111 / 181
3章 結婚式
待つ二人①
しおりを挟む
<ルーク視点>
「い、行きましょう!」
顔を真っ赤にしたレイが駆け出した。ティアード嬢もそれに続く。その腕を掴もうとしたが、届かなかった。レオナルド殿下も同じだったようだ。
「ま、待つんだ!」
その呼び掛けも虚しく、二人は人混みに溶けていく。それは私たちの行方をも阻み、二人を見失わせるのに充分な役割を果たしていた。
結果、レイとティアード嬢がいなくなってしまった。便乗してからかい過ぎたせいだろう。
「すみません、調子に乗ってしまいました。」
「いえ、これは私も悪いです。」
レオナルド殿下は露骨にしぼんでいる。
「で、どうしましょう。下手に動かない方が良いと思いますが。」
「同感です。二人なら戻ってくるでしょうし。」
ひとまず店の壁にもたれて待つことに決めたが、心配だ。人は多いしレイもティアード嬢も変装しているとはいえ仕草は完全に貴族のそれ。変な輩に絡まれないと良いのだが。
王太子と聖女の婚姻とあり、街は非常に活気づいている。人々の密度や盛り上がりからもそれは分かるが、迷い人を探すとなるといささか不安になるものだ。
「さぁご覧なされ!今から超割引だよ~!!」
ふと聞こえた威勢のいい声は、人混みの耳を引き付けた。方角から察するに女性向け店のどれかだろう。
ここで予想外だったのは、露店の店主と話していた殿下が一瞬人混の付近にいたことと、周辺にいたほとんどの人がその方向に向かったことだ。人混みは波となり、ほとんど一方通行のようになった。私は殿下を追っていく。つまり、だ。私達もその波押し流される。待たなければいけないのに、流され身体は運ばれていく。
気づいた時にはかなり流されていて、雑貨屋の前にいた。
「大丈夫ですか…?」
「えぇ、まぁ。割引ってすごい影響力ですね。」
件の割引を行っている店は相当客を集めているのか、人だかりで商品が見えない。主に女性が集まっているが、その目は何と言うか、血走っているように見えた。しばらく波は去りそうに無い。
一息ついて雑貨屋の品に目を落とすと、空色のビーズがあしらわれたブレスレットがあった。レイの髪と瞳の色にそっくりだった。
「ルーカスは本当にレイナを想っているんですね。」
そう殿下に言われた。
確かに、前までなら考えられなかったことだ。こんなにも誰かに恋をし、想い、支え合って生きていくなんて。こんなにも愛しい人ができるだなんて。
「レオンはクロエをどう思っているんですか?」
そう殿下に聞いた。今日のようにプライベートの雰囲気が強くなると、殿下からはパーティーでは見られなかった独占欲のようなものが垣間見える。
「愛しています。」
するのとてもシンプルな答えが返ってきた。
「い、行きましょう!」
顔を真っ赤にしたレイが駆け出した。ティアード嬢もそれに続く。その腕を掴もうとしたが、届かなかった。レオナルド殿下も同じだったようだ。
「ま、待つんだ!」
その呼び掛けも虚しく、二人は人混みに溶けていく。それは私たちの行方をも阻み、二人を見失わせるのに充分な役割を果たしていた。
結果、レイとティアード嬢がいなくなってしまった。便乗してからかい過ぎたせいだろう。
「すみません、調子に乗ってしまいました。」
「いえ、これは私も悪いです。」
レオナルド殿下は露骨にしぼんでいる。
「で、どうしましょう。下手に動かない方が良いと思いますが。」
「同感です。二人なら戻ってくるでしょうし。」
ひとまず店の壁にもたれて待つことに決めたが、心配だ。人は多いしレイもティアード嬢も変装しているとはいえ仕草は完全に貴族のそれ。変な輩に絡まれないと良いのだが。
王太子と聖女の婚姻とあり、街は非常に活気づいている。人々の密度や盛り上がりからもそれは分かるが、迷い人を探すとなるといささか不安になるものだ。
「さぁご覧なされ!今から超割引だよ~!!」
ふと聞こえた威勢のいい声は、人混みの耳を引き付けた。方角から察するに女性向け店のどれかだろう。
ここで予想外だったのは、露店の店主と話していた殿下が一瞬人混の付近にいたことと、周辺にいたほとんどの人がその方向に向かったことだ。人混みは波となり、ほとんど一方通行のようになった。私は殿下を追っていく。つまり、だ。私達もその波押し流される。待たなければいけないのに、流され身体は運ばれていく。
気づいた時にはかなり流されていて、雑貨屋の前にいた。
「大丈夫ですか…?」
「えぇ、まぁ。割引ってすごい影響力ですね。」
件の割引を行っている店は相当客を集めているのか、人だかりで商品が見えない。主に女性が集まっているが、その目は何と言うか、血走っているように見えた。しばらく波は去りそうに無い。
一息ついて雑貨屋の品に目を落とすと、空色のビーズがあしらわれたブレスレットがあった。レイの髪と瞳の色にそっくりだった。
「ルーカスは本当にレイナを想っているんですね。」
そう殿下に言われた。
確かに、前までなら考えられなかったことだ。こんなにも誰かに恋をし、想い、支え合って生きていくなんて。こんなにも愛しい人ができるだなんて。
「レオンはクロエをどう思っているんですか?」
そう殿下に聞いた。今日のようにプライベートの雰囲気が強くなると、殿下からはパーティーでは見られなかった独占欲のようなものが垣間見える。
「愛しています。」
するのとてもシンプルな答えが返ってきた。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
『「毒草師」と追放された私、実は本当の「浄化の聖女」でした。瘴気の森を開拓して、モフモフのコハクと魔王様と幸せになります。』
とびぃ
ファンタジー
【全体的に修正しました】
アステル王国の伯爵令嬢にして王宮園芸師のエリアーナは、「植物の声を聴く」特別な力で、聖女レティシアの「浄化」の儀式を影から支える重要な役割を担っていた。しかし、その力と才能を妬んだ偽りの聖女レティシアと、彼女に盲信する愚かな王太子殿下によって、エリアーナは「聖女を不快にさせた罪」という理不尽極まりない罪状と「毒草師」の汚名を着せられ、生きては戻れぬ死の地──瘴気の森へと追放されてしまう。
聖域の発見と運命の出会い
絶望の淵で、エリアーナは自らの「植物の力を引き出す」力が、瘴気を無効化する「聖なる盾」となることに気づく。森の中で清浄な小川を見つけ、そこで自らの力と知識を惜しみなく使い、泥だらけの作業着のまま、生きるための小さな「聖域」を作り上げていく。そして、運命はエリアーナに最愛の家族を与える。瘴気の澱みで力尽きていた伝説の聖獣カーバンクルを、彼女の浄化の力と薬草師の知識で救出。エリアーナは、そのモフモフな聖獣にコハクと名付け、最強の相棒を得る。
魔王の渇望、そして求婚へ
最高のざまぁと、深い愛と、モフモフな癒やしが詰まった、大逆転ロマンスファンタジー、堂々開幕!
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる