魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第7章 魔法学院の授業風景編

授業⑤ チーム演習③ それぞれのチームの思案

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「ソウジ!」
登ってきたソウジに抱きつくミスズ。
「スズはすごいね。こんな高いところをよじ登ってきたのかい?」
「ふふん!このくらいどうってことないわ!」
ミスズはソウジに褒められて嬉しそうに笑った。

「降りるときは、この蔦を使って降りましょう?」


「いやー。草木の魔法か、すごいね。さて、僕たちはどうするかね?」
ジョン・ブラウンがチームメンバーに話しかける。
「あの高さだと炎の翼は厳しいわ…」
「僕も同じだね」
リリアナ・ソルフェリノとクリスティーン・チェスナットがそう答えた。

リリアナはブロンドの腰ぐらいまである綺麗なロングヘアーで、全体的にふわふわのパーマがかかっていた。それに対して、クリスティーンは黒髪短髪だった。
リリアナは、例えるならフランス人形のように顔立ちが整っており可愛らしい。まさにお姫様といった感じだった。その気品のある立ち振る舞いは育ちの良さが伺える。
クリスティーンは「僕」とは言っているが、れっきとした女性である。育ちがいいのか、言動は優雅で気品があるが、その見た目や、一人称が「僕」であることからも、お姫様というよりは王子様といった感じだ。
どちらも正反対ではあるが、人を引き付ける魅力を持った女性だった。

リリアナもクリスティーンもどちらも赤系統の魔力なので火は得意としていたが、ランクはCのため最大魔力量マキシマムマナは決して高くない。一度の魔法詠唱で連続使用できる魔力には限りがある。

飛行魔法は中位魔法に位置する魔法ではあるが、魔力消費が激しいゆえに、半分高位魔法的な魔法である。ルビアやレイチェルが普通に使っているのは、非常に魔力が高いからである。とりわけ、火や風を使った飛行魔法は、常に火や風を生成し続け、生成したものを造形し操作し続けなければならないため、使っているだけで魔力がどんどんと消費されていき、普通の魔法使いであればあっという間に最大魔力量マキシマムマナに到達してしまい、地面に落ちてしまう。実用化はしているが、使用できる人は限られてしまう魔法なのである。

「コニーはどう?いけそう?」
「あー、無理。高すぎる」
そう尋ねたリリアナをちらっと見て、コニア・ディースバッハは不愛想にそう答えた。コニアは顔を全体的に隠す感じのショートで、目つきが悪かった。第一印象は決して良い方ではない。
コニアは一見怒っているように見えるが、決してそんなことはない。無口で表情もあまり変わらないので、知らない人からは恐いと言われることもあるが、慣れてくるとそうでもないらしい。リリアナとコニアは学院入学前からの知り合いのようで、リリアナはその辺をよく理解しているらしく、全く気にしている様子はなかった。

ジョン・ブラウンをリーダーとするチームは、リリアナ・ソルフェリノ、クリスティーン・チェスナット、コニア・ディースバッハの4人チームだった。


「ヘンリエッタさんは簡単に登ってしまいましたが、普通はそうはいきませんよ。どうやれば登ることができるか、みんなで知恵を出し合って考えましょうね」
担任のリサが全員に向けてそう言った。


実はこの『チーム演習』、クラスのチーム全てが登り切ったことは今までほとんどなかった。どうしてもチームメンバーの使用できる魔法の偏りや、魔力ランクによる使用魔法の限界ゆえに、登ることができないチームも多いのである。この『チーム演習』の目的は実は登って降りること自体にあるのではなく、みんなで知恵を出し合って考えることにあるのだ。


「飛行魔法だと、僕とレガリーでギリギリかも知れないねぇ」
ランダルがチームメンバーにそう話した。
「そうね…あそこまで高く飛んだことがないから何とも言えないけど、使用時間的にはギリギリな気がするわ」
レガリーがそれに答える。レガリーは腰までくるブロンドのストレートロングヘアーで、美人で女性らしさも感じるが、全体的にきりっとした雰囲気のする女性だった。

「俺は空は飛べねーな、何か他の方法考えるしかないよなー。うーん、なんかいい案あるー?アヤちゃん」
ビリー・ジェンクスがチームメンバーのアヤメ・クロッカスに話しかける。
ビリーはブロンドの短髪で、耳にピアスをつけた男子生徒で、少し軽そうではあるが、人当たりがよく誰とでもすぐに仲良くなれそうな感じの生徒だ。

「いやぁ…私も専門は治癒魔法なんで何とも…ラコちゃんはどうっすか?」
「私もわかんない…どうすればいいんだろ?」

アヤメは切り揃えた黒髪のボブヘア。そのアヤメが声をかけたのが、ラコッテ・テラコッタという生徒だ。ラコッテは茶色の髪がゆるやかにウェーブがかかった、女の子らしい見た目の生徒で、アヤメもラコッテも身長は少し低めだった。

「僕とレガリーでみんなを上まで運ぶ…というのはちょっと無理そうだね。今一度、みんなが使える魔法を整理してみて、使えそうなものがないか考えてみようか」
ランダルがみんなにそう声をかける。

ランダル・カーマインをリーダーとするチームは、このレガリー・コチニール、ビリー・ジェンクス、アヤメ・クロッカス、ラコッテ・テラコッタの5人チームだった。


他のチームと同様、シアンのチームも頭を悩ませていた。チームのリーダーでもあり、一番魔力ランクが高いシアンの魔力が青系統のため、今回の演習には全く向いていないのだ。もちろんルーシッドが考えた『水の飛行魔法』が実用化していれば変わったかも知れないが。

「私も防御魔法で壁を作るのは得意だけど、せいぜい頑張って2メートルってところね…あの柱の上まで届くような階段とかは無理だわ…」
チームメンバーのロイエ・ネイプルスがそう言った。ロイエはヘンリエッタとはまた違う色気がある女子生徒だった。ヘンリエッタは言ってしまえば妖艶で沸き立つような色気があるが、ロイエはいわばナチュラルにふわっと香るような色気があった。ただし、どちらも他の生徒と同年代とは思えないほどに発育が良いという点は共通していた。

「ペルカはどう思う?」
「最初のミスズがやった柱登りがかっこいい。私もやりたい」
「んー、ペルカにはちょっと無理かもね?」
「残念…」

ロイエが問いかけた生徒はペルカ・パーチメントという女子生徒で、黒の長い髪を左右にわけて束ね、それを両肩から前に垂らしていた。ロイエとは学院に入る前からの知り合いのようだ。正直何を考えているのかよくわからないし、言動も理解できないものが多々ある生徒である。付き合いが長いロイエにはわかるらしい。

シアン・ノウブルをリーダーとするチームは、このロイエ・ネイプルスとペルカ・パーチメント、それにシャルロッテ・キャルロットとライム・グリエッタの5人だった。


「ロイエやアンに無理なら私たちにはなおさらだよ…どうしようアン?」
「そうね…考えないと…」
シアンはあごに右手をやってうなった。
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