簡単にすらすらと神様を語る人を私は信用致しません

バオバブの実

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平穏な生活

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 大きなことが起こりすぎて私は2、3日ぼーっと過ごした。キリアンたちも訪ねて来なかった。

 お父様とヴァイオレット姉様は今回の件を聞いて領民の健康や生活面を調査している。
 お母様は自由に動けるのは私だけだからとサロンを開いたり、街へボランティアに出かけたりして情報収集に勤しんでいる。

 つまり私だけ何もしていないのだ。

「部屋にこもってばかりではダメ!
 ねぇ、いっしょにお祖母様のところに行かない?ミカエラも行くって言ってるし」
 せっかくのお誘いだし、ヴァイオレット姉様とともにお祖母様のところにお見舞いに行くことにした。

 馬車が門をくぐる。花園の中にあったあの白いガゼボは跡形もなかった。

 屋敷全体が何だか暗い感じがした。
 2階のお祖母様の部屋へ行く。
「ララ!会いたかった!」
 2階にはもうミカエラお姉様が来ていた。急に飛びつかれ手荒い歓迎を受けた。
「いらっしゃい、ふたりとも」
 お祖母様はにこにこしていた。今日は調子が良いのだそうだ。
 とはいえベッドから出られないらしい。この前は歩いていたのに。
「あっ、美味しそうなクッキー!」
「いただきまーす」
 サイドテーブルに置いてあるクッキーが目に入ったのでふたりで手をのばすと
 パチッ!
 ミカエラ姉様に手を叩かれた。
「ふたりとも、手、洗ってないでしょ?外へ!
 早く!」
 と、ドアの外に追いやられてしまった。
「ふたりとも、あのクッキーは薬草が練り込んである言わば薬なの。お祖母様の薬だから食べちゃだめ」
 ミカエラ姉様は声をひそめて言った。
「えっ!そうなの?」
 ヴァイオレット姉様の声が大きかったのでミカエラ姉様があわてて人差し指を口にあてしっ!と言った。
「我がモリー植物研究所の力作よ。街中の具合の悪い人からアンケートもらったの。それを元にクッキーを作ったのよ」
 ミカエラ姉様は得意気に言った。
「我々は聖水が怪しいと睨んでいるの。でも手に入らないんでなんの成分がわからないのよねぇ。わかればもっと効き目のあるものを作れるんだけど。それでアンケートなんてまどろっこしい手を使ったわけ」
 私たちは顔を見合わせた。
「一体政府は何をしているのかしら?国王は見て見ぬフリをしている。私たちだって馬鹿じゃないわ。神殿がおかしいことくらい…」
 ヴァイオレット姉様が強くうなづいたので、私はルーメン枢機卿と私の能力は伏せてレオンハート様がこの件で動いていることを説明した。
「ばっかじゃないかしら!なんで公にしないの?神殿のやつらなんて捕まえちゃえばいいのに」
 ミカエラ姉様の第一声がこれだった。さすがです。
「我が植物研究所は信用がないのよ。クッキーだって最初は粉薬だったんだけど信用されないからみんな飲まないの。
 それでお菓子ならってことで作ったらやっとみんな口にしてくれたのよ。
 今ならちゃんと行き渡るわ。だから効き目のあるものを作りたい」
 私はレオンハート様を紹介することを約束した。
「お祖母様もみんなも…よくなるといいわね」
 ヴァイオレット姉様が私とミカエラ姉様の肩を叩きながら言った。
 私はきっと大丈夫と思った。
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