その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第四章 異世界生活

十七話 忘れられた最強魔法

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「ちょっと待って、これを持っていって」


勢いよく歩き出した義弘をシンディーが止めた。


「おお、助かる、感謝するシンディー」


シンディーが差し出したのは、一つの魔道具。
暗闇の中、辺りを照らす照明魔道具である。地球の照明器具のように調整ツマミはないものの、魔力を流すことで明かりの強弱に変化がつけられる。


シンディーから魔道具を受け取った毛むじゃのおっさん、慌てて選考する義弘の後を追うのであった。






「リルア、どうするの?」


「…どうしようニャ」


「受けるの?」


「うーん‥嫌いでは、ないニャ…」


「じゃ、最初は、やっぱりお友達からよねぇ」


「そうニャァ…やっぱり、そうだよニャァ…」



坑道へ向かったおっさんズを余所に、テントの中では急遽の女子会が催されていた。

猫族の頭への愛撫はプロポーズ。
おっさんの知らないところで包囲網は着々と縮められていくのである。







その場所は、坑道入り口から500m。狭い坑道の移動により体感距離は本来の距離の1、5倍に伸びてしまう。

おっさんズの二人は、二時遭難を、避けるべく慎重に先へ先へと足を延ばしていく。

おっさんを後ろから照らす魔道具、ランタンの光。
おっさんズの行く先を優しく照らす。


順調に進んでいたおっさんの足が止まる。


「ゴルちゃん、不味い…」


「?どうした‥」


前方に注視していた義弘は、後ろを振り向き毛むじゃに語りかけた。


「この先は!落盤の危険がある。二時遭難の可能性がかなり高い‥」


「……」


ゴルドは、義弘の言葉に言葉をなくす。
気持ちの中では今すぐ駆け出し息子の元へと向かいたい。
しかし、人並み以上、いや、神懸かる能力さえ見せてくれた親友の言葉は紛れもない事実。ゴルドは、思考と葛藤の中、義弘に伝える言葉を探し出す。


「何とか、何とか助けてやれる方法はないのか?」


「今いる場所から30m。落盤した坑道の距離は17m」


明かりから離れた暗闇を見つめおっさんは魔力で編まれた細かな網を前に前にと広げて行く。


「17mの崩落土砂の先に……うむ、体力消耗、混乱、精神耐性消耗。若干の問題はあるけれど三人の生存は確認できた…」


「それで、助け出す方法は?」


若干の笑顔を浮かべはしたもののゴルドは表情を引き締め義弘に問いかける。


「方法…危険なこの先を…たとえ落盤なく崩落した坑道の手前にたどり着けたとしても、そこから先の方法が見つからい…」


おっさんは、最も伝えたくない相手に最も伝えたくない言葉を話すことしかできなかった。


「そうか……ヨッシがそう言うんならば‥、……」


毛むじゃのおっさんの瞳から一筋の涙が流れる。



『何とかならないのか!チートじゃないのか!異世界を渡った勇者じゃないのか!』

おっさんは、拳を硬く握りしめ暗闇の先を睨みつけた。


《仕方ない、今度だけは手を貸してやる》


おっさんは、声を聞いた。
それまで聞いたことのないような透明感があるのに男臭い渋い響きの声だった。

その時おっさんの姿は、毛むじゃのおっさんの前から消え始めていた。
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