かつて天才と言われた落ちこぼれ。ムカついたので自由に生きてたらいつの間にか最強と言われるようになってた件

はくら(仮名)

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第二章 ゾディアックにまつわる面倒な連中

第一話 だいじな

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「ねえ聞いた? あの三人組、昨日の放課後、校舎裏でボロボロになってるところを発見されたんだって」
「そうなの? だから今日休んでるんだ」

 登校して、いつものように腕を枕にして机に突っ伏していると、周りの奴らの話が耳に入ってくる。

「あれ? でも死んでたわけじゃないんでしょ? 回復魔法ですぐに治してもらわなかったのかな?」
「それがね、すぐに治さないでくれって言ってたんだって。学園に行くのが怖い、また怪我するのが怖いって」
「なにそれ不登校ってやつ? あの調子に乗ってた三人が?」
「三人をそんな目に遭わせたのが誰なのかもしゃべろうとしないみたい。凄い怖がってるばっかりで」
「えー? 本当はサボりたいだけの自作自演じゃないのー?」
「さあねえ。わたしも先生達が話してるのを偶然聞いただけだし」

 忠告は聞いていたらしい。あの三人にもそれくらいの頭はあったってことだ。
 その時、話をしていた一人が何かに気付いたように声を上げた。

「あっ。サフィさんだ」

 どうやら学年の有名人が廊下を通っているらしい。そういえば、この時間帯はだいたいいつも通っているな。

「相変わらず可愛いなあ」
「なんでもゾディアックの空席の『水瓶座 (アクエリア)』にならないかって声を掛けられているとか」
「ええっ、すごーい!」

 この周りの反応もまたいつも通りだな。
 ゾディアックというのは、この学園における特待生のような存在であり、学園内で十三名の学生に与えられる。
 ゾディアックに選ばれた者は星座の称号を冠せられて、より有意義な進路を希望出来たり、進学する際に校長直々の推薦状を書いてもらえたりするとかなんとか。
 まあ、その代わりに学園行事の際に重要な役割を任せられたり、また在学中に問題を起こせばゾディアックを剥奪されたりする。
 そうでなくても、より最適な学生が現れた場合には、ゾディアックの称号を懸けた試合もあったりするらしい。
 ……まさに面倒くさいことこの上ない。頼まれても絶対にやりたくないね。まあ、そんな事態はあるわけがないが。

「あれ? サフィさん、どうしたんだろう? 誰か見てる……?」
「わ、わ、サフィさんがうちのクラスに入ってきたっ⁉」

 周囲の声を裏付けるように教室内に踏み込んでくる足音。それは段々と近付いてきて、すぐそばでピタリと止まる。

「レイン=カラーさん、お休み中のところ失礼します。大事な話があるので、起きてください」

 サフィ=ルーブの声。澄み渡るようなその声が発せられた瞬間、教室内に稲妻のようなざわめきが起きる。

「ええー⁉」
「あのサフィさんがあんな落ちこぼれに話し掛けてる⁉」
「嘘だろ⁉」
「なになに⁉ 大事な話ってなんなの⁉ もしかして告……」
「ないない! あのサフィさんに限ってそれは絶対にないって!」
「相手はあの落ちこぼれだし!」
「じゃあ大事な話っていったいなんなの⁉」

 クラスメイト達の視線が集中してくる。ごくりと唾を飲み込む気配。そばに立つサフィも視線を外さずに見つめてくる。
 全部無視した。

「「「いや、起きろよ!」」」
「「「サフィさんが話し掛けてるのよ!」」」
「寝た振り決め込んでんじゃねえよ!」

 ……無茶苦茶言いやがる奴らだな……。もし本当に寝てて気付けてなかっただけだったらどうすんだよ。まあ寝た振りだけどよ。

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