その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第四章 異世界生活

二十一話 これまでのこと、これからのこと

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粗末ながらも食事を終えた坑道から出た5人。

おっさんの皿のシチューだけ、ボリュームが違ったのは、給仕担当、山茶花一、料理上手のリルアの仕業。


ジト目を向けられ冷や汗を流したおっさんの苦笑いが、今回の坑道災害の無事の解決を物語る。


熱々の注がれたカップのお茶を飲みながら、これまでのこと、これからのことが話し合われていく。


「それでヨッシー、坑道の状況は判るかい?」



この世界の鉱物資源。埋伏量の差に違いはあってもどんな場所にでも存在はしている。

ただし、探査魔法で探し当てた資源を掘り出す方法は限らる。大規模な露天掘りよりもピンポイントでの穴掘りの方が遥かに効率が良い。

岩盤層の鉱物資源を鉱山穴堀りにて、鉱石採取するのがこの世界の常識となっていた。
しかし、鉱山堀りにも欠点がある。魔法技術の発展のせいか地球のような落盤予防の坑道強化の技術が未発達だったのである。

一度、落盤を起こしてしまえば、廃坑となる可能性が5割を上回り、これまで災害の被害者を量産していたのであった。



「そうですねぇ、崩落現場の7mいや10mの範囲は、再度の崩落が予測されます」


「予測?‥それはどれくらい?」


「すみませんアトリさん。‥予測ではなく、確実にです。それは遅いか早いかの違いであって、そう長くは持たないと思います」


おっさんの判断は、かなり正確なものである。


「では、やっぱり廃坑か‥」


アトリは、おっさんの言葉に、がっかりとした表情を浮かべた。


「いや、必ずしも、そうとは限らないかと…」


「どういうことだい?」


おっさん、まれに見る真剣な表情。



自分たちのリーダーと対等なる会話を交わすおっさんの姿は、初恋を煩った山猫美女リルアの瞳に王子様を移す。


「えっ!!!」


それまで隣に座って、おっさんを見詰めていたリルアが突然、おっさんの腕に絡みついた。


「「「ええっ!」」」


それは、山茶花のメンバーの戸惑いの叫び。


「…!!!ウオオォー!」


それは、おっさんの野生の雄叫び。


「ウオ、ウオオ、ウオオォー!」


繰り返される、おっさんの雄叫び。

若い美人のその感触は、おっさんの眠っていた野生を呼び起こす。


『生、生、生です~♪』


異世界ビクトリアでは、女性下着は未発達である。

絡みついたリルアの姿勢で、腕に押しつけらた胸圧は、おっさんには猛毒にも等しい。


「ヨッシー!」「おっさん!」「ヨッシーさん!」「ヨッシ!


「………」


「おっさん!!」「ヨッシ!!」「ヨッシー!!」


何度、おっさんは呼びかけられたであろうか?


「おっちゃん♪どうかしたかニャ?」


「………はっ」


腕に絡みついた山猫美女は、おっさんを下から覗き見上げる。

少しの間、記憶をなくしていたおっさんは、下から覗かれたリルアの笑顔に笑顔で応える。
そんなリルアの見せた表情、それは会心の笑顔であり、鼻から左右に少し離れたところから生えた細い6本のヒゲが、ウェーブしながらリズムを刻む。


「?、?はっ!!!あの…リルアさん」


「リルア!リルアって…」


「えっ‥い、いいんですか?」


「ニャ♪」


「‥で、では、リルアで…それで…リルア、」


「なんニャ?」


「その、む、胸が…」


おっさんの言葉が終わる前、リルアはおっさんを突き飛ばす。


「!!ニャー…おっちゃん、ま、まだ早いニャ…」


両手で顔を隠したままのリルアは、楽しげな声を残してテントへと消えるのであった。





「はあぁ、リルアのこと、悪かったね。で、ところでさっきの坑道のこと、いいかい?ヨッシー?」


「…あっ、はい。‥も、申し訳ありません」



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