その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第五章 エンドの街にて

三話 禁断の風習その2

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二人で見て歩くエンドの街は、全く違った装いに感じる。

そうそうに屋敷を出たおっさんと美女の二人。相も変わらずおっさんにしなだれかかるように腕に絡みつく。

昔(地球にいた頃)なら有頂天に舞い上がり、地に足がつかない状態に陥っていたはず。しかし、今のおっさんには、耐性という好き嫌いに関係なく働く不粋な奴が存在する。
山猫美女の生乳を感じようとも高揚感は湧いてこない。

『全くつまらん!!』

本来ならば、にやつく自分があったはずが、和やかに美女を愛でるに止まってしまっているのだ。



おっさんと美女の二人の歩く姿は、やっぱり目立つ。

すれ違う男達からの『死んでしまえ』と突き刺さる視線。

『わかるぞ、お前ら♪』

そう、それは以前のおっさんの姿。勝ち組となったおっさんには、その刺さるような視線は快感にさえ感じるものである。



「先ずは、家具でも見てみたいな♪」


「わかったニャ……フタリデツカウシンコンヨウ」


それまでの体制から、突然おっさんの手を掴むと先導するべく歩き出すリルア。


ラブラブな二人の歩く姿は、やっぱり目立つ。

振り返る女達の視線がいつもと違った。

いつもなら、怪しげな者への訝しむ視線。
いつもなら、胡散臭げな者への蔑む視線。

そんな視線とは無縁な視線。それは憧れや愛しさに近い、以前のおっさんからは最も縁遠い存在のものだった。



『スキル』そいつは、いつも良い仕事をして、おっさんを助けた。
しかし、そんなスキルにも裏と表の顔があり、いつもプラス方向へと傾く訳ではない。

某山猫美女が盛ったキノコの影響か、キノコを取り込んだおっさんのスキルへと変換される。
そう、異世界からやって来たおっさんの本当のチートは、食べる事によりスキルを増やせる事だったのである。


角ウサギの回復スキルや媚薬キノコの魅惑スキル。
これからも経口摂取により、おっさんを無敵の道へと突き進ませる。(本人の得意志を無視して)



「何だか、女性の視線がいつもと違うよう何ですけど…」


「それはニャ、みんながおっちゃんの良さを判ってきたのニャ」
『ニャニャニャ!よく考えれば、それはまずいのニャ!!』

手を引いていたリルアは、突然おっさんに抱きついた。


「あわあわあわあわ………」


耐性とは、繰り返しの体験をすることで、慣れて強化されていくもの。女性への免疫という耐性は、現在のおっさんには、とても強化出来そうにないものである。


「あ、あ、あ、あ、あの‥リルアちゃん‥」


「……」


黙ったまま、おっさんの胸元からそっと顔を覗かせ潤んだ瞳で見詰めるリルア。


「あ、あ、あっ、そう。あ、あそこの道具屋に、可愛い指輪がありますよ…」


「……」


緊急回避の手段は、わりと身近な場所にあった。

背中に回されたリルアの腕の力が少し緩められ、見詰めていた視線が道具屋の店先へと移動する。


「何か、プレゼントします♪」


「……ほんと?」


「はい♪何が良いですかねぇ‥リルアちゃんは可愛いから何でも似合いそうです♪」


『ギュ』
それは背骨が折れる程の軋む音。

おっさん、どれだけ索敵、探知のスキルが向上しようとも女性の心の中までは見通せない。

おっさんの可愛い発言は、再びリルアに抱きつかせる結果につながったのである。


それから10分にも及ぶ、往来の真ん中にての羞恥プレーの継続であった。



長きに及ぶ羞恥プレーの終了とともに道具屋を訪れた二人。
幸せいっぱいのリルアにおっさんが進めた物は、綺麗な猫眼石をあしらった清楚なネックレス。


「これなんかどうですか?この石、リルアちゃんの目に似てとても綺麗です」


姿さえおっさんでなければ、プレイボーイの殺し文句。いや、山猫美女の目には王子様、十二分に殺し文句となっていた。


「い、いいのかニャ?」


「はい♪」


「うれしいニャ♪」


「つけてみましょうか?」


こくりと頷く真っ赤なトマト。おっさんにゆっくりと背を向けたリルアは、髪をかき上げうなじを見せた。



婚姻、婚約、プロポーズ。種族でいろいろあるけれど、獸人族には特別の、愛する異性からの首輪(ネックレス)のプレゼントという、一生に一度の儀式が存在していた。
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