星空の下で君を待つ

星乃ゆづき

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第11話

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「入れ」

 そう声が聞こえてきた。
 さっきの声じゃない。
 私はシリウスに首を振った。

「多分、アルタイル様じゃないわ。」

「そうか。」

 シリウスは呟くと、扉を開けた。
 私はシリウスの後に続く。

「今まで、どこにいた?」

 そう言って、アルタイル様がシリウスを見た。
 シリウスとは違う細長の目が、シリウスを射抜くように見やる。

「サマーン領のルマンドの村にいました。」

「隣国へ? なぜ?」

「僕にも分かりません。」

「なんだ、それは。」

「記憶が無くなってました。」

「?」

 アルタイル様が顔を顰める。
 心の負の感情が聞こえない。

(ということは、アルタイル様は関与していない?)

「その令嬢は?」

「申し遅れました。私、アリス・マーベルと申します。」

 私は深々とお辞儀をする。

「僕を助けてくれた恩人です。」

「なるほど。弟を診てくれて助かった。礼を言う。」

「いえ......」

「で、体は大丈夫なのか?」

 シリウスに視線を移し、アルタイル様は声をかけた。

「お前がいない間、大変だったんだぞ。
 とはいえ、今は体を休めろ。」

「はい、そうさせてもらいます。
 彼女の部屋も借りて良いですかね?」

「そうしろ。」

「ありがとうございます。
 アリス、行こう!」

「失礼します。」

 私はもう一度、アルタイル様にお辞儀をして部屋を出た。
 シリウスが首を傾げている。

「兄さんは、本当に知らないのか?」

「みたいね。」

「では、一体、誰が僕を......」

「戻ってきたのだから、誰かが接触してくるかもしれないわ。」

「そうだね......気をつける。」

 シリウスはそう言って、私の手を引いた。
 突然のことにドキッとしてしまう。
 でも、それは一瞬だった。
 何故なら、シリウスの手が震えていたからだ。

「客室に案内するよ。」

「シリウス?」

「ごめん、部屋に行ったら離すから。」

「それは良いんだけど......」

 客室に案内されるなり、シリウスは手を離した。

『何かに見られてた......』

 初めてシリウスの心の声が聞こえた。
 私でも気付けなかった、何かがいたのだろうか。

「ここがアリスの部屋だよ。
 客人として扱ってもらうから、好きに使って。」

「ありがとう。でも--」

「ん?」

「シリウス、あなたが心配。
 また何かされないかって......」

「兄さんに相談してみるよ。」

「え?」

「兄さんは多分、何も知らない。」

「......そう。」

 と、その時だった。
 部屋の扉が思い切り開いて、白髪混じりのおじさんが入ってきた。

「シリウス! 無事だったか!!」

「父さん!」

(王様!?)

「今まで一体どこに--」

「いや、それより、僕がいなくなった後の国政は大丈夫だった?」

「ワシもまだボケてはおらん。
 アルタイルもいたし、大丈夫じゃ。」

「それなら、良かった。」

「ただな...やはり、隣国には--」

「やり返すって?」

 シリウスの言葉に王様は渋々頷いた。

「そうか......それは、止めないと!」
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