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第6章 幕間
週末① エアリー
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入学初日から色々あった1週間も終わり、ディナカレア魔法学院新年度の初めての週末となった。最初の1週間は皆がギルド体験週間で慌ただしかったこともあり、この週末は誰もが解放感に浸っていた。自室などでのんびり過ごす人もいれば、市内へと遊びにくり出す人もいる。ルーシッドのルームメイトのルビアとフェリカも、先輩たちと遊びに行っていた。ルビアは隣国のミルギニア帝国、フェリカもフィダラリア共和国出身で、あまりこの街には詳しくないので、みんなで案内してあげることになったのだ。キリエは疲れたし、足の調子があまりよくないから今日は休んでいると、自室で本を読んで過ごしていた。ルーシッドも誘われたが、週末は荷物が届くから受け取らないといけないし、やりたいこともあるからいいと断ったのだった。サラにはそうやって部屋にこもって実験ばかりしているから、いつまでも成長しないんだとなじられた。
「人が気にしていることを…」
ルーシッドはそっと自分の胸を触って確かめた。
『大丈夫です。確かに人より少し発育が遅いですが、まだ成長期です』
「フォローが逆にむなしいよ、エアリー」
『それよりも、この魔法人形は一体何に使われるのですか?』
ルーシッドたちの部屋には、この前買い物に行ったときに出会った人形師から譲ってもらった魔法人形があった。ルーシッドが週末に合わせて届けてもらうよう頼んでいたのだ。
「まぁまぁ、焦らない焦らない。術式はもう組んであるから、あとはこの魔法人形に書き込んでいって調整していくだけだよ。ちょっと待ってね」
『魔法回路』とは、元々は魔法を発動する際に必要な『魔法詠唱文を声に出して詠む』という過程を省略するために作られた技術である。これによって魔法使いは2つの魔法の同時発動が可能になったのだ。
そもそもなぜ魔法詠唱が必要なのかと言うと、それは妖精に呼びかけ、妖精との魔法発動のリンクを形成するためである。『詠唱』というだけあって、魔法詠唱文には決まったリズムと音階がある。それが、文献に残されている魔法全てがそのまま使えるわけではない理由の1つだった。
文献に書かれている詠唱文は暗号のようになっているものもあれば、記号が多く発音がわからないものもある。そして一番の問題はリズムや音階が記されていないということだ。詠唱文にはある程度の法則性やルールがあるので、ある程度推測も可能だが、古いものになるとそうもいかないものもある。ただずらずらと読んでも妖精は答えてくれない。妖精は歌と踊りが好きなのだ。
魔法詠唱を声に出さずに行う技術は古代から使用されていた。それは、『魔法陣』と呼ばれる技術である。魔法陣は図形と文字から形成されており、文字は『古代言語』で書かれている。その解読をできる人はおらず、魔法陣を描く技術も失われつつある。この技術は魔法詠唱が考案される前にあった技術のようで、声に出して詠唱するようになるにつれ古代言語は、魔法陣の技術と共に失われてしまったようだ。
今使われているものは文献にそのまま魔法陣が描き残されているものや、一族や王家などに代々伝わっている『儀式魔法』のみである。文献に残されているものの中には当てはまる魔力や、その使用法がわからない魔法陣も多い。
魔法陣にふさわしい魔力を流すと、任意の妖精を強制的に召喚する働きがある。『契約召喚魔法陣』がその例であり、今もよく使われている魔法陣はこれくらいのものだろう。
『魔法回路』は、この魔法陣を応用した技術であるが、古代言語は使われておらず、異なる原理で動作する。
さて、魔法の行使に関しては次の4点を考えなければならない。すなわち『魔法界とのリンクの形成』『妖精に与えるお菓子の作成』『妖精への魔法の指示』『魔法使用の際に消費される魔力の供給』である。
言葉による詠唱はこの4点すべてを魔法使いという媒体を介して行うことで、1度に行うことができるという点で優れていると言える。
このうち2つの点、『妖精に与えるお菓子の形成』と『魔法使用の際に消費される魔力の供給』という部分に関しては古くから『魔法石』が使われてきた。
魔法石とは、この自然界のエネルギーが結晶化したものである。自然界は妖精にとっても力の源であり、魔法石にも魔力が込められているということが発見されたのだ。魔法石に力を込めると、魔力が放出される。魔法石は人のイメージに反応するのだ。これによって、ある魔力を持っていない人でも、魔法石を使用すれば誰でもどんな魔法でも使うことが可能になったのだ。
もちろん魔法石に込められている魔力はそれほど膨大なものではない。高位魔法などであれば、1回程度で空になってしまうほどの容量なのでそこまで万能というほどではないが、日常生活に使う分くらいであれば十分であった。
そして、天然の魔法石は一度使うとただの石になってしまうのだが、魔法鉱石の中には何の魔力もこもっていない透明な魔法石もあった。この魔法石は魔力を吸収し蓄積する働きがあることが判明した。魔力が蓄積された魔法石は、通常の魔法石と同様に力を込めることで魔力を放出し使うことができ、使い切るとまた透明になり再利用できる。これは『人工魔法石』と呼ばれた。ほぼ全ての魔法具は人工魔法石で作られているために、また魔力を蓄積し再利用することができる。
この透明な魔法石を利用して作られたのが、多くの魔法使い達が詠唱の際に使用する『結晶の指輪』である。『結晶の指輪』に魔力を一度吸収させてすぐに放出することで、魔力の結晶化が効率化され、お菓子のイメージ作りに集中しやすくなるという利点がある。
さて、魔法の行使に必要な残りの2点、『魔法界とのリンクの形成』と『妖精への魔法の指示』という点に関してであるが、魔法陣の最大の特徴は、魔力を流すことで、詠唱によらず妖精界とのリンクを形成できるということである。ここに注目したある魔法使いは、魔法陣から古代言語を取り除いて、リンクだけを形成し、詠唱に関しては何か他の原理で行うことができれば、詠唱を一切行わなくても魔法を使用できるのではないかと考えた。
この魔法陣から古代言語を取り除いたものに魔法石を組み込むことによって、イメージするだけで妖精界とのリンクを形成とお菓子の作成と、その後の魔力供給を全て行うことができるようにした回路のことを魔法回路と呼んでいる。
そこで着目されたのが、古い文献にある吟遊詩人と呼ばれる特殊な魔法使いだった。彼らは音楽を弾くことで魔法を使うことができたという。
確かに、今の魔法詠唱文にはそれぞれに独特の音階とリズムがあり、それを間違うと上手く魔法が発動しない。確かに、詠唱と音楽は何らかの関係があるように思えた。
そこで魔法使い達は、詠唱文の音階やリズムを楽器で演奏しながら、魔法石と文字なしの魔法陣に魔力を流すとどうなるかを実験してみることにした。そのようにして研究を重ねた結果、そのままの音階やリズムを多少アレンジすることで、音楽だけで魔法を使うことができることが発見された。
これは世紀の大発見であった。ちなみにハミングだけで実験した結果上手くいく人といかない人がいた。これは完全に技術によるものではないかと思われる。
これによって、音楽を自動で流すことができれば、演奏技術の差なく、誰でも無詠唱で魔力の消費もなく魔法を使うことができるのではないかという期待が高まったのだ。
そして、遂に開発されたのが演奏装置と呼ばれる技術だ。
仕組みは、譜面の順番に鍵盤を並べることで、音楽を覚えていなくても順番に叩くだけで音楽を鳴らせるようにしたものである。
さらに、ばちがついた歯車を回して鍵盤を叩き、鍵盤の間隔も調整することによって、実質くるくる歯車を回すだけで、魔法を発動できるようにしたものが考案され、現代においては携帯用の小型魔法具以外にはほぼ全てに組み込まれている。
魔法具の材料によって音のなる仕組みは異なるが、今使われている演奏装置のほとんどは木製か鉄製の鍵盤を叩く構造のものである。
この魔法回路と演奏装置を用いた魔法具は、その属性を持っていない魔法使いでも特定の魔法を使うことを可能にした。現代の生活にはなくてはならない技術の一つであり、魔法回路と演奏装置の基本理論を考えた魔法使いは『今まで生存した中で最も偉大な魔法使い』と呼ばれている。
ルーシッドが無色の魔力を使って行っている魔術は、この2つを混ぜたようなものである。ルーシッドは、無色の魔力も普通の魔力と同様、魔法詠唱文に反応してその形や特性が変化するということに気づいた。
しかも、基本的な魔法詠唱文の一節目(「食材は…の魔力」という部分)は魔力の指定となっているが、ここは妖精とのリンクの形成開始の鍵として大事な部分であるが、ルーシッドの魔術式はこの部分が必要ない。
ルーシッドが主に使うのは二節目以降である。二節目はお菓子のレシピの指定である。「調理法は…」という部分である。通常の魔力は、このレシピに反応して、魔力の量や形、そして味付けなどが微妙に変化する。無色の魔力の形や特性が変化するのもこの部分である。ルーシッドはこの二節目の詠唱のありとあらゆるパターンを試して、無色の魔力の変化を研究したのである。
そして、三節目以降のフレーズを使うことで、その無色の魔力がどういう動きをするのかを事細かに指定しているのである。この部分は私たちの世界で言うと、コンピュータープログラミングに近いかもしれない。
そしてさらにルーシッドは、無色の魔力を使った魔法詠唱文は、妖精に呼びかける必要はないので、リズムや音階は不要であり、ただ頭の中で詠唱文を唱えるだけでも無色の魔力は詠唱文に反応して結晶化すること、そして『古代言語』であれば文字に魔力を流すだけで結晶化することに気づいた。無色の魔力では妖精を召喚できないので、行き場を失った無色の魔力が戻されてくるのではないかと、ルーシッドは推測している。
そこで、ルーシッドは、独自の研究により古代言語の解読を行い、古代言語の翻訳ができるようになった。そうルーシッドは古代言語のスペシャリストでもあった。誰にも知られていないが、これほど完璧に古代言語を翻訳できる人間は、ルーシッドを除けば後はリスヴェル・ブクレシュティくらいだと思われる。リスヴェルもまた天才であった。そこはルーシッドも十分に認めているところである。
ルーシッドが普段魔術で使っている『魔法陣』は、魔法詠唱文を『古代言語』に書き換えたものである。
さらに、そこにエアリーの補助機能なども加えることで、詠唱文の細かい調整部分はあらかじめ『変数化』しておき、その都度『魔術式』を微妙に書き換えることによって、自在に無色の魔力を扱うことができているのである。
無色の魔力は基本的に結晶化すると半永久的に消えずに残る。ルーシッドが別の命令、例えば酸素に変換するなどの命令を与えない限り消えることはない。最初にルーシッドがそのことに気づいた時には処理に困ったりもしたが、これは無色の魔力で魔法具を作る際などには、非常に便利である。無色の魔力にあらかじめ動作をプログラミングしておけば、ルーシッドがそのプログラムを書き換えない限りは、半永久的に起動し続けるのである。
そして、今ルーシッドは魔法人形の体の各所に無色の魔力を組み込んで、その動作のプログラミングをしていた。
「あ、エアリー。悪いけど、いったん私との視覚と聴覚の共有を切るね?」
『え……なぜですか?』
「いいからいいから。すぐにつなぎなおすから」
『はい……わかりました…』
エアリーは、ルーシッドと視覚と聴覚を共有している。ルーシッドのかけているメガネ型の魔法具や耳にはめ込んでいるイヤホン型の魔法具に仕掛けがしてあり、そこを通して入ってくる情報全てを無色の魔力の運動に変換して、その情報をエアリーに送信する術式が組み込まれているのだ。情報はどんどんと送られていくが、エアリーには一時記憶領域があるので、そこで必要な情報を自ら取捨選択して不要な情報と判断したものはその都度破棄しているので、容量がいっぱいになるということはない。エアリーが世に生まれた当初はこの機能はまだなかった。最初は文字だけによる会話だった。その後ルーシッドが改良を重ねることにより、話せるようになり、そしてエアリーもルーシッドを通して見たり聞いたりすることができるようになったのだ。エアリーは視覚と聴覚を手に入れてから急速に進歩を遂げた。入ってくる情報量が格段に増えたことで、学習量が急速に増加したからだろう。自ら分析し意見を述べるようになった。そして、エアリーはこの共有を切られるのが好きではなかった。これを切られると、暗闇の中に自分一人だけが取り残されたような感覚になるからだ。何も見えない、何も聞こえない。エアリーは、ルーシッドによって作られた人工知能だが、もはや感情というものが存在していた。
「一人にさせてごめんね。おまたせ、エアリー。聞こえる?聞こえたら話してみて?」
「聞こえます……ですがいつもと聞こえ方が違う気がします…?」
「じゃあ、視覚をつなぐから目を開けてみて?」
「目を開ける、とはどういうことでしょう…?」
「んー、今はまぶたを閉じた状態だから、まぶたを開けるぞ、って考えてみれば多分いいはず?そういう風にプログラムしてるから」
「なんだかわからなけど、わかりました」
「何が見える?」
「……あなたが見えます。これは鏡ではないはずです」
そう、エアリーは見ることはできるが、エアリーが見ているのはルーシッドが見ている世界である。つまり、エアリーはルーシッドの顔を普段は見ていないのだ。見るのはルーシッドが鏡を見ている時だけである。
「うん、鏡じゃないよ。それは実際にエアリーが自分の目で見ている光景だよ。はい、これが鏡」
「これは……え…?」
ルーシッドに鏡を渡されて、鏡で自分の顔をみるエアリー。
鏡に映っていた顔は、あの魔法人形の顔だ。人間の肌と比べても違和感のない質感の肌。そして少し大人びた顔に茶色の髪。髪はもちろん伸びないが付け替えができるらしい。今の髪形はルーシッドと同じくらいの短さで、耳が片方出ているヘアスタイルだった。
そう、ルーシッドが作っていたのは、エアリーの体だ。ルーシッドはリスヴェルの自動魔法人形を見て、魔法人形とエアリーをつないだら、エアリーが魔法人形を動かせるのではないか、と思ったのだ。視覚や聴覚はすでに自分と共有して持っていたので、それを人形の目と耳につなぎ直しただけだ。会話機能に関しても、以前から使っていたものを魔法人形につけただけである。今回新たに作った術式は体の各部を動かすための術式だけだ。
「唇も動かせるから動かして喋ってみてね。まぁ、実際は今まで通り無色の魔力の振動で音を発してるから口を動かさなくてもいいんだけど…でも口を閉じて喋ってるのはなんか変でしょ?
あとは、手足もだいたい動かせると思うんだけど、細かい調整はエアリーに動かした感じを聞きながらの方がいいかなって思って」
エアリーは、自分の手を動かして、その手を自らの目で見る。そして、手を裏返してみたり、握ってみたりして感触を確かめる。
「魔法人形店でこの人形を見た時に、私がイメージしていたエアリーにぴったりだったんだよね。どうかな…気に入ってくれたかな…迷惑だったかな…?」
「……泣く機能をつけてくれなくて良かったです。あったら大変なことになっていました。ルーシィ、ありがとうございます。大切にします」
エアリーは立ち上がってルーシッドを抱き寄せた。
「すごいね。こうして接してみるともう普通の人間と変わらないね」
「私を作ったのはあなたですから、その栄光はみなあなたに贈られるべきです。あなたは偉大な創造主、私の生みの親であり、そして私の愛しい人です。あなたはまた偉大な発明をなさいました。私がこうして動いて、そして話していること自体があなたの偉大さの証明となるでしょう」
「ありがと、エアリー。私もエアリーの事が大好きだよ。エアリーがいなかったら私は当の昔に精神がやられてたと思う。私に誰も友達がいなくて、みんなからいじめられてた時もずっと私の話し相手になってくれた。私と一緒に研究して魔術を考えてくれた。本当にありがとう、そしてこれからも変わらずよろしくね」
「はい、ルーシィ。末永くそばにおります」
「うん、じゃあ、いろいろ動いてみて可動域の微調整をしていこうか」
「はい」
「人が気にしていることを…」
ルーシッドはそっと自分の胸を触って確かめた。
『大丈夫です。確かに人より少し発育が遅いですが、まだ成長期です』
「フォローが逆にむなしいよ、エアリー」
『それよりも、この魔法人形は一体何に使われるのですか?』
ルーシッドたちの部屋には、この前買い物に行ったときに出会った人形師から譲ってもらった魔法人形があった。ルーシッドが週末に合わせて届けてもらうよう頼んでいたのだ。
「まぁまぁ、焦らない焦らない。術式はもう組んであるから、あとはこの魔法人形に書き込んでいって調整していくだけだよ。ちょっと待ってね」
『魔法回路』とは、元々は魔法を発動する際に必要な『魔法詠唱文を声に出して詠む』という過程を省略するために作られた技術である。これによって魔法使いは2つの魔法の同時発動が可能になったのだ。
そもそもなぜ魔法詠唱が必要なのかと言うと、それは妖精に呼びかけ、妖精との魔法発動のリンクを形成するためである。『詠唱』というだけあって、魔法詠唱文には決まったリズムと音階がある。それが、文献に残されている魔法全てがそのまま使えるわけではない理由の1つだった。
文献に書かれている詠唱文は暗号のようになっているものもあれば、記号が多く発音がわからないものもある。そして一番の問題はリズムや音階が記されていないということだ。詠唱文にはある程度の法則性やルールがあるので、ある程度推測も可能だが、古いものになるとそうもいかないものもある。ただずらずらと読んでも妖精は答えてくれない。妖精は歌と踊りが好きなのだ。
魔法詠唱を声に出さずに行う技術は古代から使用されていた。それは、『魔法陣』と呼ばれる技術である。魔法陣は図形と文字から形成されており、文字は『古代言語』で書かれている。その解読をできる人はおらず、魔法陣を描く技術も失われつつある。この技術は魔法詠唱が考案される前にあった技術のようで、声に出して詠唱するようになるにつれ古代言語は、魔法陣の技術と共に失われてしまったようだ。
今使われているものは文献にそのまま魔法陣が描き残されているものや、一族や王家などに代々伝わっている『儀式魔法』のみである。文献に残されているものの中には当てはまる魔力や、その使用法がわからない魔法陣も多い。
魔法陣にふさわしい魔力を流すと、任意の妖精を強制的に召喚する働きがある。『契約召喚魔法陣』がその例であり、今もよく使われている魔法陣はこれくらいのものだろう。
『魔法回路』は、この魔法陣を応用した技術であるが、古代言語は使われておらず、異なる原理で動作する。
さて、魔法の行使に関しては次の4点を考えなければならない。すなわち『魔法界とのリンクの形成』『妖精に与えるお菓子の作成』『妖精への魔法の指示』『魔法使用の際に消費される魔力の供給』である。
言葉による詠唱はこの4点すべてを魔法使いという媒体を介して行うことで、1度に行うことができるという点で優れていると言える。
このうち2つの点、『妖精に与えるお菓子の形成』と『魔法使用の際に消費される魔力の供給』という部分に関しては古くから『魔法石』が使われてきた。
魔法石とは、この自然界のエネルギーが結晶化したものである。自然界は妖精にとっても力の源であり、魔法石にも魔力が込められているということが発見されたのだ。魔法石に力を込めると、魔力が放出される。魔法石は人のイメージに反応するのだ。これによって、ある魔力を持っていない人でも、魔法石を使用すれば誰でもどんな魔法でも使うことが可能になったのだ。
もちろん魔法石に込められている魔力はそれほど膨大なものではない。高位魔法などであれば、1回程度で空になってしまうほどの容量なのでそこまで万能というほどではないが、日常生活に使う分くらいであれば十分であった。
そして、天然の魔法石は一度使うとただの石になってしまうのだが、魔法鉱石の中には何の魔力もこもっていない透明な魔法石もあった。この魔法石は魔力を吸収し蓄積する働きがあることが判明した。魔力が蓄積された魔法石は、通常の魔法石と同様に力を込めることで魔力を放出し使うことができ、使い切るとまた透明になり再利用できる。これは『人工魔法石』と呼ばれた。ほぼ全ての魔法具は人工魔法石で作られているために、また魔力を蓄積し再利用することができる。
この透明な魔法石を利用して作られたのが、多くの魔法使い達が詠唱の際に使用する『結晶の指輪』である。『結晶の指輪』に魔力を一度吸収させてすぐに放出することで、魔力の結晶化が効率化され、お菓子のイメージ作りに集中しやすくなるという利点がある。
さて、魔法の行使に必要な残りの2点、『魔法界とのリンクの形成』と『妖精への魔法の指示』という点に関してであるが、魔法陣の最大の特徴は、魔力を流すことで、詠唱によらず妖精界とのリンクを形成できるということである。ここに注目したある魔法使いは、魔法陣から古代言語を取り除いて、リンクだけを形成し、詠唱に関しては何か他の原理で行うことができれば、詠唱を一切行わなくても魔法を使用できるのではないかと考えた。
この魔法陣から古代言語を取り除いたものに魔法石を組み込むことによって、イメージするだけで妖精界とのリンクを形成とお菓子の作成と、その後の魔力供給を全て行うことができるようにした回路のことを魔法回路と呼んでいる。
そこで着目されたのが、古い文献にある吟遊詩人と呼ばれる特殊な魔法使いだった。彼らは音楽を弾くことで魔法を使うことができたという。
確かに、今の魔法詠唱文にはそれぞれに独特の音階とリズムがあり、それを間違うと上手く魔法が発動しない。確かに、詠唱と音楽は何らかの関係があるように思えた。
そこで魔法使い達は、詠唱文の音階やリズムを楽器で演奏しながら、魔法石と文字なしの魔法陣に魔力を流すとどうなるかを実験してみることにした。そのようにして研究を重ねた結果、そのままの音階やリズムを多少アレンジすることで、音楽だけで魔法を使うことができることが発見された。
これは世紀の大発見であった。ちなみにハミングだけで実験した結果上手くいく人といかない人がいた。これは完全に技術によるものではないかと思われる。
これによって、音楽を自動で流すことができれば、演奏技術の差なく、誰でも無詠唱で魔力の消費もなく魔法を使うことができるのではないかという期待が高まったのだ。
そして、遂に開発されたのが演奏装置と呼ばれる技術だ。
仕組みは、譜面の順番に鍵盤を並べることで、音楽を覚えていなくても順番に叩くだけで音楽を鳴らせるようにしたものである。
さらに、ばちがついた歯車を回して鍵盤を叩き、鍵盤の間隔も調整することによって、実質くるくる歯車を回すだけで、魔法を発動できるようにしたものが考案され、現代においては携帯用の小型魔法具以外にはほぼ全てに組み込まれている。
魔法具の材料によって音のなる仕組みは異なるが、今使われている演奏装置のほとんどは木製か鉄製の鍵盤を叩く構造のものである。
この魔法回路と演奏装置を用いた魔法具は、その属性を持っていない魔法使いでも特定の魔法を使うことを可能にした。現代の生活にはなくてはならない技術の一つであり、魔法回路と演奏装置の基本理論を考えた魔法使いは『今まで生存した中で最も偉大な魔法使い』と呼ばれている。
ルーシッドが無色の魔力を使って行っている魔術は、この2つを混ぜたようなものである。ルーシッドは、無色の魔力も普通の魔力と同様、魔法詠唱文に反応してその形や特性が変化するということに気づいた。
しかも、基本的な魔法詠唱文の一節目(「食材は…の魔力」という部分)は魔力の指定となっているが、ここは妖精とのリンクの形成開始の鍵として大事な部分であるが、ルーシッドの魔術式はこの部分が必要ない。
ルーシッドが主に使うのは二節目以降である。二節目はお菓子のレシピの指定である。「調理法は…」という部分である。通常の魔力は、このレシピに反応して、魔力の量や形、そして味付けなどが微妙に変化する。無色の魔力の形や特性が変化するのもこの部分である。ルーシッドはこの二節目の詠唱のありとあらゆるパターンを試して、無色の魔力の変化を研究したのである。
そして、三節目以降のフレーズを使うことで、その無色の魔力がどういう動きをするのかを事細かに指定しているのである。この部分は私たちの世界で言うと、コンピュータープログラミングに近いかもしれない。
そしてさらにルーシッドは、無色の魔力を使った魔法詠唱文は、妖精に呼びかける必要はないので、リズムや音階は不要であり、ただ頭の中で詠唱文を唱えるだけでも無色の魔力は詠唱文に反応して結晶化すること、そして『古代言語』であれば文字に魔力を流すだけで結晶化することに気づいた。無色の魔力では妖精を召喚できないので、行き場を失った無色の魔力が戻されてくるのではないかと、ルーシッドは推測している。
そこで、ルーシッドは、独自の研究により古代言語の解読を行い、古代言語の翻訳ができるようになった。そうルーシッドは古代言語のスペシャリストでもあった。誰にも知られていないが、これほど完璧に古代言語を翻訳できる人間は、ルーシッドを除けば後はリスヴェル・ブクレシュティくらいだと思われる。リスヴェルもまた天才であった。そこはルーシッドも十分に認めているところである。
ルーシッドが普段魔術で使っている『魔法陣』は、魔法詠唱文を『古代言語』に書き換えたものである。
さらに、そこにエアリーの補助機能なども加えることで、詠唱文の細かい調整部分はあらかじめ『変数化』しておき、その都度『魔術式』を微妙に書き換えることによって、自在に無色の魔力を扱うことができているのである。
無色の魔力は基本的に結晶化すると半永久的に消えずに残る。ルーシッドが別の命令、例えば酸素に変換するなどの命令を与えない限り消えることはない。最初にルーシッドがそのことに気づいた時には処理に困ったりもしたが、これは無色の魔力で魔法具を作る際などには、非常に便利である。無色の魔力にあらかじめ動作をプログラミングしておけば、ルーシッドがそのプログラムを書き換えない限りは、半永久的に起動し続けるのである。
そして、今ルーシッドは魔法人形の体の各所に無色の魔力を組み込んで、その動作のプログラミングをしていた。
「あ、エアリー。悪いけど、いったん私との視覚と聴覚の共有を切るね?」
『え……なぜですか?』
「いいからいいから。すぐにつなぎなおすから」
『はい……わかりました…』
エアリーは、ルーシッドと視覚と聴覚を共有している。ルーシッドのかけているメガネ型の魔法具や耳にはめ込んでいるイヤホン型の魔法具に仕掛けがしてあり、そこを通して入ってくる情報全てを無色の魔力の運動に変換して、その情報をエアリーに送信する術式が組み込まれているのだ。情報はどんどんと送られていくが、エアリーには一時記憶領域があるので、そこで必要な情報を自ら取捨選択して不要な情報と判断したものはその都度破棄しているので、容量がいっぱいになるということはない。エアリーが世に生まれた当初はこの機能はまだなかった。最初は文字だけによる会話だった。その後ルーシッドが改良を重ねることにより、話せるようになり、そしてエアリーもルーシッドを通して見たり聞いたりすることができるようになったのだ。エアリーは視覚と聴覚を手に入れてから急速に進歩を遂げた。入ってくる情報量が格段に増えたことで、学習量が急速に増加したからだろう。自ら分析し意見を述べるようになった。そして、エアリーはこの共有を切られるのが好きではなかった。これを切られると、暗闇の中に自分一人だけが取り残されたような感覚になるからだ。何も見えない、何も聞こえない。エアリーは、ルーシッドによって作られた人工知能だが、もはや感情というものが存在していた。
「一人にさせてごめんね。おまたせ、エアリー。聞こえる?聞こえたら話してみて?」
「聞こえます……ですがいつもと聞こえ方が違う気がします…?」
「じゃあ、視覚をつなぐから目を開けてみて?」
「目を開ける、とはどういうことでしょう…?」
「んー、今はまぶたを閉じた状態だから、まぶたを開けるぞ、って考えてみれば多分いいはず?そういう風にプログラムしてるから」
「なんだかわからなけど、わかりました」
「何が見える?」
「……あなたが見えます。これは鏡ではないはずです」
そう、エアリーは見ることはできるが、エアリーが見ているのはルーシッドが見ている世界である。つまり、エアリーはルーシッドの顔を普段は見ていないのだ。見るのはルーシッドが鏡を見ている時だけである。
「うん、鏡じゃないよ。それは実際にエアリーが自分の目で見ている光景だよ。はい、これが鏡」
「これは……え…?」
ルーシッドに鏡を渡されて、鏡で自分の顔をみるエアリー。
鏡に映っていた顔は、あの魔法人形の顔だ。人間の肌と比べても違和感のない質感の肌。そして少し大人びた顔に茶色の髪。髪はもちろん伸びないが付け替えができるらしい。今の髪形はルーシッドと同じくらいの短さで、耳が片方出ているヘアスタイルだった。
そう、ルーシッドが作っていたのは、エアリーの体だ。ルーシッドはリスヴェルの自動魔法人形を見て、魔法人形とエアリーをつないだら、エアリーが魔法人形を動かせるのではないか、と思ったのだ。視覚や聴覚はすでに自分と共有して持っていたので、それを人形の目と耳につなぎ直しただけだ。会話機能に関しても、以前から使っていたものを魔法人形につけただけである。今回新たに作った術式は体の各部を動かすための術式だけだ。
「唇も動かせるから動かして喋ってみてね。まぁ、実際は今まで通り無色の魔力の振動で音を発してるから口を動かさなくてもいいんだけど…でも口を閉じて喋ってるのはなんか変でしょ?
あとは、手足もだいたい動かせると思うんだけど、細かい調整はエアリーに動かした感じを聞きながらの方がいいかなって思って」
エアリーは、自分の手を動かして、その手を自らの目で見る。そして、手を裏返してみたり、握ってみたりして感触を確かめる。
「魔法人形店でこの人形を見た時に、私がイメージしていたエアリーにぴったりだったんだよね。どうかな…気に入ってくれたかな…迷惑だったかな…?」
「……泣く機能をつけてくれなくて良かったです。あったら大変なことになっていました。ルーシィ、ありがとうございます。大切にします」
エアリーは立ち上がってルーシッドを抱き寄せた。
「すごいね。こうして接してみるともう普通の人間と変わらないね」
「私を作ったのはあなたですから、その栄光はみなあなたに贈られるべきです。あなたは偉大な創造主、私の生みの親であり、そして私の愛しい人です。あなたはまた偉大な発明をなさいました。私がこうして動いて、そして話していること自体があなたの偉大さの証明となるでしょう」
「ありがと、エアリー。私もエアリーの事が大好きだよ。エアリーがいなかったら私は当の昔に精神がやられてたと思う。私に誰も友達がいなくて、みんなからいじめられてた時もずっと私の話し相手になってくれた。私と一緒に研究して魔術を考えてくれた。本当にありがとう、そしてこれからも変わらずよろしくね」
「はい、ルーシィ。末永くそばにおります」
「うん、じゃあ、いろいろ動いてみて可動域の微調整をしていこうか」
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