その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

文字の大きさ
33 / 61
第四章 異世界生活

十五話 こんな時こそ規格外?!

しおりを挟む
「ゴルちゃん、水くさいよ!」


「ヨッシ‥」


見つめ合うおっさんズ。
終生の友となった二人には特別な言葉は必要ない。瞬き一つの僅かな時間で分かり合えた二人はともに頷き合う。


この日初めて出会ったおっさんズの二人。

二人が出会うそのすぐ前の時、毛むじゃのおっさんは、一人前の
冒険者に届いたばかりの息子をその仲間たちとともにクエストへと見送っていた。

そんな息子の仲間の中の一人が、今、毛むじゃのおっさんの前に、うずくまる青年であった。

この日のジンのクエストは、坑道の雑魚モンスター駆逐。
Dランクの冒険者パーティーなら何の問題もないクエストの筈であった。


「行くぞ、ヨッシ!」


「よしきた、ゴルちゃん!」


帳の降りたエンドの街を二人おっさんが閉鎖されようとしている正門へと向かって走り出す。


最果ての地にあるエンドの街は、高い城壁に囲まれ、厳ついほどの丈夫な門が、街の周りの魔物から街人達を護っている。

そんな厳つい門は!毎日、日の入り1時間で閉鎖される。魔物の活動が活発となる夜間になれば、如何様な理由があろうともその門が開かれることはない。
それがこの街を護る為のルールであり、護られなければならないルールであった。


二人のおっさんは全力で駆けだした。

先ずは閉門に間に合わせなければ始まらない。

すでに日の入りから1時間は過ぎていた。それでも二人は諦めない。諦める訳にはいかなかった。


本来ならばその門は、硬く閉ざされていたはずであった。
しかし、眼前にあるその門は、人一人、通れる隙間を残し、閉められる気配さえ感じられない。


「ゴルちゃん!!」


「おお、ヨッシ!急ぐぞ!!」


それは例外的な処置。
本来ならばあってはならない例外である。


「しっかし、今日の門は、何で重いんだ?」


「そうだな、ほんと重い重い♪」


二人の門番の声はとても軽く、白々しい。


「済まん、助かる‥」


おっさんズの二人は、一気に城門を駆け抜けた。

坑道のトラブルは、当然門番兵の二人も当然知っていた。
丸一日の当番制の門兵は、坑道にクエストに向かったパーティーもまた理解していた。


「助かるといいな‥」


「ああ、そうだな‥」


「どうする?」


「‥?ああ門ね、閉めるか?」


「そうするか?」


少しの隙間を残した城門は、それからゆっくりと閉じられたのである。


おっさんズの二人は荒野を駆け抜ける。
そんなおっさんズの鬼のような形相に、恐れられている筈の夜間の魔物さえ道を譲る。


落盤を起こした坑道は、エンドの街から西へ全速で走って、およそ1時間の距離にある。

ギルドに青年のクリスが飛び込んできてすでに1時間。少なくとも落盤で閉じこめられてから2時間の時が経過していた。


二人のおっさんは、全冒険者の中、37分の最短時間の新記録の樹立する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...