その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第五章 エンドの街にて

十一話 たまごとおっさんと

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二度、三度、四度。たまごとおっさんの鬼ごっこは繰り返される。
その様子はま、たまごを子供に変えて見れば、まるで親にじゃれつく姿そのもの。追いかけられてるおっさんから見れば、恐怖の対象でしかないのだが‥


「‥はあぁ」


おっさんは完全に立ち止まった。どれだけ逃げようとしても一定の距離から離れる事はできた例しがない。
一人手持ち無沙汰になったリルアは、何度目からかの追いかけっこからは隣に参戦していた。


「お腹が空きました。ご飯にしましょう♪」


それは、おっさんがたまごに根負けした証であった。

お昼ご飯の準備中に始まった鬼ごっこ。
右に左に、左に右に。何度も繰り返しているうちに、ぐるぐる森を巡り巡って目の前には、シートの上に広げられたままの愛妻特製弁当があった。


「では、お湯を沸かしちゃうニャ」


おっさんは、鬼ごっこを諦めて昼食の場となるシートへと腰を下ろした。

危険を感じない以上、まずは腹の虫が先。たまごの事は無視である。
たまごの事は街に帰るまでに、何らかの対処を導き出せばよいのである。

3メートル程あったたまごとの距離は、なぜだが目を離すたびに僅かにだが接近している。


「はあ、鬼ごっこの次は、最初の一歩ですか‥」


ずっと見つめるそのたまご、縦に40センチ横に25センチ。視線を外すたび近づくたまごは、よく見ると可愛く見えてくるのが不思議である。




目の前に差し出された熱いお茶。
二段重ねのおにぎりに入った1段目をずらして置くと、黄色の玉子焼きと赤いタコさんウィンナーが目に入る。


「おいしそうですねぇ♪」


「ささ、どうぞ旦那様♪おにぎりは、シャケに佃煮、それと酸っぱいプラムの3種類です♪」
 

子供の頃食べたお弁当の定番。甘い玉子焼きは、おっさんの好物である。


「凄いねぇ、おにぎり3種類もあるんだ♪」


何気ないおっさんの言葉で山猫美女の笑顔が膨らむ。さっきまでの殺伐とした、たまごとのやりとりがまるで嘘のようである。

そんな相手だったたまごと言えば、気づけばおっさんの背中に引っ付いている。


「うん♪うまぁい♪」


「よかった♪」


「このたまご凄いですねぇ!!」


「えっ、お口にあいませんでしたか?」


「いやいやいや、こっちのたまごの方ではなくて、こっちのほうのたまごが→」


おっさんが指さす先には、腰の辺りに擦り寄るたまご。完全に親に甘える子供の姿である。


「このたまご、フニフニです♪」


たまごたまごと言ってはいたが、いざ触ってみればたまごの殻には程遠い。例えるならば、マシュマロ。フニフニプニュプニュととても触り心地がよいのである。

おっさん、それまでの恐怖の鬼ごっこを忘れてたまごを抱き上げた。


「触ってみます?」
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