【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

1章 新しい家族

氷の戦い

「んなっ！？」
私が打った氷の矢が、勢いよく蔓を切り裂いていきます。こうして練習以外で使うのは初めてですが、上手くいきましたね。
「小細工しても無駄だ！毒花ポイズン！」
今度は紫色の花が地面から生まれ、液体を噴射してきました。見るからに毒々しく、これまた触ったらアウトですね。
「凍れフリーズ！」
手から魔力を発し、毒液を凍らせます。氷が毒液を伝い、花まで凍らせました。ピキピキと音をたてましたが、花は動かなくなりました。

「クソっ！何でだよ！何でなんだよ！」
「何事ですか！？」
庭園に悲鳴のような声が響きます。侍女長の方ですね。
「お嬢様、どうされましたか！？」
「お前、この屋敷の侍女か？」
「そうです。お嬢様に何の用でしょうか。」
「駆除する。それだけだ。」

　ガウィン様の言葉を聞くや否や、侍女長さんは私の前に立ちました。両腕を広げ、私を守ろうとしてくれています。あぁ、やっぱり公爵邸の方々はいい人ばかりです。
「お嬢様に危害を加える人物は…侯爵家のご令息であろうと容赦はしません。」
「ふん、愚か者め。咲けブルム！」
「やめて！」
現れたのは、凍てついた巨大な花でした。

「何で……凍っている？」
私がガウィン様の魔法発動の瞬間に凍らせたからですね。少し疲れが出てきました。
凍てついた花は重力に耐えられず、バキバキと大きな音をたてな折れました。地面に大花が突き刺さり、辺りには砂埃が舞い、公爵邸に低い音が響きます。


「何事だ！」
大きな音を聞きつけ、お父様がやって来ました。後ろにいるのは、侯爵様でしょうか。
「父上！」
「ガウィン、何をした。まさかエメリック公爵家のご令嬢に手を出した訳では無いだろうな？」
「お、俺は…父上が公爵家に取り入れる様に…寄生虫を…」
「馬鹿者！」

目の前でガウィン様が侯爵様に平手打ちをされました。ガウィン様は無様に尻もちを着きます。
「公爵に取り入れるようにご令嬢を傷つけるだ？何故そうなるんだ！」
「こ、公爵様は捜査中に見つけた哀れなやつを仕方なく養女にして……邪魔だと思っているばす。だから……」
再び平手打ち。顔がボロボロですよ。

「侯爵、私に話させてください。」
「はい…」
「フォークス令息、私はレイを邪魔だと思ったことは1度もありません。」
お父様は振り返り、侍女長の方を見ます。
「カレン、正直貴方はレイに出ていってほしいと思っていますか？」
侍女の方は力強く、首を横に振りました。
「そのような事を思ったことは一切ございません。公爵家の大切なご令嬢でございます。そうでなくとも、このような愛らしいお方に……」
「そうか、ありがとう。」

　お父様はガウィン様に氷魔法より冷たい視線を向けます。
「以上です。」