その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第五章 エンドの街にて

十三話 結成 おっさんズ?

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ギルドマスターの今日の天気は晴れのち嵐である。
朝から自らが片腕と言って差し支えのない男が現役復帰を宣言しに来たのをきっかけに一杯煽り上機嫌の午前中を送っていた。
真っ昼間から酒が飲める、冒険者になってこれほど良かったと思える事はないのである。

しかしである。
そんな上機嫌のほろ酔い気分が一転、厄災が転がり込む。そう文字通り目の前で転がっているのである。


「こんなたまご見たことも聞いたこともねぇ…」


「どうしましょう?ゲン爺さんだけが頼りなんです…」


「かあぁー、ほんとにお前って奴ぁ…」「うーん、どうするか…」


腕組みをして、たまごを睨みうなるゲン爺さん。そんな爺さんを尻目におっさん美女の二人は、コロコロと愉しそうに転がるたまごをみている。


「とりあえずでも、従魔登録でもしとくか?たまごのまんまじゃ、どうしようもあるまい…」


「では、ギルマス、帰りにでも従魔登録して帰るニャ♪」


「♪♪ああ、そうでした。これ、今日の分の薬草です」


おっさんは背中から大きな袋を下ろすと、袋の口を緩めるとゆっくり優しく中味の薬草を採りだした。


「お、お、お前…昨日の今日で、何でこんなに…えっ、これも、これも!これもか…」


「はあ‥」


「はあ、まあ貴重な薬草だから問題はねぇんだが‥あっ、済まねぇ…」


「はあ?」


薬草を摘まんでは確認、摘まんでは確認していたゲン爺さんが突然手を止め二人へと視線を戻した。


「ヨッシー、リルア。結婚おめでとうよ♪」


「「あっ、ありがとう御座います♪♪」」


「ふふ、どうもリルアが嫁では、その歩く非常識の歯止めになりそうもないらしいな…」


結婚を祝われた二人は、目を併せ爺さんに深く頭を下げた。


「嫁のリルアは、クランの登録はそのままにして、パーティーメンバーとして私をサポートしていってくれることになりました♪」


「はあ、サポートねぇ…サポートあって………この結果ねぇ…」


「では、これで♪」


二人の会話など全く気にならないリルアは、結婚を祝って貰った嬉しさで、おっさんの腕に絡みつき甘くしなだれる。
二人は、転がるたまごを従えて表のギルドロビーへと歩き始めた。



「はあ、やっぱり、現役復帰の奴に苦労して貰うしかないか…」


爺さんの苦悩は深い。
ゴルドの現役冒険者としての復帰を祝ってやりたい反面、エンドのギルドのエースになるかジョーカーになるのか、先行き不明の新人を任せられる唯一の人物をサポートに付ける以外、ギルマスとしてのゲン爺さんに選択肢はなかった。




「ミリアさん、ゲン爺さんから従魔登録を進められました♪書類の方よろしくお願いします♪」


「…えっ、はい。えっ、従魔登録ですか?」


二人が戻ったギルドロビーは、既にクエスト報告の冒険者達で賑わい始めている。そんな中でも異色な二人は、道を譲られエンド1、人気の受け付け嬢のもとへと辿り着いたわけである。


「……それ」


「「はい♪たまごです♪」」


愛し合うふたりの言葉は打ち合わせ無しでも見事なハーモニー。


「ですよね…」


「「はい♪」」


「ギルマスの了承あり何ですよね?」


「「はい♪」」


「…はい。わかりました。それでは、……えっと、この用紙に必要事項の記入、お願いします。それから、従魔…エッヘン、‥そのたまごの起こしたトラブルは、持ち主であるヨッシーさんの責任となりますので、くれぐれも管理の程よろしくお願いします。あと詳しい内容は、今お渡しした用紙の二枚目に書かれておりますので、しっかりとお目を通して置いてください。」


さすがに人気実力ともナンバーワンのミリアである。まるでカンペを読み上げるように従魔登録のことをすらすらと説明続ける。
おっさんとリルアは、ミリアの言葉に圧倒されて、ただうなずくだけの水飲み人形である。


「以上が登録の説明となります。書類の提出は、トラブルの原因を避けるためにもなるべく早くにお願いしますね♪」


「は、はい。‥はぁ‥」


圧倒され続けた説明はどうやら終了したらしい。いつもの満面の営業スマイルでにっこり微笑むミリアの切り替えの速さに、おっさんは小さなため息を吐いていた。

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