【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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2章 悲劇の王女

幸せは償い?

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 後悔…?シンシア王女に関してでしょうか。

「シンシアが伯爵家どのように暮らしていたのかは知っていた。だがシンシアが愛する人達と暮らせているならそれで良いと決めつけ、早くに逝かせてしまった。」
「…それは、陛下のせいでは」
「その頃グレシアナ王国でも貴族間の衝突が多く、私も王太子として休みなく動いていたからシンシアまで広く気を配ってやれなかったのだ。忙しさにかこつけて、シンシアをちゃんと見てやれなかった。」
 そう言う陛下の様子は痛々しく、声も弱いものでした。

「シンシアは王族教育も受けていた。先王は成人したら名家の令息との婚約と共にシンシアを公表する気でいたのだよ。しかし手筈が整う前にシンシアはいなくなってしまった。」
 シンシア王女は、王族として認められる予定だったのですね。ですが、15年離宮に閉じ込められ、寂しく暮らしていたら、どこかへ行ってしまいたいと思う気持ちも分からなくもありません。自由こそがシンシア王女の幸せだったのかもしれません。


「私はずっと後悔していた。シンシアを無理にでも連れ戻していたらこんなに早く命を落とさなくてもよかったのではと、シンシア自身の幸せを願っていた反面押し付けだったのではないかと。」
「……」
「人の幸せとはその人にしか分からないものだと思います。」
隣のルークがハッキリ声を発しました。

「高級品を手にしている時、愛する人といる時、誰かの役に立っている時、ただいつも通り暮らしている時……幸せとは、人それぞれです。他の人が分かるものではありません。」
ルークの目は力強く、陛下を見据えていました。

「シンシア王女が幸せだったのかは彼女にしか分かりません。陛下が気に病む事は無いと思います。しかし、シンシア王女が自分で選び取った時間は幸せだったのではないでしょうか。」


「……そうかもしれないな。」
陛下は私に向けて言いました。
「エメリック嬢、私はシンシアへの罪滅ぼしをしたかった。シンシアの孫にあたる貴殿の幸せが、彼女への償いになるのではないかと。だが、違ったんだな。」




「ありがとう、ハルティア陛下。グレシアナ王国はハルティア王国へ有事の際に最大限の支援をする事を約束しよう。」
「……ありがとうございます。私の拙い言葉で、少しでもグレシアナ陛下のお力になれたならば光栄です。」



 会談は終了しました。私の、身体に流れる血に、少しだけ恨めしさが無くなった気がしました。
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