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377.転売屋は真実を話す
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気付いたら見慣れた天井が目に飛び込んできた。
どうやらここは家らしい。
えぇっと、いったい何があった?
確かオリンピア様が帰る前にイライザさんの店で飯食ってて、それで・・・。
おぼろげに記憶が戻ってくるが、ある一定の場所まで行くと薄れて消えてしまう。
いや、薄れるというかブツッて切れる。
まるでフィルムの切れた映画のようだ。
確か美味い酒を・・・そうだ!
違う名前だったと思うけど味はまさに日本酒だった。
それをしこたま飲んだ記憶はあるんだが・・・。
うーむ。
吐き気はない。
どうやら二日酔いは回避したようだ。
いや、もしかするとアネットの薬を飲んだのかもしれない。
あれさえ飲めばどんなきつい二日酔いも一発で治るからなぁ。
前の世界で出したら即売れするだろう。
いやいや、まずそういうのを出されちゃ困る勢力につぶされるかな。
金儲けは慎重にするべきだ。
ベッドから降りて大きく伸びをする。
寝汗をかいたからだろうか、全身べとべとだ。
とりあえずシャワーを浴びてっと・・・。
「あ、シロウ様。」
「おはようミラ、結局昨日はどうなったんだ?」
「・・・覚えてらっしゃらないんですか?」
「エリザと一緒に強い酒を飲んだのは覚えてるんだが、気付いたら家にいた。エリザが背負うかなんかして連れて帰ってくれたんだろう。いや~つぶれるまで飲むなんて久々だわ。とりあえず風呂にするからって、今何時だ?」
「まだ開店前です。」
「そうか、なら朝食も頼む。アネットの薬があるとはいえ、昨日食べ過ぎたし軽めで頼む。」
「かしこまりました。」
なんとなくミラの視線がいつもと違ったように見えたが気のせいだろう。
とりあえずまずはさっぱりしたい。
誰かが入った後なのか、良い感じにあったまった風呂に浸かり、軽く汗を流す。
はぁ、朝風呂最高。
さっぱりした後は全部着替えて、軽い足取りで下に降りる。
「おはようさん。」
「あ、おはようございます。」
「おはよう。」
「なんだなんだ、随分と難しい顔してるな。二日酔いか?」
「そんなんじゃないわよ。」
下に降りるとエリザとアネットが暗い顔をしていた。
二日酔いじゃないとなると、女性特有のアレだろうか。
周期的にはまだだったと記憶してるが・・・。
「ん?」
「あ、いえ、なんでもありません。」
「ならいいんだが。」
アネットが何とも言えない顔で俺を見てくる。
エリザもだ。
不機嫌な感じながらチラチラこちらを見てくる。
ミラは俺に頼まれた飯を作ってくれているので顔は見えないが、いつも通りだ。
ふむ、何だろうか。
「あ~、もしかしてあれか?」
「何よ。」
「流石の俺も飲みすぎて吐いたか?そりゃ悪いことしたな、あと始末させて。」
「別に吐いてないわよ。」
「それじゃあ重かったか?」
「アンタ一人なんてことないわ。」
ふむ、返事はするが機嫌は悪い。
こりゃ触らぬ神に祟りはないな。
あんまり触れないでおくか。
「シロウ様、お待たせしました。」
「お、ありがとう。」
ミラがいつものように料理を持ってきてくれたのでエリザを放置して席に着く。
軽くといったのでサラダとベーコン的なのを薄く切って焼いてくれたようだ。
油がよく落ちてカリカリになっている。
「いただきますっと。」
手を合わせてベーコンを口に入れる。
ペッパーの刺激と共に甘さが一気に口いっぱいに広がって・・・って甘さ!?
「むぅ。」
「どうしました?」
「今日の味付けはなかなか前衛的だな。」
「え?」
「塩と砂糖を間違えるなんて珍しいじゃないか。あれか、ミラも二日酔いか。」
「申し訳ありません!すぐに変わりのものを・・・。」
「いや、別に食えるから気にするな。」
そのまま野菜と一緒に食べれば特に問題ない。
モリモリと野菜の山を崩していると、正面に座っていたアネットが神妙な顔で俺を見ていた。
「どうしたんだ、アネット。」
「あの、ご主人様昨日の事なんですが。」
「昨日?あぁ、イライザさんの店で飲みすぎた件か。悪かったな、迷惑かけて。」
「いえ、そうじゃなくて・・・。」
「アネット、言いにくいなら私が言うわ。」
そういうや否や、エリザがアネットの右横に座り物凄い顔で俺をにらんでくる。
「異世界に来たってどういうこと?」
思わず食べていた野菜を吐き出しそうになった。
心臓がドクドクと急に高鳴り、息が苦しくなる。
何故だ、何故知ってる。
今まで一度もそんなことは・・・。
そこで気付いた。
そうか、昨日か。
記憶にはないが、飲みすぎた後に吐き出してしまったんだろう。
ゲロじゃなく、思いの丈を。
最近隠してるのがしんどくなってたのもあるんだが、それに加えて例の一件が拍車をかけたんだろう。
酔うと人は本音を吐き出すという。
まさに思い悩んでいたものを、酔いに任せて全部吐き出したのかもしれない。
まぁ、いい機会かもしれないな。
同じく神妙な顔をしたミラがアネットの横に立つ。
なんだよ、そんな不安そうな顔するなよ。
「あー、うん。昨日俺が言ったか?」
「アンタ以外にいるはずないじゃない。」
「覚えてなくて悪いんだが、何言ってた?」
「自分は異世界から来たんだ・・・と。」
「神様の掌で転がされてるとも仰っていました。」
「今までの自分は全部仕組まれていた、スキルだってそのために用意されたんだと。」
あー、そこまでゲロってましたか。
いや、胃の中身じゃなくて情報をね。
「ねぇ、本当なの?酔っぱらった戯言じゃないの?」
「教えてくださいシロウ様。」
「今まで苦しかったんでしょ、だって泣きながら言ってたもの。」
まじかよ、泣きながらゲロったのかよ。
恥ずかしいなぁ。
「申し訳ありませんシロウ様、私たちはそれに気付けませんでした。」
「その辺は俺の問題だ、気にするな。」
「じゃあ認めるのね。」
「あぁ、認める。」
「はぁ・・・。普通とは違うと思ってたけど、まさか異世界だなんて。」
「信じるのか?」
「だって認めたでしょ。こういう場面で嘘言うような男じゃないもの、アンタは。」
「よくご存じで。」
「教えなさい、アンタが本当は何者でどうやってここに来たのか。」
「教えて下さいご主人様。」
「たとえご主人様がそうだとしても私達はどこにもいきません、ずっと一緒にいます。だから教えてください。」
そこまで言われちゃ言わないわけにいかないよなぁ。
まったく、良い女だよお前たちは。
ミラを俺の横に座らせて、俺は全てを話した。
本当の自分について。
この世界にどうやってきたのか。
そしてどんなスキルを持っているのか。
最後に、例の男と神様の会話についても。
全部話し終え、俺は大きく息を吐く。
が、気持ちはとても軽かった。
まるで胸の奥に仕えていた何かがきれいさっぱり取り払われたような感じだ。
そんな俺と対照的に、女たちは非常に暗い顔をしている。
いや、アネットは泣いてるしエリザも目を真っ赤にして今にも泣きそうだ。
ミラは俺の横で俺の手を握ったままじっと下を向いている。
あ~、全部終わったんだが?
「話は以上だ。これ以上隠してることは何もない、後はみんなの知ってる通りだ。」
そう言っても三人からの反応はない。
参ったね。
さて、どうしたもんか。
そう思案していると、ミラがゆっくりと顔を上げた。
その顔はなんていうか、決意に満ちた顔だった。
「わかりました。」
「ミラ?」
「ミラ様?」
「過去がどうであれ、シロウ様はシロウ様です。私たちの愛したシロウ様が変わったわけではありません。そういうことですね。」
「まぁ、そうだな。」
「でもまさか40歳だなんて思わなかったわ。年下の割に妙に大人びてると思ったら、そういうからくりだったのね。」
「年上は嫌いか?」
「そんなことありません!それに今のご主人様はとっても若くてかっこいいです!」
アネットが涙でいっぱいの顔でフォローしてくれる。
まったく、ひどい顔だなぁ。
俺は手を伸ばして涙をぬぐってやると、嬉しそうにその手をつかみ自分の頬に押し当てた。
「たとえ40歳でも好きになってました。」
「そりゃ有難い話だ。」
「わ、私だってそうよ。」
「無理しなくていいんだぞ。」
「無理なんてしてないわ!元々、年上の方が好きだし。」
「へぇ、意外だな。」
「なんで意外なのよ。」
「なんていうか、出来る女に見せたくて年下ばっかりに手を出してそうだからさ。」
「ちょっと、言っていいことと悪いことがあるわよ。」
「だから悪かったって。」
アネットの頬に触れていた手をエリザが力いっぱい掴んでくる。
痛い、まじで痛いって。
「シロウ様が値付けで失敗しない理由がやっとわかりました。」
「俺も凄いスキルだと思う。どういう原理かはわからないが、おかげでここまでやってこれた。」
「それさえあれば売り間違えることがないのね。」
「あぁ、確実に安く買えるし真贋もわかるみたいだ。」
「便利ねぇ。」
「でも、そのおかげで私達はご主人様に買って頂けたわけですから。」
「アネットさんの言う通りです。感謝しなければなりません。」
「でも誰にも言っちゃだめよ。」
「言わねぇよ。言ったらこき使われるにきまってるしな。」
それで済めばいいけけど、実際はもっとひどいことになるだろう。
三人は絶対に黙ってくれるだろうけど、問題は他にもあるんだよなぁ。
「だがなぁ、あの場には他にもいたわけだろ?」
「あ、そういえばそうだった。」
「どうしましょう!」
「大丈夫だと思いますよ?」
一瞬でパニックになりかけた俺達だが、ミラは至極冷静にそう言い放った。
「何故だ?」
「あの場にいた皆さんは全員シロウ様の事が大好きですから。絶対に秘密を洩らしません。」
「マリーさんやアニエスさんはともかく、オリンピア様やイライザさんもか?」
「その通りです。」
「じゃあミラは秘密にしなくていいっていうの?」
「いえ、秘密にはするべきですが問題ない人には話をするべきです。そうですね、ハーシェ様には伝えても問題ないかと。」
秘密を共有する方が都合がいい。
ミラはそう言っているんだろう。
別にバラされて困ることはないが、線引きは難しいな。
「基準は・・・シロウに抱かれているかね。」
「いや、マリーさんたちには手を出してないぞ。」
「時間の問題でしょ。」
「お前なぁ。」
「事実じゃない。」
「さすがにオリンピア様には手を出さん。いや、まじで後が怖い。」
「マリー様はよろしいのですか?」
「いや、良いか悪いかの問題じゃなくてだなぁ。」
その辺はもう少しお互いを知りあって・・・ってか、その流れだと他にも言う人がいるんだが?
「シロウ様の事を信じているならば漏らすはずがありません。仮にそうなったら舌を噛んで死にます。」
「いや、死ぬなよ。」
「それぐらいの気持ちでいるんです。」
「そうです。だから安心してくださいね。」
「何を安心するはわからんが・・・。まぁ、ありがとな。」
「なによ、すっきりした顔しちゃってさ。」
「事実すっきりしたんだよ。」
なんかもう快晴って感じだ。
「もう隠し事はしないでよね。」
「わかったって。」
「信じてるから。だから、私たちの事も信じて。」
「私達は絶対にシロウ様を裏切りません。嫌いになりません。」
「たとえシロウ様がどんな人でも、大丈夫です。」
「嬉しいでしょ、こんなに女に尽くされて。」
「あぁ、嬉しくて涙が出そうだ。」
「嘘ばっかり。」
よ~し、嘘じゃないって教えてやろうじゃないか。
手始めに横にいたミラの顔をつかみ、熱烈なキスをしてやる。
最初は驚いた顔をしたがすぐにとろけた顔で舌を絡ませてきた。
唇を離すと唾液が橋を架けている。
「次アネットな。」
「え、あ、はい!」
「エリザ逃げるなよ。」
「にに、逃げるわけないでしょ!」
とか言いながら顔を真っ赤にしてるくせに。
この中じゃ一番そういうことにウブだよなぁお前は。
その後二人にも返事代わりのキスをしてしっかりと抱き合う。
これからもよろしくな。
そういう気持ちで強く抱きしめた。
どうやらここは家らしい。
えぇっと、いったい何があった?
確かオリンピア様が帰る前にイライザさんの店で飯食ってて、それで・・・。
おぼろげに記憶が戻ってくるが、ある一定の場所まで行くと薄れて消えてしまう。
いや、薄れるというかブツッて切れる。
まるでフィルムの切れた映画のようだ。
確か美味い酒を・・・そうだ!
違う名前だったと思うけど味はまさに日本酒だった。
それをしこたま飲んだ記憶はあるんだが・・・。
うーむ。
吐き気はない。
どうやら二日酔いは回避したようだ。
いや、もしかするとアネットの薬を飲んだのかもしれない。
あれさえ飲めばどんなきつい二日酔いも一発で治るからなぁ。
前の世界で出したら即売れするだろう。
いやいや、まずそういうのを出されちゃ困る勢力につぶされるかな。
金儲けは慎重にするべきだ。
ベッドから降りて大きく伸びをする。
寝汗をかいたからだろうか、全身べとべとだ。
とりあえずシャワーを浴びてっと・・・。
「あ、シロウ様。」
「おはようミラ、結局昨日はどうなったんだ?」
「・・・覚えてらっしゃらないんですか?」
「エリザと一緒に強い酒を飲んだのは覚えてるんだが、気付いたら家にいた。エリザが背負うかなんかして連れて帰ってくれたんだろう。いや~つぶれるまで飲むなんて久々だわ。とりあえず風呂にするからって、今何時だ?」
「まだ開店前です。」
「そうか、なら朝食も頼む。アネットの薬があるとはいえ、昨日食べ過ぎたし軽めで頼む。」
「かしこまりました。」
なんとなくミラの視線がいつもと違ったように見えたが気のせいだろう。
とりあえずまずはさっぱりしたい。
誰かが入った後なのか、良い感じにあったまった風呂に浸かり、軽く汗を流す。
はぁ、朝風呂最高。
さっぱりした後は全部着替えて、軽い足取りで下に降りる。
「おはようさん。」
「あ、おはようございます。」
「おはよう。」
「なんだなんだ、随分と難しい顔してるな。二日酔いか?」
「そんなんじゃないわよ。」
下に降りるとエリザとアネットが暗い顔をしていた。
二日酔いじゃないとなると、女性特有のアレだろうか。
周期的にはまだだったと記憶してるが・・・。
「ん?」
「あ、いえ、なんでもありません。」
「ならいいんだが。」
アネットが何とも言えない顔で俺を見てくる。
エリザもだ。
不機嫌な感じながらチラチラこちらを見てくる。
ミラは俺に頼まれた飯を作ってくれているので顔は見えないが、いつも通りだ。
ふむ、何だろうか。
「あ~、もしかしてあれか?」
「何よ。」
「流石の俺も飲みすぎて吐いたか?そりゃ悪いことしたな、あと始末させて。」
「別に吐いてないわよ。」
「それじゃあ重かったか?」
「アンタ一人なんてことないわ。」
ふむ、返事はするが機嫌は悪い。
こりゃ触らぬ神に祟りはないな。
あんまり触れないでおくか。
「シロウ様、お待たせしました。」
「お、ありがとう。」
ミラがいつものように料理を持ってきてくれたのでエリザを放置して席に着く。
軽くといったのでサラダとベーコン的なのを薄く切って焼いてくれたようだ。
油がよく落ちてカリカリになっている。
「いただきますっと。」
手を合わせてベーコンを口に入れる。
ペッパーの刺激と共に甘さが一気に口いっぱいに広がって・・・って甘さ!?
「むぅ。」
「どうしました?」
「今日の味付けはなかなか前衛的だな。」
「え?」
「塩と砂糖を間違えるなんて珍しいじゃないか。あれか、ミラも二日酔いか。」
「申し訳ありません!すぐに変わりのものを・・・。」
「いや、別に食えるから気にするな。」
そのまま野菜と一緒に食べれば特に問題ない。
モリモリと野菜の山を崩していると、正面に座っていたアネットが神妙な顔で俺を見ていた。
「どうしたんだ、アネット。」
「あの、ご主人様昨日の事なんですが。」
「昨日?あぁ、イライザさんの店で飲みすぎた件か。悪かったな、迷惑かけて。」
「いえ、そうじゃなくて・・・。」
「アネット、言いにくいなら私が言うわ。」
そういうや否や、エリザがアネットの右横に座り物凄い顔で俺をにらんでくる。
「異世界に来たってどういうこと?」
思わず食べていた野菜を吐き出しそうになった。
心臓がドクドクと急に高鳴り、息が苦しくなる。
何故だ、何故知ってる。
今まで一度もそんなことは・・・。
そこで気付いた。
そうか、昨日か。
記憶にはないが、飲みすぎた後に吐き出してしまったんだろう。
ゲロじゃなく、思いの丈を。
最近隠してるのがしんどくなってたのもあるんだが、それに加えて例の一件が拍車をかけたんだろう。
酔うと人は本音を吐き出すという。
まさに思い悩んでいたものを、酔いに任せて全部吐き出したのかもしれない。
まぁ、いい機会かもしれないな。
同じく神妙な顔をしたミラがアネットの横に立つ。
なんだよ、そんな不安そうな顔するなよ。
「あー、うん。昨日俺が言ったか?」
「アンタ以外にいるはずないじゃない。」
「覚えてなくて悪いんだが、何言ってた?」
「自分は異世界から来たんだ・・・と。」
「神様の掌で転がされてるとも仰っていました。」
「今までの自分は全部仕組まれていた、スキルだってそのために用意されたんだと。」
あー、そこまでゲロってましたか。
いや、胃の中身じゃなくて情報をね。
「ねぇ、本当なの?酔っぱらった戯言じゃないの?」
「教えてくださいシロウ様。」
「今まで苦しかったんでしょ、だって泣きながら言ってたもの。」
まじかよ、泣きながらゲロったのかよ。
恥ずかしいなぁ。
「申し訳ありませんシロウ様、私たちはそれに気付けませんでした。」
「その辺は俺の問題だ、気にするな。」
「じゃあ認めるのね。」
「あぁ、認める。」
「はぁ・・・。普通とは違うと思ってたけど、まさか異世界だなんて。」
「信じるのか?」
「だって認めたでしょ。こういう場面で嘘言うような男じゃないもの、アンタは。」
「よくご存じで。」
「教えなさい、アンタが本当は何者でどうやってここに来たのか。」
「教えて下さいご主人様。」
「たとえご主人様がそうだとしても私達はどこにもいきません、ずっと一緒にいます。だから教えてください。」
そこまで言われちゃ言わないわけにいかないよなぁ。
まったく、良い女だよお前たちは。
ミラを俺の横に座らせて、俺は全てを話した。
本当の自分について。
この世界にどうやってきたのか。
そしてどんなスキルを持っているのか。
最後に、例の男と神様の会話についても。
全部話し終え、俺は大きく息を吐く。
が、気持ちはとても軽かった。
まるで胸の奥に仕えていた何かがきれいさっぱり取り払われたような感じだ。
そんな俺と対照的に、女たちは非常に暗い顔をしている。
いや、アネットは泣いてるしエリザも目を真っ赤にして今にも泣きそうだ。
ミラは俺の横で俺の手を握ったままじっと下を向いている。
あ~、全部終わったんだが?
「話は以上だ。これ以上隠してることは何もない、後はみんなの知ってる通りだ。」
そう言っても三人からの反応はない。
参ったね。
さて、どうしたもんか。
そう思案していると、ミラがゆっくりと顔を上げた。
その顔はなんていうか、決意に満ちた顔だった。
「わかりました。」
「ミラ?」
「ミラ様?」
「過去がどうであれ、シロウ様はシロウ様です。私たちの愛したシロウ様が変わったわけではありません。そういうことですね。」
「まぁ、そうだな。」
「でもまさか40歳だなんて思わなかったわ。年下の割に妙に大人びてると思ったら、そういうからくりだったのね。」
「年上は嫌いか?」
「そんなことありません!それに今のご主人様はとっても若くてかっこいいです!」
アネットが涙でいっぱいの顔でフォローしてくれる。
まったく、ひどい顔だなぁ。
俺は手を伸ばして涙をぬぐってやると、嬉しそうにその手をつかみ自分の頬に押し当てた。
「たとえ40歳でも好きになってました。」
「そりゃ有難い話だ。」
「わ、私だってそうよ。」
「無理しなくていいんだぞ。」
「無理なんてしてないわ!元々、年上の方が好きだし。」
「へぇ、意外だな。」
「なんで意外なのよ。」
「なんていうか、出来る女に見せたくて年下ばっかりに手を出してそうだからさ。」
「ちょっと、言っていいことと悪いことがあるわよ。」
「だから悪かったって。」
アネットの頬に触れていた手をエリザが力いっぱい掴んでくる。
痛い、まじで痛いって。
「シロウ様が値付けで失敗しない理由がやっとわかりました。」
「俺も凄いスキルだと思う。どういう原理かはわからないが、おかげでここまでやってこれた。」
「それさえあれば売り間違えることがないのね。」
「あぁ、確実に安く買えるし真贋もわかるみたいだ。」
「便利ねぇ。」
「でも、そのおかげで私達はご主人様に買って頂けたわけですから。」
「アネットさんの言う通りです。感謝しなければなりません。」
「でも誰にも言っちゃだめよ。」
「言わねぇよ。言ったらこき使われるにきまってるしな。」
それで済めばいいけけど、実際はもっとひどいことになるだろう。
三人は絶対に黙ってくれるだろうけど、問題は他にもあるんだよなぁ。
「だがなぁ、あの場には他にもいたわけだろ?」
「あ、そういえばそうだった。」
「どうしましょう!」
「大丈夫だと思いますよ?」
一瞬でパニックになりかけた俺達だが、ミラは至極冷静にそう言い放った。
「何故だ?」
「あの場にいた皆さんは全員シロウ様の事が大好きですから。絶対に秘密を洩らしません。」
「マリーさんやアニエスさんはともかく、オリンピア様やイライザさんもか?」
「その通りです。」
「じゃあミラは秘密にしなくていいっていうの?」
「いえ、秘密にはするべきですが問題ない人には話をするべきです。そうですね、ハーシェ様には伝えても問題ないかと。」
秘密を共有する方が都合がいい。
ミラはそう言っているんだろう。
別にバラされて困ることはないが、線引きは難しいな。
「基準は・・・シロウに抱かれているかね。」
「いや、マリーさんたちには手を出してないぞ。」
「時間の問題でしょ。」
「お前なぁ。」
「事実じゃない。」
「さすがにオリンピア様には手を出さん。いや、まじで後が怖い。」
「マリー様はよろしいのですか?」
「いや、良いか悪いかの問題じゃなくてだなぁ。」
その辺はもう少しお互いを知りあって・・・ってか、その流れだと他にも言う人がいるんだが?
「シロウ様の事を信じているならば漏らすはずがありません。仮にそうなったら舌を噛んで死にます。」
「いや、死ぬなよ。」
「それぐらいの気持ちでいるんです。」
「そうです。だから安心してくださいね。」
「何を安心するはわからんが・・・。まぁ、ありがとな。」
「なによ、すっきりした顔しちゃってさ。」
「事実すっきりしたんだよ。」
なんかもう快晴って感じだ。
「もう隠し事はしないでよね。」
「わかったって。」
「信じてるから。だから、私たちの事も信じて。」
「私達は絶対にシロウ様を裏切りません。嫌いになりません。」
「たとえシロウ様がどんな人でも、大丈夫です。」
「嬉しいでしょ、こんなに女に尽くされて。」
「あぁ、嬉しくて涙が出そうだ。」
「嘘ばっかり。」
よ~し、嘘じゃないって教えてやろうじゃないか。
手始めに横にいたミラの顔をつかみ、熱烈なキスをしてやる。
最初は驚いた顔をしたがすぐにとろけた顔で舌を絡ませてきた。
唇を離すと唾液が橋を架けている。
「次アネットな。」
「え、あ、はい!」
「エリザ逃げるなよ。」
「にに、逃げるわけないでしょ!」
とか言いながら顔を真っ赤にしてるくせに。
この中じゃ一番そういうことにウブだよなぁお前は。
その後二人にも返事代わりのキスをしてしっかりと抱き合う。
これからもよろしくな。
そういう気持ちで強く抱きしめた。
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仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
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