その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第五章 エンドの街にて

二話 初めてのデート

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テーブルのバスケットに入った堅焼きパンを口に頬ばった義弘は、ゴルドの入れてくれたコーヒーを口にして一息をつく。


「それで、昨夜の言っていた通り、一日買い物でいいのか?」


「ああ、でもゴルちゃん、別にわざわざ付き合ってくれなくても、俺は一人で大丈夫だよ?」


「何を今さら。ヨッシには、最早、返しきれない程の恩がある。そしてそんな恩など無かったにしても、マブ達となったお前に付き合うのは当然のことだ」


ゴルドは、真剣な表情で答える。

本来、ゴルドには冒険者として一線級を引いた時からギルド副職員としての仕事があった。
新人冒険者の育成を主としたアドバイザーとしての立場があったのだ。


「それでヨッシ、今からすぐに出掛けるのか?」


「いや、まずは自分の部屋にどんな家具を配置するのがいいか、そこからだな」


「そうなのか…じゃあ、俺は少しギルドに行って、これからの事を相談してくる」


そう言って、毛むじゃのおっさんが義弘の前から立ち上がった時、炊事場の勝手口から声がかかった。


「おっちゃん♪いるニャ♪♪」


その声の主に見当が付くおっさん。

その声の張りと抑揚から考えて、今日も六本の可愛いヒゲが、ウェーブしているのが手に取るように判ってしまう。


「リルアちゃん♪こっちこっち♪」


さすがにストライクど真ん中の美女を呼び捨て出来ないおっさんは、ちゃんづけの許可を取り付けていた。


「おっちゃん♪おはようニャ♪」


炊事場の横、併設されたテーブルの場所へと乱入したリルアのヒゲは、本日もまたリズミカル。
胡散臭げな厄年のおっさん、さてさて何処が気に入ったのやら、まだパンを食べる義弘の横にしなだれかかるように座るのである。


「おはよう、リルアちゃん♪今日も可愛いいね」


「ふにャ~…か、かわいい……」


何気ないおっさんの一言で、真っ赤なトマトになった猫は、慌てておっさんから視線を外した。

その間、残りのパンを食べ終えたおっさん。恥ずかしさにうつむく美女を眺めて堪能する。
今日のリルアは、冒険者スタイルなどではなく、清楚な白いワンピースがとても良く似合う。


「ゴホン!!!」
「…では、わしは、今日はギルドに一日いるから、何かあったら連絡をくれ」
「…では、くれぐれも羽目を外し過ぎるなよヨッシ♪」


矢継ぎ早に言いたいことだけを言った毛むじゃは、そそくさと二人から離れ炊事場から消えてしまう。


「おっちゃん♪…スキ」


「♪そうだ、リルアちゃん、今日一日、街を案内していただけませんか?」


リルアの最後の小さな小さな言葉は、おっさんの耳には届かない。
しかし、おっさんの本日の希望の街の探索(お買い物)は、リルアの希望(デート)と合致していた。


「ニャー♪もちろんO.K.ニャ♪♪♪♪」
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