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第六十五話 聞き取り
しおりを挟むいまは聞き取りの真っ最中らしい。官憲の邪魔をするつもりはなかったので、とりあえず部屋のドアから少し離れたところで様子を見ることにする。
ルタとロウの存在に気付いて、ドア前にいた官憲の一人が二人へと近寄ってきた。官憲は形式張った様子で二人へと声をかけてくる。
「失礼ですが、何かご用でも?」
無視するわけにはいかず、ウソをつくわけにもいかない。いまだに少しドキドキしているロウだったが、二人を代表するようにルタが官憲へと答えた。
「見舞いだよ。一応、奴らとは知り合いだからな。見舞品は持ってき忘れちまったけど」
知り合いというのはウソではない。ただし、ケンカ相手という意味でだが。それはいま言う必要はないだろう。
特に挙動不審というわけでもなかったので、相手は納得したようにうなずいた。
「そうでしたか。ただいま聞き取りの最中ですので、いましばらくお待ちください」
「あいよ」
官憲がまたドアの前へと戻っていき、ルタとロウはその場で待機することにした。どれくらいの時間が掛かるかは分からないが、追い出されなかっただけマシだろう。
「ふわあー」
暇な時間ができてしまったからか、ルタが壁に背をもたせながらあくびをする。最近はケンカやクエストなどで身体を動かし、また今日は実況見分で朝も早かったので、疲れが少し溜まっているのかもしれない。
そんな彼に、同じように壁に背をもたせながらロウが話しかける。官憲の聞き取りの邪魔にならないように小さな声で。さっきまであった胸のドキドキは、いまはだいぶ収まっていた。
「お見舞い、できそうですね。官憲に通り魔かもって怪しまれたらどうしようかと思いましたけど」
あの通り魔は顔を隠していて、目撃情報も少ない。もし通り魔が三人組を確実に仕留めるために、お見舞いを装って襲撃してきたならば……自分達がそうだと怪しまれてしまったら……とロウは不安になっていたのだ。
あくびで出た涙を手の甲で拭いながら、ルタがどうということもなく返事する。
「心配しすぎだろ。もし仮に本当に通り魔が見舞いに化けて襲ってきたとしても、官憲や看護師にバッチリ顔を見られちまうんだからな。顔を隠して夜中に襲った意味が完全になくなっちまう」
「……それもそうですね……」
「少なくとも、正体につながる情報が掴まれない限りは、通り魔が表立って動くことはないと思うぜ。動くとしたら、昨日一昨日と同じで夜だな。たぶんだけど」
「……夜……」
「それまでに、できる限り情報を集めねえとな」
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