その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第四章 異世界生活

十九話 親の心、子の心

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突然、消えたおっさんの姿。

『頼む、ヨッシ!息子をジンを助けてやってくれ!!』








「馬鹿息子!ランクが上がったぐらいで粋がるな!」


「何だと、馬鹿親父!!」


「例え、一人前とされるランクに昇格しようとも、それで人が偉くなった訳じゃねえ!」


「‥」


「お前の今の態度を見て見ろ!冒険初心者を見くだすは、戦えない街の人への対応すら…」


ゴルドが睨みつける若者は、言葉に思い当たる節があるのか、苦虫をかみつぶしたような表情のまま説教を聞く。


こんな様子は、ゴルドの息子ジンが、冒険者として頭角を現した頃からの毎日起こるギルドホールでの恒例行事。

朝の雑多で忙しいホールで、こんな親子の物語は、毎日毎日飽きもせず繰り返される。



そしてそれは、その日の朝も同様であった。


「馬鹿息子!油断すんじゃねえぞ!帰ってくるまでが冒険だ。例え簡単なクエストでもなにがあるか…」


「かあぁ~!判ってるさ馬鹿親父!毎日毎日、耳にタコができちまったぜ」


『ジン、気ぃつけていくんだぞ』

最後の毛むじゃのおっさんの心の声は、ジンが冒険者になってから毎日毎日、何百回、何千回と掛け続けてきた言葉。それはきっとゴルドが死ぬまで掛け続けるそんな言葉である。





それは、異世界おっさんが、坑道の奥へと姿を現わす少し前のことである。


『すまん親父。ドジっちまったよ』

「すまんな、アイリス、クロア…」


細く細く絞られた魔力が発する光は、三人の若者を暗闇の中照らし出していた。
そんな三人の若者は、坑道に閉じこめられて3時間あまり。
落盤により封鎖された坑道の空気がなくなる知識は当然持っていた。


「ジンのせいじゃない…」


パーティーメンバーで紅一点のアイリスには、いつもの元気は存在しない。
迫る死の恐怖に顔面蒼白。精神消耗。すでに絶望の表情さえ垣間見える。


『すまんなみんな…親父、駄目かもしれん‥』

『諦めるな!リーダーが諦めてどうする!』

諦めて楽になりたい弱い自分の心と、強い親父に教え混まれた冒険者魂が葛藤を続ける。


「ジン、やっぱり少しでも出口近くに行ってくる…」


「崩落場所近くは危険だ…」


ジンの言葉が終わる前には、アイリスは坑道入り口の方へと歩き始めていた。

『親父……』



そんな絶望が、若者達の全てを呑み込もうとしていた時、緊迫とは全く無縁な場違いなおっさんが、突然、そこに現れたのである。




そんなこんなで救出された三人。そして…



「ただいまぁ~ゴルちゃん♪」


それはとても軽い軽い言葉。

親友の息子を無事に助け出せたことによる安心感がそうさせたのか?、それとも、もともとおっさんの持ったお気楽性格なるものによるものか?

なんにしても、とてもとても軽い言葉だった。

そんな軽い言葉を後ろから突然にかけられたゴルドは、飛び上がらんばかりに驚く。
手に持つ照明魔道具ごと振り向いたゴルドの目には、息子のジンとその仲間、そして大役を果たしてくれた終生の友の姿が笑顔とともに移り込んでいた。


「親父…」


「…心配かけやがって………」
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