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【番外編1】:仕事とデートと夜のドライブ
12 篠塚
しおりを挟む「……出そう」
車が通り過ぎた後、今にも泣いてしまいそうな震える声で、課長が俺に抱きついたまま首を横に振る。
この状況はよほど興奮するのか、ゆるゆると浅いところを動かすばかりの指を、うねるように締め付けてくる。
オレとの間で擦られる課長のチンポは完全に滾って、ぴくぴくと震えている。
もう一回いかせてやるのも良いが、堪えさせてねだらせるのも捨てがたい。
「もう一回出しますか?」
ねだってくれるのならそれもよし。拒絶するのなら、いかせるのを後回しにするだけだ。
ちゅっとキスをして、苦しげに表情を強ばらせている課長を見下ろす。
「……いい。篠塚、オレの上から下りろ。……苦しいから」
浅い息を繰り返しながら、課長が軽く横に首を振る。快感にとろけきってるくせに、理性をなくさないのが憎らしい。
ぐっと課長の上半身を抱き寄せて、おそらく苦しい元凶のヘッドレストを取り外す。
課長を抱き寄せた腕の裏側を使いぐいっと取り外してからぽいっと、運転席に放り投げた。
がつっとドア部分に当たって転がったヘッドレストを、課長が険しい目で追いかける。
「これで、苦しくないですね」
にっこりと笑ってみせれば、課長が厳しい目を俺に向け溜息をついた。
少しフラットに近づいたシートから、更に後部座席の背もたれに課長の身体を押し上げ、それから逃げないように身体を乗り上げると、後部座席の背もたれも押し倒してやった。
上手く倒しきれず、角度を残したシートの状態は、押し倒しているにもかかわらず、課長の上半身が軽く起き上がり、顔が見やすくて、これはこれで良い。
「……そういう問題じゃない」
俺を押しのけようとする課長の手を押さえ、膝上に馬乗りの状態から、課長の身体を囲い込むように両手を身体の両脇に押しつける。
「逃がしません」
「……そうじゃない、いいからどけ」
「いやです」
「……ッ」
拒絶する口を黙らせるために再びキスをする。シャツ越しに乳首を弄りながらキスを繰り返す。押しのけようとする腕の力が緩むまで何度も。
キスの合間の荒い息づかいと、時々鼻に抜けるような高めの嬌声、それを堪えるような低く喉を絞るようなうめき声、俺の手で感じて、抵抗出来なくなっていく姿を感じ取るのがたまらない。
もっと俺に流されればいい。
普通ではない場所でのセックスが俺は好きではない。
学生時代はおもしろがってやっていたそれらは、一通り試して早々に飽きた。多少興奮はしても、往々にして面倒だ。女をその気にさせるのも、後始末も、何もかもが。
けれど今、俺はベッド以外での行為をたびたび好んでする。課長をいろんな場所で押し倒した。ついに車の中とは言え、公道脇という屋外。
誰に見られるかも分からない場所で、抱くには安定の悪い狭苦しい車でセックスなんかしたいわけがない。全面フラットならまだしも、現状は助手席の延長線上でもたもた動いている。
窮屈な上に汚さないように気をつけてだとか、苦痛以外何物でもない。
なのに俺は、こんな場所で好んで課長と行為に及ぼうとしている。
表情を変えない課長が、わずかに動揺を見せる姿が好きだ。ダメだと言いながらも拒絶しきれず俺に流される姿に興奮する。
本当にダメな時は、課長は流されてくれない。俺に流されていると言うことは、俺を受け入れてくれていると同義なのだ。そう自分に言い聞かせる。
これだけ恥ずかしがっても、どれだけダメだと思っても、流されても良いと思うぐらい俺を好きだと言うことだ。
快感に負けて流される姿を見る度に、課長の好意を感じて興奮する。そういうやり方はダメだと思う理性とは裏腹に、最後は苦笑して許してくれる課長を知っているから、まだもう少し、今日ぐらいは……と罪悪感にまみれながら、こんな場所での行為に没頭するのだ。
今だってそうだ。
乳首を弄る度にびくびく跳ね、俺からのキスをなされるがままに受け入れる課長の身体は、快感に反応する以外の力は抜けきっている。
感じる度にぴくぴくと震える課長のチンポが時折俺の腹を叩く。その度にシャツと擦れるのが気持ちいいのか、悶えるように腰が揺れる。
いつもストイックな課長が、俺の腕の中では、これほどまでにいやらしい姿をさらす。
かわいい、愛しい。好きだ。この人が好きだ。
たまらない背徳感に背筋が震える。
力なくシートに横たわる課長に満足し、身体を起こすと、自身のズボンの前をくつろげる。興奮しきった俺のチンポは、パンツ越しにも分かるほど先走りをこぼし、濡れていた。
興奮しすぎだと自分を笑いながら猛ったそれを取り出し、課長の物と並べて、共に握り込む。
「……ひっ」
快感にとろけた様子でぼんやりと俺のチンポを見ていた課長が、その瞬間、背中を反らして震えた。
「……あっ、あっ……」
一緒に握り込んで擦ると、課長の腰がそれに合わせて揺れた。
一緒にしごいているだけなのに、触れ合った場所がぐりぐりと刺激される感触は、手とも舌とも口とも違う気持ちよさがあった。
二人でオナニーしているような気持ちよさに、夢中になりながらしごく。
「あ、あ、あ……っ」
気持ちよさそうにうつろな目で天井を見ながら、俺になされるがまましごかれ腰を揺らす課長が、めちゃくちゃエロい。その姿に更に興奮して手を動かす。
そして、そのままいきそうになりかけたところで、我に返って手を止めた。
「……っ」
快感が達しかけたところで手を止めた俺を咎めるように課長が見た。
縋るようにも見えるその視線に、嗜虐感が込み上げてくる。
「……いきたいですか?」
笑って見下ろす。
課長の俺を求める言葉が欲しくて、彼が困るであろう質問を投げかける。
案の定、ぐっと言葉を詰まらせた課長が、顎を引いて堪える姿勢を見せた。
できれば「いきたい」でも「入れて」でも、求める言葉が欲しかったが、この際なくてもいい。この状況でさえ俺を受け入れてくれる課長を堪能出来れば、それで。
羞恥心か屈辱か、いきそこねた欲求を堪えるように、課長の身体が強ばったまま震えている。
だが、いきそこねて悶々としているのは俺も同じだった。
舌打ちしたいのを堪えながら、ローションと一緒に取り出しておいたコンドームを手に取る。
車の中で精液をまき散らすのはごめんだ。
シートにはカバーを付けてあるが、取り外して洗えない場所に飛び散ったら面倒だ。
課長のチンポにコンドームをはめれば、俺より少し小ぶりなせいで、ゴムが少したるんでつけにくい。
「え、な……、篠塚?」
酷く困惑した課長の声がする。
「……やるのか? ……無理だ……」
少し落ち着いたのか、課長がわずかに後ずさった。ゆるゆると首を振って身をよじる。
「無理じゃありませんよ。大丈夫です、ちゃんと気持ちよくします」
「……っ」
あれだけ最後までやると言っているのに、まだ途中でやめる気だったのだろうか。
いつもよりあきらめが悪いのは、やはり場所のせいなのか。それが俺の狩猟本能を刺激した。
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