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第9話
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顔色が悪いシリウスを木陰で休ませた。
シリウスは顔を手で覆ったまま、俯いている。
「兄さんが、まさか......」
「まだ、アルタイル様が毒を盛ったっていう証拠はないわ。」
「そうか......そうだな。」
シリウスが顔を上げた。
つと見上げたのは、王宮のテラスだ。
そこから、シリウスと同じ淡い紅色の髪をした男の人が立っている。
シリウスとは違って、短く刈りそろえている。
顔はよく見えないが、雰囲気的にシリウスに似ていた。
「あの人が......?」
「アルタイル、僕の兄さんだ。」
「王位継承者第一位の......」
「聞かなくちゃ.....」
「待って!」
私は耳を澄ませた。
アルタイル様の声を聞こうとした--けれど、遠くて聞こえない。
ただ、確かに不安の声が漏れている。
彼の不安を取り除けば、何かが変わる気がした。
どうにかして、アルタイル様に近づけないだろうか。
私が考えていると、シリウスがおもむろにフードを取った。
「何する気?!」
「正体を明かす。」
「なんで?! あなたは殺されかけたのよ?」
「兄さんが何をしたいのか、僕には知る権利がある。」
「そうかもしれないけれど......」
言い淀む私を見て、シリウスは寂しげに微笑んだ。
「アリスはここまでで大丈夫だよ。」
「え? なんで?」
「王宮は危ない。」
「知ってるわ。だからこそ、ついてきたんじゃない。」
「何が起こるか分からないのに、アリスを連れてはいけないよ。」
「私は大丈夫。」
周りの人の不安や苦しみの気持ちが分かるから。
なんてことは言えないけれど。
(どうしたら良いかな......)
シリウスを一人にしてはおけない。
とは言え、説得するほどの力もない。
そうこう悩んでいるうちに、シリウスは井戸の方へ歩いて行った。
髪の薬剤を落とすつもりなんだろう。
「待って!」
「ん?」
「私も行く! 侍女として、あなたのそばにいるわ!!」
「アリス......」
「お願いだから、シリウスの側にいさせて。」
私は懇願した。
私の気持ちに気付いて。
私をひとりにしないで。
「......分かった。」
シリウスはそう言って、私を抱き寄せた。
フワッとしたシリウスの匂いに包まれる。
「僕が君を守るから、無理はしないでくれ。」
「無理はしない。」
「じゃあ、行こう!」
私たちは持ち場を離れた。
荷物を取りに馬屋に向かう。
私とシリウスは着替えをした。
白い礼装に身を包んだシリウスは、ちゃんと王子様だった。
私なんかが横に並んで良いような人ではない。
それでも、離れがたかった。
私はシリウスが好きだ。
守ってあげたい。
私の能力で助けてあげたい。
「行きましょう!」
シリウスは顔を手で覆ったまま、俯いている。
「兄さんが、まさか......」
「まだ、アルタイル様が毒を盛ったっていう証拠はないわ。」
「そうか......そうだな。」
シリウスが顔を上げた。
つと見上げたのは、王宮のテラスだ。
そこから、シリウスと同じ淡い紅色の髪をした男の人が立っている。
シリウスとは違って、短く刈りそろえている。
顔はよく見えないが、雰囲気的にシリウスに似ていた。
「あの人が......?」
「アルタイル、僕の兄さんだ。」
「王位継承者第一位の......」
「聞かなくちゃ.....」
「待って!」
私は耳を澄ませた。
アルタイル様の声を聞こうとした--けれど、遠くて聞こえない。
ただ、確かに不安の声が漏れている。
彼の不安を取り除けば、何かが変わる気がした。
どうにかして、アルタイル様に近づけないだろうか。
私が考えていると、シリウスがおもむろにフードを取った。
「何する気?!」
「正体を明かす。」
「なんで?! あなたは殺されかけたのよ?」
「兄さんが何をしたいのか、僕には知る権利がある。」
「そうかもしれないけれど......」
言い淀む私を見て、シリウスは寂しげに微笑んだ。
「アリスはここまでで大丈夫だよ。」
「え? なんで?」
「王宮は危ない。」
「知ってるわ。だからこそ、ついてきたんじゃない。」
「何が起こるか分からないのに、アリスを連れてはいけないよ。」
「私は大丈夫。」
周りの人の不安や苦しみの気持ちが分かるから。
なんてことは言えないけれど。
(どうしたら良いかな......)
シリウスを一人にしてはおけない。
とは言え、説得するほどの力もない。
そうこう悩んでいるうちに、シリウスは井戸の方へ歩いて行った。
髪の薬剤を落とすつもりなんだろう。
「待って!」
「ん?」
「私も行く! 侍女として、あなたのそばにいるわ!!」
「アリス......」
「お願いだから、シリウスの側にいさせて。」
私は懇願した。
私の気持ちに気付いて。
私をひとりにしないで。
「......分かった。」
シリウスはそう言って、私を抱き寄せた。
フワッとしたシリウスの匂いに包まれる。
「僕が君を守るから、無理はしないでくれ。」
「無理はしない。」
「じゃあ、行こう!」
私たちは持ち場を離れた。
荷物を取りに馬屋に向かう。
私とシリウスは着替えをした。
白い礼装に身を包んだシリウスは、ちゃんと王子様だった。
私なんかが横に並んで良いような人ではない。
それでも、離れがたかった。
私はシリウスが好きだ。
守ってあげたい。
私の能力で助けてあげたい。
「行きましょう!」
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