11 / 66
第二章 ゾディアックにまつわる面倒な連中
第一話 だいじな
しおりを挟む「ねえ聞いた? あの三人組、昨日の放課後、校舎裏でボロボロになってるところを発見されたんだって」
「そうなの? だから今日休んでるんだ」
登校して、いつものように腕を枕にして机に突っ伏していると、周りの奴らの話が耳に入ってくる。
「あれ? でも死んでたわけじゃないんでしょ? 回復魔法ですぐに治してもらわなかったのかな?」
「それがね、すぐに治さないでくれって言ってたんだって。学園に行くのが怖い、また怪我するのが怖いって」
「なにそれ不登校ってやつ? あの調子に乗ってた三人が?」
「三人をそんな目に遭わせたのが誰なのかもしゃべろうとしないみたい。凄い怖がってるばっかりで」
「えー? 本当はサボりたいだけの自作自演じゃないのー?」
「さあねえ。わたしも先生達が話してるのを偶然聞いただけだし」
忠告は聞いていたらしい。あの三人にもそれくらいの頭はあったってことだ。
その時、話をしていた一人が何かに気付いたように声を上げた。
「あっ。サフィさんだ」
どうやら学年の有名人が廊下を通っているらしい。そういえば、この時間帯はだいたいいつも通っているな。
「相変わらず可愛いなあ」
「なんでもゾディアックの空席の『水瓶座 (アクエリア)』にならないかって声を掛けられているとか」
「ええっ、すごーい!」
この周りの反応もまたいつも通りだな。
ゾディアックというのは、この学園における特待生のような存在であり、学園内で十三名の学生に与えられる。
ゾディアックに選ばれた者は星座の称号を冠せられて、より有意義な進路を希望出来たり、進学する際に校長直々の推薦状を書いてもらえたりするとかなんとか。
まあ、その代わりに学園行事の際に重要な役割を任せられたり、また在学中に問題を起こせばゾディアックを剥奪されたりする。
そうでなくても、より最適な学生が現れた場合には、ゾディアックの称号を懸けた試合もあったりするらしい。
……まさに面倒くさいことこの上ない。頼まれても絶対にやりたくないね。まあ、そんな事態はあるわけがないが。
「あれ? サフィさん、どうしたんだろう? 誰か見てる……?」
「わ、わ、サフィさんがうちのクラスに入ってきたっ⁉」
周囲の声を裏付けるように教室内に踏み込んでくる足音。それは段々と近付いてきて、すぐそばでピタリと止まる。
「レイン=カラーさん、お休み中のところ失礼します。大事な話があるので、起きてください」
サフィ=ルーブの声。澄み渡るようなその声が発せられた瞬間、教室内に稲妻のようなざわめきが起きる。
「ええー⁉」
「あのサフィさんがあんな落ちこぼれに話し掛けてる⁉」
「嘘だろ⁉」
「なになに⁉ 大事な話ってなんなの⁉ もしかして告……」
「ないない! あのサフィさんに限ってそれは絶対にないって!」
「相手はあの落ちこぼれだし!」
「じゃあ大事な話っていったいなんなの⁉」
クラスメイト達の視線が集中してくる。ごくりと唾を飲み込む気配。そばに立つサフィも視線を外さずに見つめてくる。
全部無視した。
「「「いや、起きろよ!」」」
「「「サフィさんが話し掛けてるのよ!」」」
「寝た振り決め込んでんじゃねえよ!」
……無茶苦茶言いやがる奴らだな……。もし本当に寝てて気付けてなかっただけだったらどうすんだよ。まあ寝た振りだけどよ。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる