魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第11章 クラス対抗魔法球技戦編

ストライクボール1年決勝①

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ルーシッド、ルビア、フェリカ、キリエの4人は食堂から出場選手の控室へと向かった。


3日目の午前までで全競技が準決勝まで終了し、午後からはいよいよ決勝戦がスタートする。3日目午後がストライクボール、4日目午前がエリアボール、午後がバトルボールの決勝である。それぞれ1年生から順に行われていく。
準決勝までは日程を早めるために、いくつかの会場に分けて同時進行で行っていたが、決勝戦はメイン会場である大闘技場で行われる。入学試験の実技試験でも使用された会場である。準決勝で敗れた選手たちも試合に出場しない生徒たちも観客席にぞくぞくと集まってきていた。
闘技場はストライクボールの試合のためにすでに準備が整えられおり、試合開始を前に生徒会長のフリージア・ウィステリアが挨拶をするために会場の中央に立っていた。

会場全体にフリージアの透き通るような声が響き渡る。
フリージアは『藤色』という薄紫色の魔力を持つ魔法使いのため、青の魔力によって行使できる『音の魔法』を魔法具なしで使用することができた。

「皆さん、今年度の学年別魔法球技戦も、いよいよ決勝を残すのみとなりました。ここまで善戦しながらも惜しくも敗れた人たちも、あとは試合を楽しみましょう。

それでは、学年別魔法球技戦、決勝戦の開幕です!」

会場は歓声と拍手に包まれた。



控室にはルーシッド達のクラスがすでに集まっていた。

「いよいよ決勝戦ね。3競技全てで決勝戦に進めたのはすごいことだわ。でも私たちにならその先。3競技優勝だって絶対できるわ」
クラス委員長のシアンがそう言って出場する選手を鼓舞する。

ストライクボールに出場する選手たちはみな自信を持って頷いた。



「いよいよ決勝ですね」
スピーチが終わって戻ってきたフリージアを迎えた、生徒会副会長のヴァンがそう言った。

「そうね、最後までトラブルなく終われるようにもうひと頑張りしましょう」
「会長は今日のストライクボール決勝に出場するんですよね?」
「ええ、私たちのクラスはそれで終わりだわ。ヴァンくんは明日のバトルボールだっけ?」
「はい。今日のストライクボール決勝は生徒会メンバーも多く出ますね。1年生はマリンさん、2年生はサラさん、3年生はシヴァさん、そして4年生は会長ですね」
「そうね~。1年生のマリンさん、意気込んでいたわね。空回りしなきゃいいけど…」
フリージアは心配そうにため息をついた。
「決勝でルビアさんとですからね。入試の時の雪辱を晴らすと燃えていましたね。
にしても1年5クラスはすごいですね。1年生で3競技全てで決勝に進出したのは初ですからね」
「そうねぇ。それに、あのクラスなら全競技優勝もありそうね」
「試合をやる度に観客が増えていますね。次は何をやってくるのかと生徒たちの間でも話題になっているみたいですね。この決勝の舞台でどんな試合をするのか私も楽しみではありますね」
「あらあら。まぁでも実は私もちょっと楽しみだったり。生徒会としてあんまり1つのクラスに肩入れするのもどうかと思うけど」
フリージアはいたずらっぽく笑った。

「普通なら1つの戦法が上手くいったら同じ戦法で行くはずなのに、5クラスはここまで全試合でメンバー構成も戦法も変えてきてるわ。何て言うか…期待を裏切らないというか…だからきっと決勝でもまた違う戦法で来るんじゃないかしら」
「今までに誰もやらなかった戦法や、やりたくてもできなかった戦法を次々と使ってきてますからね。本当にあのルーシッドさんの頭脳はどうなってるんでしょうか」

ヴァンはすでに今回の5クラスの活躍の背後にいる立役者がルーシッドであることに確信を持っていた。

「ほんとにね。さぁ、そろそろ行きましょう。1年生の試合が始まっちゃうわ」

そう言うと2人は観客席へと向かった。
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