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戦いの後で
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国を揺るがせた陰謀はレオンハート様の働きで白日の下にさらされた。
もちろんルーメン枢機卿が黒幕であることも。
民衆は驚愕した。神殿を恨む者もいた。
結局、神は降臨しなかった。
でもルーメン枢機卿が雷に打たれて死んだのを見て、やはり神は姿は見えないがあの日あの時降臨したのではないか、ルーメンに怒りの鉄槌を与えたのではないか、という話で持ちきりになった。
そしてケイレブは悪を暴きルーメンと対峙して命を落としたということになった。
槍に貫かれ死んだ姿はちょうど膝をついて祈るような格好になった。最後に我々を思って祈ったのだと。
かくして“ケール司祭”は“聖人ケール”と呼ばれるようになった。
「聖人ケールなんて、あなたはなりたくもないでしょうに」
私はそう呟くとひとり窓の外に目をやった。
バークレー商会事務所から見える街の景色はようやく落ち着きを取り戻していた。
私はキリアンに呼び出されていつもの応接室で待っていた。久しぶりの外出であった。
ガチャ
キリアンが入ってきた。
「急に呼び出してごめん。会わせたい人がいて…もう最後になるかもしれないから」
「…そう」
「大丈夫か?」
「…」
あの日のことは正直覚えていない。
雨の中、私は半狂乱だったらしい。キリアンに押さえつけるように抱きしめられ、その後は放心状態になったそうだ。
コンコン!
入ってきたのはソリス船長だった。そして…
「エレニ⁈」
もうひとりはエレニだった。
「お久しぶりです。ララ様」
「エレニ、時間がない。隣の部屋に用意してあるから着替えてくれる?」
「はい」
キリアンに促され、エレニが出ていくと
「エレニは今狙われているんだ」
と小声で言った。
「どういうこと?」
「エレニはもう一度聖女にしてティラーン教を盛り立てようという一派と単純に恨みで殺そうとする一派に狙われている」
「そんな」
エレニだって犠牲者なのに。
「この国から逃がそうと思うんだ」
「そこでソリス船長なのね」
「そう、一番信用できるから。安全などこか遠い国に送ってもらう」
ガチャ
エレニが入ってきた。船乗りの格好をしている。
「変装?ってこと?」
私が聞くと
「ええ、でもまだ足りないわ。船長、短剣を貸して」
「?」
船長が持っていた短剣を貸すと
エレニは自分の長い髪の毛を持ってザクッと切り落としてしまった。
「ええ?」
エレニは躊躇なく短く整えてゆく。
「エレニ、やりすぎよ!」
私が叫んで止めようとすると
「ララ様、エレニじゃないわ。今日から私は船乗りのレン」
エレニ、いやレンは笑って見せた。
「私、多くの人にいろいろ迷惑かけてしまった。結果的には人を騙すことになって。
心も体も傷ついた人がいることも聞いた。
自分が生きていたらいけないんじゃないかとさえ思ったわ。
でもララ様の言葉を思い出したの。
ソルが私に自由にのびのび生きてほしいと思っていたって。
…だから図々しいけど生き延びようと思います」
私はレンを抱きしめた。
「そうよ!あなたは幸せになっていいの!」
「ありがとう、ララ様」
「そろそろ行かないと」
ソリス船長が申し訳なさそうに言った。
「はい、よろしくお願いします。船長」
「ララ様にどうしてもお伝えしたいことが」
船に向かいながらレンは私だけに言った。
「あの時、ケールはまだ少し息があったの。
最後の言葉を残した」
「えっ?」
「『ララ、あの試合は無効だよ』と。確かに伝えましたよ」
ふたりは素早く船に乗り込み私とキリアンに手を振った。
船は出航した。
『ララ、あの試合は無効だよ』
私はその言葉を噛み締めた。
涙が頬を伝った。
繰り返し言われたその言葉、それはある言葉の代わりなのね…
私には言葉通りの意味しかわからなかった。
そうじゃなかった。
ケイレブ、あなたはいつも思っていてくれたのね。
だけど私はその言葉を聞きたかったのよ。
私に遠慮して、世間を気にして、言えなかった言葉「愛している」と。
あなたが死んでなにもかも失ったように思えた。
そうじゃなかった。
私にはこの思いが残った。
「バカね、最後まで…」
私はちゃんと言うね、遅かったかもしれないけど
「あなたを愛しています」
もちろんルーメン枢機卿が黒幕であることも。
民衆は驚愕した。神殿を恨む者もいた。
結局、神は降臨しなかった。
でもルーメン枢機卿が雷に打たれて死んだのを見て、やはり神は姿は見えないがあの日あの時降臨したのではないか、ルーメンに怒りの鉄槌を与えたのではないか、という話で持ちきりになった。
そしてケイレブは悪を暴きルーメンと対峙して命を落としたということになった。
槍に貫かれ死んだ姿はちょうど膝をついて祈るような格好になった。最後に我々を思って祈ったのだと。
かくして“ケール司祭”は“聖人ケール”と呼ばれるようになった。
「聖人ケールなんて、あなたはなりたくもないでしょうに」
私はそう呟くとひとり窓の外に目をやった。
バークレー商会事務所から見える街の景色はようやく落ち着きを取り戻していた。
私はキリアンに呼び出されていつもの応接室で待っていた。久しぶりの外出であった。
ガチャ
キリアンが入ってきた。
「急に呼び出してごめん。会わせたい人がいて…もう最後になるかもしれないから」
「…そう」
「大丈夫か?」
「…」
あの日のことは正直覚えていない。
雨の中、私は半狂乱だったらしい。キリアンに押さえつけるように抱きしめられ、その後は放心状態になったそうだ。
コンコン!
入ってきたのはソリス船長だった。そして…
「エレニ⁈」
もうひとりはエレニだった。
「お久しぶりです。ララ様」
「エレニ、時間がない。隣の部屋に用意してあるから着替えてくれる?」
「はい」
キリアンに促され、エレニが出ていくと
「エレニは今狙われているんだ」
と小声で言った。
「どういうこと?」
「エレニはもう一度聖女にしてティラーン教を盛り立てようという一派と単純に恨みで殺そうとする一派に狙われている」
「そんな」
エレニだって犠牲者なのに。
「この国から逃がそうと思うんだ」
「そこでソリス船長なのね」
「そう、一番信用できるから。安全などこか遠い国に送ってもらう」
ガチャ
エレニが入ってきた。船乗りの格好をしている。
「変装?ってこと?」
私が聞くと
「ええ、でもまだ足りないわ。船長、短剣を貸して」
「?」
船長が持っていた短剣を貸すと
エレニは自分の長い髪の毛を持ってザクッと切り落としてしまった。
「ええ?」
エレニは躊躇なく短く整えてゆく。
「エレニ、やりすぎよ!」
私が叫んで止めようとすると
「ララ様、エレニじゃないわ。今日から私は船乗りのレン」
エレニ、いやレンは笑って見せた。
「私、多くの人にいろいろ迷惑かけてしまった。結果的には人を騙すことになって。
心も体も傷ついた人がいることも聞いた。
自分が生きていたらいけないんじゃないかとさえ思ったわ。
でもララ様の言葉を思い出したの。
ソルが私に自由にのびのび生きてほしいと思っていたって。
…だから図々しいけど生き延びようと思います」
私はレンを抱きしめた。
「そうよ!あなたは幸せになっていいの!」
「ありがとう、ララ様」
「そろそろ行かないと」
ソリス船長が申し訳なさそうに言った。
「はい、よろしくお願いします。船長」
「ララ様にどうしてもお伝えしたいことが」
船に向かいながらレンは私だけに言った。
「あの時、ケールはまだ少し息があったの。
最後の言葉を残した」
「えっ?」
「『ララ、あの試合は無効だよ』と。確かに伝えましたよ」
ふたりは素早く船に乗り込み私とキリアンに手を振った。
船は出航した。
『ララ、あの試合は無効だよ』
私はその言葉を噛み締めた。
涙が頬を伝った。
繰り返し言われたその言葉、それはある言葉の代わりなのね…
私には言葉通りの意味しかわからなかった。
そうじゃなかった。
ケイレブ、あなたはいつも思っていてくれたのね。
だけど私はその言葉を聞きたかったのよ。
私に遠慮して、世間を気にして、言えなかった言葉「愛している」と。
あなたが死んでなにもかも失ったように思えた。
そうじゃなかった。
私にはこの思いが残った。
「バカね、最後まで…」
私はちゃんと言うね、遅かったかもしれないけど
「あなたを愛しています」
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