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一章 出会いは寒空の下で
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しおりを挟むケントはビルの間を吹き抜ける冷たい風に、少し身ぶるいした。
サッカー日本代表のロゴが入ったウインドブレーカーのポケットに手を突っ込むと、駅の方に向かって歩く。
きょうは日曜日。
サッカーの練習が終わったケントは、母さんと妹のシノブといっしょに電車に乗ってデパートまでやってきた。
少し豪勢なランチを食べられたのは満足したものの、正直ケントは母の買い物についていくのに抵抗があった。
デパートだと、母はとにかく買い物が長いのだ。
シノブも一緒だとなおさらだった。
「おれ駅前の本屋で、サッカーの雑誌立ち読みしてくる」
ご飯を食べると、そそくさと逃げてきたのだ。
本屋といっても、読書好きでもないケントはさほど好んで行く場所ではない。
母が買い物を終えて来るまで、ずっと時間をつぶせる自信がなかった。
だから店の飾りつけや、何かの宣伝の着ぐるみを見つけては立ち止まって眺めていた。
クリスマスが近いからか、ジングルベルのメロディーが町中に響き渡っている。
何もないような田舎町だから、中心街といってもさほど見るべきものがあるわけではない。
駅からデパートまで大した距離じゃあないし、見知ったところは全部見回っている。
「そういえば、向こうの方とかどうなっているんだろう?」
大きな通りからの横道の先に目を向けた。
いつも母に連れられ、デパートと駅の付近しか行ったことがことがなかったのだ。
もしかしたら、ケントの興味を惹くような面白いものがあるかもしれない。
「あまり遠いところに行っちゃあだめよ。本屋さんかその前のおもちゃ屋さんのあたりにいること」
母さんはそう言っていたが、好奇心の方が勝つ。
「駅までだったらすぐ戻れるし、ちょっと歩きまわったらい時間つぶしになるでしょ」
自分に言い聞かせると、ケントはビルとビルの間にある狭い路地裏に方向を変えた。
この時、何気なく選んだ自分の選択が後に大きな分岐になることを、当時のケントは知る由もなかった。
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