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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
バトルボール④
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「土を球状にしてぶつければ良いのだったな?」
フェリカが誰にともなくそう確認すると、土がまるで蛇がとぐろを巻くかのように、フェリカの周囲に舞いだした。そして、それは徐々に分離し、5つの球体となった。
「ほれ」
そう言って、フェリカがパチンと指を鳴らすと、5つの土の球体はバラバラの方向に、ものすごい速度で飛んでいき、全て正確に違う選手に命中した。不思議なことに、フェリカの視界に入っていないはずの、後ろの選手も正確に捉えていた。ボールが当たった選手は、また詠唱を中断してしまった。
「はぁ…最近の魔法使いは情けないのぉ…昔は敵の攻撃を食らいながらでも詠唱は途切れさせんかったもんじゃ。戦争ものうなって平和ボケしとるんじゃないか?」
フェリカはその様子を見て、ため息をついた。
「あれは私というより、クレアを見ているようだな」
レイチェルは笑いながら言った。
「私でもあんな芸当は無理よ」
「それは大問題だ。黄の純色の魔法使いで、契約者のクレアでも無理なことをやっているあのフェリカという生徒は、じゃあ何者だと言うんだ?」
クレアは肩をすくめた。
「ほっ、他の選手たちは、操作魔法を使用しているから、防御魔法は使えないはずよ!」
相手選手のリーダー格とおぼしき女性がそう話す。
なぜDランクのフェリカが、これほどの魔法を使えるのかという理由は不明だが、このままフェリカを攻撃しても無駄だと判断し、相手選手たちは狙いを他の選手に定めることにしたようだ。
その間にも、5クラスのフェリカ以外の選手は攻撃をし続けており、今のところ12対0という点数だ。
「リカ、魔力使わせてもらうぞ」
(えっ、いいけど…試合中におやつ?)
「違うわ、こうやって使うんじゃ」
「とにかく動き回って!」
その選手が他の選手にそう伝える。そう言って、その選手が走り出そうとした時だった。
「えっ、あっ、足が動かない!なんで!?」
「なんじゃ、影の魔法をかけられたことがないのか?」
フェリカは瞬時にその選手の影から姿を現して、そう言った。
「ひっ!?」
突然自分の影から姿を現したフェリカに驚き、思わず悲鳴をあげて顔を引きつらせる女生徒。その女生徒の耳元に顔を近づけフェリカは、静かに諭すように話しかけた。
「魔法使いはどんな時も平静を保たねばならんぞ。緊張や動揺は詠唱のリズムを狂わせる。詠唱の中断や失敗は魔法使いにとって一番の隙だぞ。どんな状況でも詠唱を途切れさせるな。どんな状況でも同じように詠唱できるようになれ。良いな」
それだけ言って、フェリカは何もせずにその場を離れた。相手の背後を取り、攻撃できる機会がいくらでもあったにも関わらず。それは、お前などいつでも攻撃できると言わんばかりの行動で、逆に相手をおびえさせた。
「あれは…影の魔法ね。『操影魔法』で相手の動きを封じつつ、『潜影魔法』で相手の影に移動する。ルビアさんもやっていた戦法ね」
「どっちにしろ、普通ならDランクには無理やろ。まぁ、それ言うたら、その前のサンドボール5発同時もそうやけどな」
通常の魔法使いと異なり、フェリカは魔法を行使する際に魔力を消費することがない。それは、フェリカが神位の妖精を使役しているのではなく、契約しているためだ。いかに神位の妖精と言えど、『魔法』という法に従ってその力を用いる場合は、魔法使いの魔力を使って魔法を行使する必要がある。それがルールだからである。
しかし、本来であれば神位の妖精はこのルールに従う義務はない。妖精の女王と神族の族長たちの間で結ばれた盟約により、神位の妖精には、魔法使いたちの求めに答えるか答えないかを自分で決める権利があるのだ。
ゆえに、神位の妖精が、通常の魔法ではない方法で、魔法界において力を用いる場合には、魔法使いの魔力を使う必要はないのである。現に、魔眼の主である神位の妖精アルゴスなどは、自分の力を魔法使いたちに自由に分け与えている。
しかし、そのような特殊な妖精を除いて、基本的に神位の妖精が何の見返りもなく人間たちに協力することなど考えられない。
法に縛られず無限に力を使える、この法の抜け穴のような方法は、神位の妖精に気に入られ、個人的に契約をするという普通なら絶対にありえない幸運をつかんだ魔法使いにのみ許された特別な力と言える。
だが、魔力を使う必要がないのであって、魔力が使えないわけではない。
特に『影の魔法』は、魔法の中でも少し特殊な魔法だ。それは、実際には影そのものを操る魔法ではない。それは、魔法使いの魔力を影の中に溶け込ませて、影が動いているように見せかけている魔法である。
この魔法を使用するためには、神位の妖精のマリーと言えど、魔法使いの魔力を使うしかない。魔力は魔法使いが生み出す物質であって、妖精は魔力そのものを生み出すことはできないからだ。
相手選手が次の狙いに定めたのはライム・グリエッタだった。ライムに向かって3つのボールが飛んでくる。
「げーっ、わたしぃ~?」
そう言いつつも、ライムは特に慌てている様子はない。
そのボールがライムに当たることはなかった。
「あっ…あれは何の魔法かしら…?」
「造形魔法やとは思うけど、何の魔法やろ…あんな色の物質見たことないわ…気持ちわる…まるで召喚魔法みたいや。まぁ、召喚魔法なんてこの世に存在せぇへんけど」
ライムにボールが当たる直前、突如地面からオオカミが飛び出してきて、ボールをくわえて着地した。そしてくわえたボールを噛み砕き、ただの砂へと変えると、そのままそのオオカミも土へと戻っていった。
これは、マリーが得意とする『眷属の生成』によって生み出されたオオカミだ。
当然、生き物を召喚しているわけではなく、造形によって作り出したオオカミを生きたように動かしているのだ。
ヴァンパイアは、残された文献によると、移動魔法や攻撃魔法などが特徴的な妖精ではあるが、実は『造形魔法』も得意とする、技巧派な妖精であった。マリーは土や鉄の造形も得意であるが、今回は影の魔法と同じく、フェリカが持つ『血の色』の魔力を使ったので、赤黒い不気味な色をしたオオカミとなったのだ。
「ありがとー!」
「お安い御用じゃ、ほれ、戦場でよそ見をするな!攻撃の手を休めるでない!」
そう言われて、慌てて攻撃に戻るライムだった。
試合の残り時間が少なくなってきたが、もはや5クラスの勝ちは確定したも同然だった。点数はさらに開き、25対0となっていた。点数がこれだけ開くことも驚きではあるが、さらに驚くべきは失点が0という点だった。遮蔽物がないフィールドで行われるバトルボールにおいて、5人全員が相手の攻撃を一度も食らわないということは、普通なら考えられない。それぞれの技量もなかなかのものであったが、それを可能にしている一番の要因はフェリカ、正確に言えばマリーにあった。
マリーが攻守共にこの戦場全体をコントロールしているのだ。
以前にマーシャと戦った時もそうだったが、マリーは常に相手の行動を数手先まで読んで動いている。自分の行動に対して相手がどういうリアクションを取るかを予測し、それによって相手の行動をコントロールしているのである。それゆえに、周りから見ていると、それはあたかもマリーが先回りして動き、それに合わせて相手が行動しているかのようにも見える。
「さぁ、そろそろクライマックスかのぉ!」
試合時間が残り1分ほどとなったところで、フェリカはそう言った。
すると、フェリカの背中からは禍々しく赤黒いオーラのようなものが吹き出した。それは先ほどのオオカミと同じ色をしていた。そして、それは形を変え、こうもりのような翼となった。赤黒く不気味な翼だった。
「なっ、なんやあれ…魔装か?」
「あっ、あの翼…それにさっきのオオカミ…まさかあの力は……」
フリージアは思い当たることがあるのかそう言ったが、その先は口には出さなかった。
「さぁ、お開きじゃ!!」
そう言うと、フェリカはその不気味な翼を大きく広げ、宙に舞い上がった。そして、頭上で手を大きく広げると、無数の土の球体がフェリカの周囲に形成される。
そして、フェリカが指をくいっと下に降ろすポーズをとると、無数の土の球体は、まるで雨かのように地面に降り始めた。
「ちょっ、ちょっと…あれ、私たちにも来るってことぉ?」
「いや…一応、狙ってるんじゃない…多分?」
空を見上げてオリヴィアとロイエはそう言った。
確かにそれは味方には1つも当たらなかった。
だが、相手選手に全て命中するというわけでもなく無差別に降り注いでいるようにも感じられたので、偶然当たらなかっただけなのか、味方だけは避けて落としたのかは定かではなかった。
いずれにせよ、5クラスは38対0という驚異的な点数でこの試合に勝利し、バトルボール決勝に駒を進めたのだった。
フェリカが誰にともなくそう確認すると、土がまるで蛇がとぐろを巻くかのように、フェリカの周囲に舞いだした。そして、それは徐々に分離し、5つの球体となった。
「ほれ」
そう言って、フェリカがパチンと指を鳴らすと、5つの土の球体はバラバラの方向に、ものすごい速度で飛んでいき、全て正確に違う選手に命中した。不思議なことに、フェリカの視界に入っていないはずの、後ろの選手も正確に捉えていた。ボールが当たった選手は、また詠唱を中断してしまった。
「はぁ…最近の魔法使いは情けないのぉ…昔は敵の攻撃を食らいながらでも詠唱は途切れさせんかったもんじゃ。戦争ものうなって平和ボケしとるんじゃないか?」
フェリカはその様子を見て、ため息をついた。
「あれは私というより、クレアを見ているようだな」
レイチェルは笑いながら言った。
「私でもあんな芸当は無理よ」
「それは大問題だ。黄の純色の魔法使いで、契約者のクレアでも無理なことをやっているあのフェリカという生徒は、じゃあ何者だと言うんだ?」
クレアは肩をすくめた。
「ほっ、他の選手たちは、操作魔法を使用しているから、防御魔法は使えないはずよ!」
相手選手のリーダー格とおぼしき女性がそう話す。
なぜDランクのフェリカが、これほどの魔法を使えるのかという理由は不明だが、このままフェリカを攻撃しても無駄だと判断し、相手選手たちは狙いを他の選手に定めることにしたようだ。
その間にも、5クラスのフェリカ以外の選手は攻撃をし続けており、今のところ12対0という点数だ。
「リカ、魔力使わせてもらうぞ」
(えっ、いいけど…試合中におやつ?)
「違うわ、こうやって使うんじゃ」
「とにかく動き回って!」
その選手が他の選手にそう伝える。そう言って、その選手が走り出そうとした時だった。
「えっ、あっ、足が動かない!なんで!?」
「なんじゃ、影の魔法をかけられたことがないのか?」
フェリカは瞬時にその選手の影から姿を現して、そう言った。
「ひっ!?」
突然自分の影から姿を現したフェリカに驚き、思わず悲鳴をあげて顔を引きつらせる女生徒。その女生徒の耳元に顔を近づけフェリカは、静かに諭すように話しかけた。
「魔法使いはどんな時も平静を保たねばならんぞ。緊張や動揺は詠唱のリズムを狂わせる。詠唱の中断や失敗は魔法使いにとって一番の隙だぞ。どんな状況でも詠唱を途切れさせるな。どんな状況でも同じように詠唱できるようになれ。良いな」
それだけ言って、フェリカは何もせずにその場を離れた。相手の背後を取り、攻撃できる機会がいくらでもあったにも関わらず。それは、お前などいつでも攻撃できると言わんばかりの行動で、逆に相手をおびえさせた。
「あれは…影の魔法ね。『操影魔法』で相手の動きを封じつつ、『潜影魔法』で相手の影に移動する。ルビアさんもやっていた戦法ね」
「どっちにしろ、普通ならDランクには無理やろ。まぁ、それ言うたら、その前のサンドボール5発同時もそうやけどな」
通常の魔法使いと異なり、フェリカは魔法を行使する際に魔力を消費することがない。それは、フェリカが神位の妖精を使役しているのではなく、契約しているためだ。いかに神位の妖精と言えど、『魔法』という法に従ってその力を用いる場合は、魔法使いの魔力を使って魔法を行使する必要がある。それがルールだからである。
しかし、本来であれば神位の妖精はこのルールに従う義務はない。妖精の女王と神族の族長たちの間で結ばれた盟約により、神位の妖精には、魔法使いたちの求めに答えるか答えないかを自分で決める権利があるのだ。
ゆえに、神位の妖精が、通常の魔法ではない方法で、魔法界において力を用いる場合には、魔法使いの魔力を使う必要はないのである。現に、魔眼の主である神位の妖精アルゴスなどは、自分の力を魔法使いたちに自由に分け与えている。
しかし、そのような特殊な妖精を除いて、基本的に神位の妖精が何の見返りもなく人間たちに協力することなど考えられない。
法に縛られず無限に力を使える、この法の抜け穴のような方法は、神位の妖精に気に入られ、個人的に契約をするという普通なら絶対にありえない幸運をつかんだ魔法使いにのみ許された特別な力と言える。
だが、魔力を使う必要がないのであって、魔力が使えないわけではない。
特に『影の魔法』は、魔法の中でも少し特殊な魔法だ。それは、実際には影そのものを操る魔法ではない。それは、魔法使いの魔力を影の中に溶け込ませて、影が動いているように見せかけている魔法である。
この魔法を使用するためには、神位の妖精のマリーと言えど、魔法使いの魔力を使うしかない。魔力は魔法使いが生み出す物質であって、妖精は魔力そのものを生み出すことはできないからだ。
相手選手が次の狙いに定めたのはライム・グリエッタだった。ライムに向かって3つのボールが飛んでくる。
「げーっ、わたしぃ~?」
そう言いつつも、ライムは特に慌てている様子はない。
そのボールがライムに当たることはなかった。
「あっ…あれは何の魔法かしら…?」
「造形魔法やとは思うけど、何の魔法やろ…あんな色の物質見たことないわ…気持ちわる…まるで召喚魔法みたいや。まぁ、召喚魔法なんてこの世に存在せぇへんけど」
ライムにボールが当たる直前、突如地面からオオカミが飛び出してきて、ボールをくわえて着地した。そしてくわえたボールを噛み砕き、ただの砂へと変えると、そのままそのオオカミも土へと戻っていった。
これは、マリーが得意とする『眷属の生成』によって生み出されたオオカミだ。
当然、生き物を召喚しているわけではなく、造形によって作り出したオオカミを生きたように動かしているのだ。
ヴァンパイアは、残された文献によると、移動魔法や攻撃魔法などが特徴的な妖精ではあるが、実は『造形魔法』も得意とする、技巧派な妖精であった。マリーは土や鉄の造形も得意であるが、今回は影の魔法と同じく、フェリカが持つ『血の色』の魔力を使ったので、赤黒い不気味な色をしたオオカミとなったのだ。
「ありがとー!」
「お安い御用じゃ、ほれ、戦場でよそ見をするな!攻撃の手を休めるでない!」
そう言われて、慌てて攻撃に戻るライムだった。
試合の残り時間が少なくなってきたが、もはや5クラスの勝ちは確定したも同然だった。点数はさらに開き、25対0となっていた。点数がこれだけ開くことも驚きではあるが、さらに驚くべきは失点が0という点だった。遮蔽物がないフィールドで行われるバトルボールにおいて、5人全員が相手の攻撃を一度も食らわないということは、普通なら考えられない。それぞれの技量もなかなかのものであったが、それを可能にしている一番の要因はフェリカ、正確に言えばマリーにあった。
マリーが攻守共にこの戦場全体をコントロールしているのだ。
以前にマーシャと戦った時もそうだったが、マリーは常に相手の行動を数手先まで読んで動いている。自分の行動に対して相手がどういうリアクションを取るかを予測し、それによって相手の行動をコントロールしているのである。それゆえに、周りから見ていると、それはあたかもマリーが先回りして動き、それに合わせて相手が行動しているかのようにも見える。
「さぁ、そろそろクライマックスかのぉ!」
試合時間が残り1分ほどとなったところで、フェリカはそう言った。
すると、フェリカの背中からは禍々しく赤黒いオーラのようなものが吹き出した。それは先ほどのオオカミと同じ色をしていた。そして、それは形を変え、こうもりのような翼となった。赤黒く不気味な翼だった。
「なっ、なんやあれ…魔装か?」
「あっ、あの翼…それにさっきのオオカミ…まさかあの力は……」
フリージアは思い当たることがあるのかそう言ったが、その先は口には出さなかった。
「さぁ、お開きじゃ!!」
そう言うと、フェリカはその不気味な翼を大きく広げ、宙に舞い上がった。そして、頭上で手を大きく広げると、無数の土の球体がフェリカの周囲に形成される。
そして、フェリカが指をくいっと下に降ろすポーズをとると、無数の土の球体は、まるで雨かのように地面に降り始めた。
「ちょっ、ちょっと…あれ、私たちにも来るってことぉ?」
「いや…一応、狙ってるんじゃない…多分?」
空を見上げてオリヴィアとロイエはそう言った。
確かにそれは味方には1つも当たらなかった。
だが、相手選手に全て命中するというわけでもなく無差別に降り注いでいるようにも感じられたので、偶然当たらなかっただけなのか、味方だけは避けて落としたのかは定かではなかった。
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