その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

文字の大きさ
57 / 61
第五章 エンドの街にて

十四話 結成 おっさんズ?(その二)

しおりを挟む
その夜の屋敷での夕食は、とても賑やかであった。

ゴルドの息子ジンのパーティーメンバーは当然として、何故かお隣さんからは、リーダーのアトリ、それに頭脳労働担当リリーまでもが着席している。
またそれとは別に対面する座席には、ギルドからギルマス。つまりはゲン爺さんが。そして極めつけと言うべきか、異世界定番、豪華な装飾の衣裳を纏った恰幅の良い壮年が、これまたよくある執事を伴って着席していた。


そんな給仕を待つだけの部屋に遅れて入ってきたのが義弘でありリルアである。


「偉く賑やかですね?」


「ヨッシ、お前また何かやらかしたんだって?」


リルアと二人、空いた座席に向かう途中、毛むじゃのおっさんから声がかかる。


「さて、何のことでしょうかね?」


そう答えながら歩くおっさんの後ろには、ごろんごろんと転がりながら付いてくるたまご。


「「「「「えぇー」」」」」


「ああ、もしかして、たま子のことですかね?」


噂は既に噂を呼び、おっさんとたまごの事をエンドで知らない者はいない。(どんだけこの街は噂好きなのか?)
しかし、それも噂だけ。現物を見て現実を知る。現物に勝る物はない。
転がるたまご。それは自らの意志により、おっさんに寄り添う、簡単には、受け入れられない現実であった。

この部屋の視線を一人じめしていたたま子が、突然おっさんの前に回りこみ飛び上がる。


「たま子は、しょうがない甘えん坊さんですね」


軽く胸元でたまごをキャチしたおっさんは、愛おしそうにつぶやく。
そうしてたまごを抱えたおっさんとリルアが座席へとつくと、おっさんの知らないメイド部隊が食事を運び込み始めた。


「ゴホン!‥初めましてだね♪ヨッシー君。私はこの街周辺を治めるロッシーニというものだ。本日は挨拶を兼ねて夕食の準備をさせて頂いた。お口に合うか判らんが楽しんでくれ♪」


次々に配膳された食器に給仕されていく豪勢な数々の料理の中、立ち上がりおっさんに挨拶をしたのが、北部辺境伯、ロッシーニ・エンディング伯爵である。
エンドの街を治め反映させているのは実質上はギルドである。しかし、この国ノーフォーク王国としての統治者でいえば、最果ての街エンドのある北部辺境地域に幾つか点在する街や村を統治するロッシーニ伯爵が存在していた。


「これはどうも、初めまして♪私、異世界迷走者?の佐伯義弘と申します。そして、こちらがこんな冴えないおっさんの嫁になってくれたのがリルア。それと腕の中にいるこの子がたま子です♪」


「………」


たまごに名前まで付けてしまうおっさんの感性に一同全てが黙り込む。

やらかしてしまったおっさんのせいで静まり返った食堂で、メイド部隊が一斉に壁際へと一列に並んだ。


「…さて、食事の支度もできたようです。それでは冷めても何ですので頂きましょうか?!」


冷めた空気の助け船となったのはロッシーニ。
伯爵さまの言葉で一斉に手を併せるのは、地球もビクトリアでも一緒の風習。


「「「「「「「いただきます♪」」」」」」」


それからはしばらく和やかな雰囲気の中、食事会は進む。食べられ空になった食器は下げられタイミングよくメイドが次の料理を運び込む。さながら異世界コース料理である。


「ヨッシよ♪お前の人外行動へのお目付役が確定したぞ♪」


それまで個人的恩義によりおっさんに付き従うつもりの毛むじゃのゴルドだったが、現在ギルドの職員としての立場がそれを阻んでいた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...