ。」
「私はこっちの方が好きだわ。」
転生する前--現代に戻ってきたような気分になる。
キョロキョロとする私を見て、シリウスは笑った。
「少し、見て回ろうか?」
「え?」
「情報を得たいってのもあるし。」
「あぁ、そういうことね。」
とりあえず、情報収集といえば酒場だ。
私とシリウスは、近くにあった酒場に入った。
思わず、私は耳を塞ぎたくなった。
酒場の人たちの不安や悩みの声が、一気に聞こえてきたからだ。
この力のことは、シリウスにも言っていない。
「アリス? どうかした?」
「ううん、なんでもないわ。」
喧騒の中で、二重に聞こえてくる声に私は耳を澄ませた。
『シリウス様はどこに行ったんだ?』
『国が大変な時に、あのアルタイル様には任せておけんし......』
(国が大変?)
カウンターでエールを頼んでいるシリウスに、私は近寄った。
「ねぇ、今、この国では何が起こってるの?」
その言葉が聞こえたのか、カウンター内にいた店員さんが自嘲気味に言った。
「隣国が攻めてくるって話でね。
それなのに、王宮内では王位継承を争ってるのさ。
困るのは国民だって言うのに。」
「攻めてくるって......本当なんですか?
だって--」
そう言いかけて、酒場内を見回した。
みんな不安の声はあれども、戦争になりそう、なんて思ってはいない。
「おねーちゃんは冒険者か何かかい?」
「えぇ、まぁ。」
「じゃあ、冒険者ギルドに行くといいよ。
そこで警備隊を募っているから。
詳しい情報が聞けるんじゃないか?」
「後で行ってみます。」
シリウスからエールを受け取って、私たちは空いてる席に座った。
複雑そうな表情をしているシリウスに、私は声をかける。
「戦争になりそうって、本当なの?」
「いや、違うんだ。」
「?」
「兄さんが--あぁ、アルタイルって言うんだけどね。
その兄さんが貿易を担当してるんだけど、
その貿易船が襲われたんだ。」
「襲ったのが隣国ってこと?」
「分からない。
分からないのに、隣国にやり返すって......」
「そんな......それで戦争を起こそうとしてるのね?」
「止めようとしたんだけど......ダメだった。
事実を調べて、賠償させればいいって言ったんだけどね。」
「シリウスの方が正しいわ。」
「兄さんは聞く耳持たずだった.......」
「それで毒を飲まされてしまったのね?」
「分からない。
そんなことをする意味がない。
だって、王位継承1位は兄さんなんだし。」
「なるほど......」
シリウスがいても、王位継承は自分な訳だ。
毒を飲ませて、わざわざ遠くの辺境に捨てに行かなくてもいい。
(じゃあ、一体、誰がシリウスに毒を飲ませたの......?)
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