その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

文字の大きさ
16 / 61
第三章 第一異世界人発見

六話 ご挨拶とこれからの事(その二)

しおりを挟む
「なるぼど、それならば、一応の理解はできるな…」


おっさんの言葉は、内容の割に案外簡単に受け入れられた。

しかし、簡単に受け入れられた理由もそれなりに存在する。

まず、おっさんの現れた方角。それは、現在居る場所(聖域の泉)から見て、死の森の方角。何処よりも魔素の濃いその森は、極最強ランクの魔物の生息する場所とされ、一度踏み込んだものを返すことはないとされる場所である。

当然、この大陸に住まうもので、その事を知らない者は居ない。
そんな死の森から、武器も防具も装備しない人が、現れる事などどう考えても有り得ない。

山茶花のメンバーからしてみれば、突然現れたおっさんを魔物の変幻と疑って警戒したのは公然の秘密である。


「それで、わたくし、どうしたらいいんでしょうか?」


「そうだなぁ、我々のパーティーもギルドの依頼で、この泉の周辺の探査を受けているんでなぁ、あと二日はここを動けない。」


「そ、そうなんですか…あっ、それでその探査って…」


「ああ、それは、死の森が活発化していて、普段、森から出てこない魔物を見かけたという報告が、たびたび上がっていてなぁ…」


パーティーリーダー、アトリの話から『死の森』の最南端にあるこの泉は、精霊の加護によって魔素がなく、魔物が近寄らない安全地帯であり。この泉を、南に下ること三日ほどで最果ての街『エンド』へと到着するという。

そして、その『エンドの街』の冒険ギルドに所属している上位パーティーにある山茶花が、今回『死の森探査』のギルド指名のクエストを受けていた。



「あの、わたくし、探知に関しては些か自信があるのですが…」


「?」


とうとつに告げるおっさんをアトリは訝しげに眺めた。


「はあ、それで、あのぉ、わたくしにも、何かお手伝いができれば…」


それは、おっさんにしてみれば必死の主張である。

全く知らない土地、しかも異世界という付加価値のついた場所で、このまま邪魔者扱いで一人放り出されては、生きていく自信はまるでない。


「‥うーん、そうだなぁ、では、一度、テストしてみよう。それで、まあ、役にたちそうなら、協力してもらうか‥」


「は、はい♪♪♪」


主張の通ったおっさんは、ほっとした。
ともかく、皮一枚ながらも首は繋がった。
あとは何とかしてテストに合格。役に立つところを見せれば良いだけである。


「では、さっそく、探知の魔法を展開してくれ♪」


「…」


『探知の魔法』それはおっさんにしてみれば初めて聞いた言葉である。

異世界へとやって来た義弘にしてみれば、この泉へと到着するまで、危険な気配を感じたままに避けていた。
それは、探知の魔法などというもの展開した自覚などまるでなく、無意識の中なされたことであった。

義弘にしてみれば自然に、危険な相手がいる距離と方角。それと、その相手がどれほどヤバイ相手なのか。それがはっきりと感じ取れていたからこそ、自信を主張したのである。


「‥た、探知魔法?ですね‥」


おっさんは、できもしない魔法を展開するしか手はなかった。

『結果良ければ全てよし。魔物が判ればいいんだよな』


それは、おっさんの開き直りであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...