その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第四章 異世界生活

二十話 禁断の風習?!

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ゴルドを先頭に坑道を進む五人。

そんな五人の表情には、助かった安堵が有り有りと現れて笑顔さえ垣間見える。


「ヨッシさん♪ところでさっきの魔法、いったい?」


「さあ?実のところ、私にもとんと??」


「まあ!ヨッシだからなぁ…」


ジンたち三人、始めておっさんに会った若者と毛むじゃのおっさんとでは付き合いが違う。
僅かに一日付き合っただけで、おっさんの常識外れを受け入れ終生の友にまで上り詰めたゴルドである。

「ヨッシだから」「おっさんだから」は決まり文句。

今後、エンドの街では理不尽事に出会うたび、「ヨッシだから」「おっさんだから」が当たり前になっていく。最も理不尽に感じる本人の気持ちを無視して。


坑道入り口、外には山茶花の作ったキャンプベースの焚き火の明かりが揺れていた。



「お帰り、中の様子はどうだっ……」


入り口に見えたゴルドの持つ明かり。
ずっと心配していた山茶花メンバーである。慌てて坑道入り口へと駆け寄った。

呆気にとられたリーダーのアトリ。様子を見に行った筈のおっさんズ二人。戻ってきてみれば、人数は五人。要救助者全員を保護していたとは想像外も甚だしかった。


「いったいどうして…」


「アトリ。心配かけたな♪」


たった一言かけた言葉が、ゴルドとアトリのこれまでの付き合いが良好だったことを物語る。


「はははは、ヨッシだからな♪はははは」


「はあぁ…まあ、ヨッシーなら仕方ないか…」


簡単な説明をしながら明かりの元でもある焚き火の近くへと車座に座る。


「アトリさん、ご心配お掛けしました」


ジンはアトリに向かい深々と頭を下げた。もちろん、パーティーメンバーであるアイリス、クロアも例外ではない。ジンに遅れて下がりようのないほど深々と頭を下げるのだった。

そんな厳粛な儀式の最中、安否不明の冒険者の無事を祝うかのように、明るい声がその場を支配する。


「おっちゃん♪おっちゃん♪おっちゃんニャ♪」


外の騒ぎに気がついたのはテントに隠った猫族美女。
テントから飛び出してきた猫族美女は、勢いのまま一気におっさんに抱きついた。


「えっ、。…?!」


42の厄年を迎えた今まで、女性に好意を向けられた記憶は一度としてない。
まして相手は、紛れもない美人。地球にいないタイプではあるが、何度も秋葉の裏クラブにて愛でてたネコ耳。相手に不足があるわけはない。

抱きしめられたネコ耳美人に、おっさん為す術もない。抱き返す勇気もなく持て余す両手の行方は、優しく頭を撫でるだけであった。


「「「「「「「「「「ああっ~」」」」」」」」」」


そこにいる全ての感嘆の叫び。

おっさんの好意の行為は、禁断の行為。獸人族全ての共通のプロポーズ。
やってはならない禁断の風習を知らずに繰り返す有頂天なおっさんであった。


「お二人の世界に入り込むのは良いんだが、ここには私たちがいることをお忘れなく」

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