その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第五章 エンドの街にて

七話 役にたつもの、できること

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おっさんが魔道具造りをしたいと考えたのは、ほんとうのところ魔道具屋を覗いた時ではない。

真実を語れば、周りからの好感度が激下がりするのではないかと考えたからである。
おっさん、見かけとは違って以外と繊細であったりする。


明かりの魔道具に衝撃を受けたのも事実なら、蓋を開けて傾ければ流れ出続ける水筒に驚いたのも真実である。

しかし、ほんとうに魔道具というものに興味を持ったのは、ゲン爺さんが持つマジックバックを見てからである。
ラノベでお馴染みのマジックバックがこの世界では手に入らない。おっさんのショック衝撃は、甘くないケーキ、辛くないカレー、それほどに強い絶望を与えた。

では、この非常識の塊のおっさんは、どう考えたのか?

『無けりゃ、作ればいいんじゃねぇ♪』

至極最も精神単純構造のおっさんの結論は、自分が作り出すことだった。幸い特別な鑑定があるおかげで魔道具の理は、肌で感じる事ができた。後は実践あるのみである。




『チュンチュン、チュンチュン、チュンチュンチュン』


新婚初夜を終え、ご機嫌で目覚めたおっさんの朝は、誰よりも早かった。

それまではお客様の地位にいた義弘もこの日からは皆と同目線。隣で眠るリルアを起こさないよう、おっさんは静かに部屋を出て炊事場に向かった。


42年の独身生活は、それ程、器用ではないおっさんにも調理能力を与えていた。
まずは、食材探しと辺りを散策。
箱に詰められた野菜群と堅パン。籠に盛られた生卵。そしてなんと信じられないことに、無造作に瓶に入れられ置かれた牛乳。それらの食材発見がおっさんの魂に火を着ける。

《かまどだけで、いいんじゃねぇ?》


心の声は無視することにして、何が作れるか?メニューと環境、二足のわらじで悩み始めるおっさんである。


『やっぱり、衛生面か…』『やっぱり、冷蔵庫か…』『あっ、卵と牛乳にしたして…』『ああ、サラダも外せないからドレッシングか…』

男、四十にして惑いまくる、おっさんである。



なお、この日の朝のおっさんの作る食事、フレンチトーストとドレッシングのかかったサラダは好評であった。




魔道具作成にかかろうとして、おっさんはいきなり躓いた。

アイデアを設計図に起こそうとしてみれば、肝心要の紙がない。この世界での記録という物は、動物の鞣し革を使って記録するのが通例である。


「仕方ない、まずは紙の開発か…」


自室で一人つぶやいた義弘は、原材料となりそうな草木を探すため二度目の冒険を決意する。
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