その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第三章 第一異世界人発見

一話 始まる冒険、初めての闘い

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歩く、歩く、歩く。

義弘は歩く。足早やに進めるその歩みは、目的の所在を確かに感じ取っていた。


朝から歩き始めて早くも夕刻。時間にすれば二桁の時間は歩いていた。


『!!!』

それまで軽快だった歩みが突然とまる。


『おかしい?!明らかにここから先は、危険だと…』

歩みを止めた義弘の五感が進むのを止めろと告げている。



「ふふふふ、これからが本当の冒険らしい…」

《なるほど、危険察知は、まずまずというところか…》


これまで歩いてきた森の中とは違い、明らかに纏わり付くその空気が重い。

それまでとは違って、最大限の警戒をしながらも境界線と感じられるその場所から義弘はゆっくと前進を始めた。




ミスターに強制転移させられ、これまで義弘の居たテリトリー地のあった場所は、ビクトリア世界の中でアリアドラという名の大陸のほぼ真ん中にある『還らずの森』『死の森』『魔界林』と呼ばれ、人の近寄ることのないそんな場所である。

義弘が幸運だったのは、死の森の中でもその中央にある神域と呼ばれた魔素の存在しない(魔物が生存できない)地域であったことだ。


義弘の頭の中に不意に強い危険喚起がなされた。


「やばいか??!」


突然の出来事に、緊張から握った拳が更に硬くなる。



『グルルルルル、グルルルルル、グルルルルル』


逆毛を立てたハスキーよりもやや大きな犬属性の動物が、木立の間からゆっくりと姿を現す。

大きく裂かれたような口元からは、御馳走をお預けされたように、粘りある涎が止め処なく滴り落ちる。


『なるほど、どう見ても俺が今夜の御馳走か?』

『それにしても狂犬病にはなりたくないなぁ』


義弘は今、不思議な感覚に包まれていた。

危険察知能力がこいつは危険だと自分に教える。しかし、その危険を目の当たりにしても一向に焦る気持ちがわかないのである。


命のやりとりの緊張感はビンビンに感じている。

しかし、異世界以前に、一度として人と闘った事のなかった自分が、恐れ、恐怖の類に、飲み込まれる様子のない不自然さが、義弘の緊張をゆっくりと解す。


『何故、俺は焦らない?何故、怖いと思わない?』


目の前に迫る狼擬きと睨み合いながら距離を保つと、足元に落ちていた小枝を爪先にかけリフティングのように蹴り上げた。


そんな一瞬、狼擬きはチャンスと感じて獲物となった義弘に襲いかかった。
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