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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
教員会議②
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さらにすごいところは、クラスの選手全員をちゃんと試合に出場させたということだ。これは普通のことのように思えてすごいことだ。
当然のことながら、魔法使いには自分の魔力によって使える魔法と使えない魔法がある。また、使えたとしても魔力量が低くてとても実戦レベルではないということもある。それに、魔法球技の特性上、有利な魔法や必要不可欠な魔法も当然ある。バトルボールの土の魔法などが良い例だ。
また、こう言っては何だが自分の(つまりリサの)クラスの生徒たちの魔力ランクは決して高くはない。もちろん同学年の中では、頭一つ抜きんでているSランクのルビア・スカーレットがいるゆえに、平均値を取れば他のクラスと同じくらいになるのかも知れないが、ルビアを除けば、Aランクは総リーダーのシアン・ノウブルだけだ。しかも、シアンはランクも高く、成績も優秀ではあるが、実戦向きの魔法は得意としていなかった。シアンは治癒魔法師を志望しており、入学試験の時も模擬戦には参加せず、代替魔法実技を受けて合格していた。
シアン自身の趣味も料理や裁縫など(いずれも水の魔法が関わってくるため、向いているのは間違いないのだが)で、所属しているスクールギルドも魔法料理ギルドだ。
他にもBランクは8名おり、ヘンリエッタ・オートロープなど専門分野では光るものがある生徒はいるが、クラスのほとんどの生徒は魔法使いとしては平均的なCランクの生徒だ。さらにはDランク魔法使いのフェリカ・シャルトリューもいる。
まぁ、フェリカに関しても、ルーシッドと似たレベルの特異な魔法使いということもあって、単純なDランクに分類してしまうのはどうかとは思うのだが。
普通のクラスであればルビアをフル活用し、ルビアにおんぶに抱っこのワンマンチームになってしまいかねないというか、そうするのが普通だと思う。
なにせルビアは、オールラウンダーの魔法使いだ。3種類の基本属性魔法が使えるだけでなく、その最大魔力量の高さゆえに、そのどれもが実戦級である。火力、詠唱スピード、精度、そのどれをとっても一級品であり、遠距離・中距離・近距離の全てに対応できる彼女には、苦手な種目など存在しないだろう。どの競技においても、普通に考えるなら彼女を軸にした戦略を考えるはずだ。
だがそれはクラスの中の力関係を大きく崩し、不和の原因にもなりかねない。
私も学生の時は学年やクラスの中でルビアと同じような立場にあったからよくわかる。もちろん表面上は目立った不和が生じていると感じたことはなかった(今思い返せば、それも自分が思っていただけで、内心私だけが目立つことを良く思っていない人が全くいなかったかと言えば、それはわからない)が、私のワンマンチームのような感じになってしまったことは否めない。クラスはいつも私が中心で動いていた。そして自分自身そのことを当然のように考えていた。魔法の才能に秀でた魔法使いが上に立つ。これが当たり前だと。
また自分自身、昔からそういう心の傾向はかなり強かったと思う。自分より下のランクにはランクの違いで優越感を持ち、自分より上のランクにはランクなどただの数値上のことであって実戦でなら負けないと対抗心を持つ。
魔力ランクなど気にしていない振りをして、誰よりも魔力ランクを気にしている。
そんな矛盾だらけの感情を抱えて生きていたと、今思い返せば感じる。
でも、魔力ランクが何よりも重視されるこの社会においては、そういう傾向は誰にでもあるのではないだろうか。
しかし、このクラスはそうではなかった。確かにルビアはいくつかの試合に出場し活躍した。
だが、こう言っては何だが、そこまで目立ってはいなかった。
むしろ、他の選手の方が目立っていた試合も多々ある。Cランクの選手たちが、普通ならあり得ない話だが、相手のAランクの選手を圧倒するようなポテンシャルを見せつけて勝利を収めていた。
そんなこと普通に考えてあり得ない。
それを可能にしているのは全てルーシッドの戦略と魔法理論、そして魔法具のお陰だ。
この部分に関してはシアンの采配も大きく関わってきていると思う。シアンはクラスメイとの個性や魔法特性、向き不向きをよく把握しており、バランスよくチームを組む上で、リーダーシップを発揮していた。クラス全体を鼓舞したり励ましたりする上でも大きな役割を果たしていた。
魔力ランクなど関係なく、個性豊かなクラスメイトが、それぞれの才能を遺憾なく発揮している。本当にいいクラスだなと思った。自分としては教えることより、むしろ学ぶことの方が多いのだが、まぁそれもいいだろう。学院生活が始まったばかりなのは、5クラスの生徒にとっても、私にとっても同じことだ。私も生徒と共にさらに成長し、少しずつ信頼を勝ち得ていければいいな、そんな風にリサは思って、ふっと笑った。
そんなことをリサが考えていた時、一人の声が教員室の空気を変えた。
「なーんかさ、つまんないんだけどー、この会議。え、なに、これはわざと話を逸らしてるのかしら?」
当然のことながら、魔法使いには自分の魔力によって使える魔法と使えない魔法がある。また、使えたとしても魔力量が低くてとても実戦レベルではないということもある。それに、魔法球技の特性上、有利な魔法や必要不可欠な魔法も当然ある。バトルボールの土の魔法などが良い例だ。
また、こう言っては何だが自分の(つまりリサの)クラスの生徒たちの魔力ランクは決して高くはない。もちろん同学年の中では、頭一つ抜きんでているSランクのルビア・スカーレットがいるゆえに、平均値を取れば他のクラスと同じくらいになるのかも知れないが、ルビアを除けば、Aランクは総リーダーのシアン・ノウブルだけだ。しかも、シアンはランクも高く、成績も優秀ではあるが、実戦向きの魔法は得意としていなかった。シアンは治癒魔法師を志望しており、入学試験の時も模擬戦には参加せず、代替魔法実技を受けて合格していた。
シアン自身の趣味も料理や裁縫など(いずれも水の魔法が関わってくるため、向いているのは間違いないのだが)で、所属しているスクールギルドも魔法料理ギルドだ。
他にもBランクは8名おり、ヘンリエッタ・オートロープなど専門分野では光るものがある生徒はいるが、クラスのほとんどの生徒は魔法使いとしては平均的なCランクの生徒だ。さらにはDランク魔法使いのフェリカ・シャルトリューもいる。
まぁ、フェリカに関しても、ルーシッドと似たレベルの特異な魔法使いということもあって、単純なDランクに分類してしまうのはどうかとは思うのだが。
普通のクラスであればルビアをフル活用し、ルビアにおんぶに抱っこのワンマンチームになってしまいかねないというか、そうするのが普通だと思う。
なにせルビアは、オールラウンダーの魔法使いだ。3種類の基本属性魔法が使えるだけでなく、その最大魔力量の高さゆえに、そのどれもが実戦級である。火力、詠唱スピード、精度、そのどれをとっても一級品であり、遠距離・中距離・近距離の全てに対応できる彼女には、苦手な種目など存在しないだろう。どの競技においても、普通に考えるなら彼女を軸にした戦略を考えるはずだ。
だがそれはクラスの中の力関係を大きく崩し、不和の原因にもなりかねない。
私も学生の時は学年やクラスの中でルビアと同じような立場にあったからよくわかる。もちろん表面上は目立った不和が生じていると感じたことはなかった(今思い返せば、それも自分が思っていただけで、内心私だけが目立つことを良く思っていない人が全くいなかったかと言えば、それはわからない)が、私のワンマンチームのような感じになってしまったことは否めない。クラスはいつも私が中心で動いていた。そして自分自身そのことを当然のように考えていた。魔法の才能に秀でた魔法使いが上に立つ。これが当たり前だと。
また自分自身、昔からそういう心の傾向はかなり強かったと思う。自分より下のランクにはランクの違いで優越感を持ち、自分より上のランクにはランクなどただの数値上のことであって実戦でなら負けないと対抗心を持つ。
魔力ランクなど気にしていない振りをして、誰よりも魔力ランクを気にしている。
そんな矛盾だらけの感情を抱えて生きていたと、今思い返せば感じる。
でも、魔力ランクが何よりも重視されるこの社会においては、そういう傾向は誰にでもあるのではないだろうか。
しかし、このクラスはそうではなかった。確かにルビアはいくつかの試合に出場し活躍した。
だが、こう言っては何だが、そこまで目立ってはいなかった。
むしろ、他の選手の方が目立っていた試合も多々ある。Cランクの選手たちが、普通ならあり得ない話だが、相手のAランクの選手を圧倒するようなポテンシャルを見せつけて勝利を収めていた。
そんなこと普通に考えてあり得ない。
それを可能にしているのは全てルーシッドの戦略と魔法理論、そして魔法具のお陰だ。
この部分に関してはシアンの采配も大きく関わってきていると思う。シアンはクラスメイとの個性や魔法特性、向き不向きをよく把握しており、バランスよくチームを組む上で、リーダーシップを発揮していた。クラス全体を鼓舞したり励ましたりする上でも大きな役割を果たしていた。
魔力ランクなど関係なく、個性豊かなクラスメイトが、それぞれの才能を遺憾なく発揮している。本当にいいクラスだなと思った。自分としては教えることより、むしろ学ぶことの方が多いのだが、まぁそれもいいだろう。学院生活が始まったばかりなのは、5クラスの生徒にとっても、私にとっても同じことだ。私も生徒と共にさらに成長し、少しずつ信頼を勝ち得ていければいいな、そんな風にリサは思って、ふっと笑った。
そんなことをリサが考えていた時、一人の声が教員室の空気を変えた。
「なーんかさ、つまんないんだけどー、この会議。え、なに、これはわざと話を逸らしてるのかしら?」
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