簡単にすらすらと神様を語る人を私は信用致しません

バオバブの実

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国王陛下の話

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 久しぶりの三姉妹とお祖母様で楽しいひとときを過ごした。
 楽しい気分で帰ってきたのにお父様の一言で何だかどんよりしてしまった。
「国王陛下がおまえに会いたいそうだよ」
 帰って来るなりお父様に呼ばれ書斎にいった。
「えっ、」
「例の件だそうだから非公式でということだ。それで…ってそんな嫌そうな顔するな」
 なんか面倒なことになりそうだと思っていたら顔に出ていたらしい。
「それで王宮に行けばアンディ殿が案内してくれるそうだ」
「いつです?」
「明日だ」
「!」


 次の日私は王宮に出向いた。
 アンディと長い廊下を歩く。
「はあ、なんか緊張する。私なんかが来て大丈夫かしら?」
 やっぱり国王陛下にお会いするのは荷が重い。
「ははっ大丈夫さ。時の見届け人は国の重要人物だからね」
 そう言っているうちにこじんまりしたかわいい装飾の部屋に通された。
「非公式だから謁見の間じゃないんだ、ごめんね」
 アンディは頭を掻き掻き
「今はね該当者がいないけど王女の控えの間だったらしいよ」
 かわいいでしょと付け加えた。

 待っているとレオンハート様の案内で国王が部屋に入って来られた。
 私はあわててカテーシーをした。
「よい、公ではないから」
 と、国王は手をあげた。
「マルグリット・ララ・ロレンス、よく来てくれた。時の見届け人の件、大変だろうがよろしく頼むぞ」
「もったいなきお言葉、ありがとうございます。何ができるかわかりませんが、精一杯努めます」
 頼まれたら私はもうこう言うしかない…

「まあ、個人的には『ご愁傷様』と言いたいところだよ。面倒だろう?」
 国王陛下は笑っている。
 ええ、と言ってしまいそうだ。

「さて、情報開示が遅くなってすまない。ここからは3人の秘密だ」
 国王の言葉におやっと思うといつのまにかアンディも国王のお付きの人も退室していた。心得ているのだろう。
 部屋の中は国王、レオンハート様、私の3人だった。
 国王陛下は何もない壁に向かって何やらごそごそしていると
 ガチャ
 壁が開いた!隠し扉になっていたのだ!
「さっ、2人とも中へ」
 中へ入ると下に続く長い階段があった。
 階段を降りると開けた空間に出た。灯りをつけると本や書類でいっぱいだ。秘密の書斎といったところか。
「あの部屋は私の大叔母にあたるルクレチア王女が使っていたものだ。そして彼女は『時の見届け人』でもある」
「!」
「あの部屋から隠し扉を通じてこの秘密の間でいろいろな資料を見たり調べたりしていたのだ。ここの本や書類は時を止める者と見届け人の情報が詰まっている」
「かなり昔の資料もあるんですね」
 レオンハート様が本を手に取って読んでいた。彼も初めてここに来たらしい。
「『時を止める力を持つ者は神殿の関係者が多い。神殿に関わって力を得るのか、力を持った者が神殿に引き寄せられるのかは不明である』だそうですよ」
 レオンハート様が一節を読んだ。
「それこそが国教にしない理由だ。その力が悪しきことに使われたら国がどうなってしまうことか」
 国王陛下は深くため息をつかれた。
「そうだ、例の手枷の件も書いてあるぞ」
 そう言って陛下は書類や手紙の束を渡した。
「ここら辺はまとめるのに大変だったらしく、まだ書き殴ったままだ」
 なるほど雑然としている。
 その中で手紙のひとつが目に入った。
「術者の手首にはめる?力が使えなくなる?」
「へえ?あれにはそんな効果が?」
 レオンハート様が唸った。
「はめるってそんなこと簡単にできないですよ」
 私の役なんだろうか?

「あの、ルーメン枢機卿は見届け人の存在を知っていますか?」
 わたしは気になっていたことを聞いた。
「そこが何とも…我々としても存在を気取られぬよう見届け人が確定した時点でこの秘密の間にその者を案内している。情報も開示している。だがそれ故に犠牲者が出てしまった。ソル・リーブスのことは残念だったな」

 …また思い出してしまった…


 あれ?そういえばルーメン枢機卿はあの時私を見た。しかも驚いて。
 見届け人の存在を知っていてもまたは知らなくても私とは特定できていないはずでは…
 でも私を見た。他の人との違いは…

 そうか!目だ!
 体も動かない、声も出せない、でも私の目だけは動いているんだわ!
 あの時ルーメン枢機卿は浴びることがない視線を感じて驚いたんだ!

「どうしたの?」
 レオンハート様の声に我に返って今思い至った仮説をふたりに話した。
「それは…」
「まずいのう」
「気付かれた可能性がある。ララ、これからはきみに護衛をつけるよ」


 外に出て帰ろうとするとレオンハート様が会わせたい人がいるからと庭園に案内された。
 花園の中に佇んでいたのは
「マルグリット様、お久しゅうございます」
 セレンティア様だ!
 レオンハート様の元婚約者、セレンティア・フォン・ダルトン公爵令嬢がそこにいた。
 学年も身分も違うが私たちは面識はあった。
「セレンティア様、お久しゅうございます。なぜここに?」
「学園卒業後、王宮で働いて・・・おります」
「働く?公爵令嬢のあなたが?」
「王宮の一部を開放して療養施設が建てられたのです。聖水によって心と体を傷つけられた人の治療と療養を目的としています。働くといっても私はそこでいろいろとお手伝いをしているだけですわ」
 あっ!聖水と聞いて思い出した。
 私はふたりにミカエラ姉様と植物研究所とクッキーの話をした。
「素晴らしいことですわ!」
 セレンティア様が珍しく興奮していた。
「秘密主義にしすぎもよくなかったかな?
 早速植物研究所と共同で仕事ができるよう計らうよ」
 よかった!これでみんなが救われる。

 セレンティア様とは名残惜しかったが私は帰る時間となった。
 レオンハート様は別れ際
「これで私の誤解も解けたでしょ?彼女とは良好だよ」
 と言っていた。
 なるほど、それが目的。

 私はふたりにお別れを言って帰途についた。
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