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波乱の卒業パーティー
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リーブス先生は新しい教育方法にも力を入れていた。その中でもみんなを夢中にさせたのが“ディベート”二手に分かれて与えられたテーマを異なる立場で議論する。勝敗は第三者が双方のメリットとデメリットを考え判断する。
定期的に大会も行われた。
ケイレブがいち早くコツを掴み無敵となった。
『ディベートの神』と言われるようになり、出る試合みな勝っていった。
残りはあと一大会。
私は一矢報いるべく仲間を集めた。キリアンもそのひとり。人気があるから票がこちらに流れるかもと邪な考えからだ。
そして激戦の末、私たちが勝利した。
ケイレブに土をつけたのである。
「あの試合は無効だよ」
「あの最後のディベートのこと?なんでよ?」
「ララの最終弁論、あれ、時間オーバーだよ」
「そんなことありません!」
頭にきた!
「オーディエンスだって良しとしたし、だいたい時間を見ていたリーブス先生だってギリギリだけどOKだって」
「あの時はみんな俺の一敗を切望していたからそんな流れになったんだ」
ふたりでプンプン怒ってダンスをやめてきたのでキリアンが目を丸くして
「仲直りダンスでより喧嘩するってどういうこと?」
と、驚いていた。
私がことの顛末を話すと
「まあまあまあまあ」
またグラスワインを持ってきてくれた。
「さっ、仲直りと。ララとはしばらく会えなくなるんだからさ」
そうだった。これじゃ後味が悪すぎる。
「…私は帝国に留学するけどふたりは?卒業後どうするの?」
「俺は実家のバークレー商会に就職する。親父の、いや、バークレー会頭の元で修行して商売のノウハウを学ぶよ。実践あるのみだ」
キリアンは国内でも有名なバークレー商会の跡取り息子なのだ。
「…俺は…神学校へ入学することになった…」
「え?」
「あなた、文官になるんじゃなかったの?」
ケイレブはちょっとムッとしながら答えた。
「文官の試験には合格したよ。ただ採用試験にはどうしても受からないんだ。どこも」
ケイレブの説明によるとこうだ。
今年の卒業生にはノストルム王国の第一王子レオンハート様がいらっしゃる。王子付きの文官になりたいとか王宮で働きたいとか文官の人気は鰻登り。特に貴族の令息がこぞって文官試験を受けた。採用はやはり貴族の令息から埋まっていく。例年だと何人かの平民が採用されたが今年は全く空きがなかった。
「理不尽だよ!全く!」
ケイレブは唇を噛んだ。
「…神学校ってあなた聖職者になるの?」
「いや、そういうのはもっと小さい頃からずっと通ってる人たちだ。
俺みたいなのはたとえば地方の文官になるとか、教職につくとか、王都に残りたければ大きな商家の事務職とかいろいろ就職の面倒を見てくれるらしいんだ。
2年通うことになると聞いている。
実はリーブス先生に相談したんだ。そうしたらそんな道もあると。来年また文官試験受けて採用試験受けてって大変だろ?2年あっても確実な方を選ぶよ。俺は金を稼いで故郷の村に送りたいんだ」
そういえばケイレブは地方の小さな村の出身でお父様が村長さんだと言っていたわ…
「なんだかヤな話だな」
キリアンがため息混じりに言った。
「貴族って言っても身分がいろいろあるだろう?平民もいろいろさ。たとえばキリアンは金も地位もある。でも俺は田舎者で貧乏な平民。
勉強していれば報われると思ったんだけどな」
なんだか重い話だ。かける言葉もみつからない。
その時
「ララ~」「みんな~」
「卒業おめでとう」
メアリーとフェリシアが声をかけてきた。ふたりは子爵令嬢であのディベートの時の戦友だ。
ふたりの明るい声は場を和ませた。
「ねぇ聞いた?
レオンハート殿下から何か発表があるみたいよ」
「えっなに?」
「さあ、結婚のことかしら?婚約者のセレンティア様が見えてたわ」
卒業生でなくても婚約者ならこのパーティーにパートナーとして参加できる。セレンティア様は確かアラータス学園の一年生だ。
「ほら、始まるわ」
「諸君、まずは卒業おめでとう。
私事ですまないが少し時間をくれるかな?
セレンティア嬢、前へ」
セレンティア様が静々と進み出てレオンハート殿下の隣に並んだ。
「わたくしことノストルム王国第一王子レオンハートはセレンティア・フォン・ダルトン公爵令嬢との婚約を白紙に戻すことをここに宣言する」
会場がどよめいた。
私たちもお互いに顔を見合わせた。
幼い頃からの婚約で仲睦まじい姿も何度となく拝見していた。思いもよらない言葉だ。
「諸君、誤解のないように。これは婚約破棄でも解消でもない。よってセレンティア嬢になんの瑕疵もない。
ただお互いまだ若い、未来のことを決めすぎているのではないかという思いからこの結論に至った。セレンティア嬢も同じ思いだ」
セレンティア様のからだがピクッと動いた。先程まで凛としたお姿だったが俯いてしまわれた。
「…従って私の結婚もゼロベースだ。別の令嬢との結婚もあり得る」
レオンハート殿下がこう付け加えられた時点で場内騒然となった。
私だって叫びたい、どうして!と。
「レオンハート殿下!」
セレンティア様だ。よく通る美しい声で
「婚約白紙の件、確かに承りました」
と言って臣下の礼をとった。
あまりの見事な振る舞いに会場内は静かになった。
レオンハート殿下とセレンティア様、それぞれ別のドアから退場されていく。
「どういうこと?」
「ひどいわ!」
メアリーとフェリシアが口々に文句を言った。
「きっといろいろな女と遊びたくなったんでしょ‼︎」
私がぶちまけた。
「おいおいっ」
キリアンがなだめて
「小さな時から結婚相手が決まってるって感覚、俺たち平民にはないからなぁ」
ケイレブに向かって困り顔で言った。
「なんか、こう、窮屈?」
ケイレブも結構酷いこと言っている。
もう!なんなの?男性陣!
レオンハート様許すまじ!
私は心の中で叫んでいた。
定期的に大会も行われた。
ケイレブがいち早くコツを掴み無敵となった。
『ディベートの神』と言われるようになり、出る試合みな勝っていった。
残りはあと一大会。
私は一矢報いるべく仲間を集めた。キリアンもそのひとり。人気があるから票がこちらに流れるかもと邪な考えからだ。
そして激戦の末、私たちが勝利した。
ケイレブに土をつけたのである。
「あの試合は無効だよ」
「あの最後のディベートのこと?なんでよ?」
「ララの最終弁論、あれ、時間オーバーだよ」
「そんなことありません!」
頭にきた!
「オーディエンスだって良しとしたし、だいたい時間を見ていたリーブス先生だってギリギリだけどOKだって」
「あの時はみんな俺の一敗を切望していたからそんな流れになったんだ」
ふたりでプンプン怒ってダンスをやめてきたのでキリアンが目を丸くして
「仲直りダンスでより喧嘩するってどういうこと?」
と、驚いていた。
私がことの顛末を話すと
「まあまあまあまあ」
またグラスワインを持ってきてくれた。
「さっ、仲直りと。ララとはしばらく会えなくなるんだからさ」
そうだった。これじゃ後味が悪すぎる。
「…私は帝国に留学するけどふたりは?卒業後どうするの?」
「俺は実家のバークレー商会に就職する。親父の、いや、バークレー会頭の元で修行して商売のノウハウを学ぶよ。実践あるのみだ」
キリアンは国内でも有名なバークレー商会の跡取り息子なのだ。
「…俺は…神学校へ入学することになった…」
「え?」
「あなた、文官になるんじゃなかったの?」
ケイレブはちょっとムッとしながら答えた。
「文官の試験には合格したよ。ただ採用試験にはどうしても受からないんだ。どこも」
ケイレブの説明によるとこうだ。
今年の卒業生にはノストルム王国の第一王子レオンハート様がいらっしゃる。王子付きの文官になりたいとか王宮で働きたいとか文官の人気は鰻登り。特に貴族の令息がこぞって文官試験を受けた。採用はやはり貴族の令息から埋まっていく。例年だと何人かの平民が採用されたが今年は全く空きがなかった。
「理不尽だよ!全く!」
ケイレブは唇を噛んだ。
「…神学校ってあなた聖職者になるの?」
「いや、そういうのはもっと小さい頃からずっと通ってる人たちだ。
俺みたいなのはたとえば地方の文官になるとか、教職につくとか、王都に残りたければ大きな商家の事務職とかいろいろ就職の面倒を見てくれるらしいんだ。
2年通うことになると聞いている。
実はリーブス先生に相談したんだ。そうしたらそんな道もあると。来年また文官試験受けて採用試験受けてって大変だろ?2年あっても確実な方を選ぶよ。俺は金を稼いで故郷の村に送りたいんだ」
そういえばケイレブは地方の小さな村の出身でお父様が村長さんだと言っていたわ…
「なんだかヤな話だな」
キリアンがため息混じりに言った。
「貴族って言っても身分がいろいろあるだろう?平民もいろいろさ。たとえばキリアンは金も地位もある。でも俺は田舎者で貧乏な平民。
勉強していれば報われると思ったんだけどな」
なんだか重い話だ。かける言葉もみつからない。
その時
「ララ~」「みんな~」
「卒業おめでとう」
メアリーとフェリシアが声をかけてきた。ふたりは子爵令嬢であのディベートの時の戦友だ。
ふたりの明るい声は場を和ませた。
「ねぇ聞いた?
レオンハート殿下から何か発表があるみたいよ」
「えっなに?」
「さあ、結婚のことかしら?婚約者のセレンティア様が見えてたわ」
卒業生でなくても婚約者ならこのパーティーにパートナーとして参加できる。セレンティア様は確かアラータス学園の一年生だ。
「ほら、始まるわ」
「諸君、まずは卒業おめでとう。
私事ですまないが少し時間をくれるかな?
セレンティア嬢、前へ」
セレンティア様が静々と進み出てレオンハート殿下の隣に並んだ。
「わたくしことノストルム王国第一王子レオンハートはセレンティア・フォン・ダルトン公爵令嬢との婚約を白紙に戻すことをここに宣言する」
会場がどよめいた。
私たちもお互いに顔を見合わせた。
幼い頃からの婚約で仲睦まじい姿も何度となく拝見していた。思いもよらない言葉だ。
「諸君、誤解のないように。これは婚約破棄でも解消でもない。よってセレンティア嬢になんの瑕疵もない。
ただお互いまだ若い、未来のことを決めすぎているのではないかという思いからこの結論に至った。セレンティア嬢も同じ思いだ」
セレンティア様のからだがピクッと動いた。先程まで凛としたお姿だったが俯いてしまわれた。
「…従って私の結婚もゼロベースだ。別の令嬢との結婚もあり得る」
レオンハート殿下がこう付け加えられた時点で場内騒然となった。
私だって叫びたい、どうして!と。
「レオンハート殿下!」
セレンティア様だ。よく通る美しい声で
「婚約白紙の件、確かに承りました」
と言って臣下の礼をとった。
あまりの見事な振る舞いに会場内は静かになった。
レオンハート殿下とセレンティア様、それぞれ別のドアから退場されていく。
「どういうこと?」
「ひどいわ!」
メアリーとフェリシアが口々に文句を言った。
「きっといろいろな女と遊びたくなったんでしょ‼︎」
私がぶちまけた。
「おいおいっ」
キリアンがなだめて
「小さな時から結婚相手が決まってるって感覚、俺たち平民にはないからなぁ」
ケイレブに向かって困り顔で言った。
「なんか、こう、窮屈?」
ケイレブも結構酷いこと言っている。
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私は心の中で叫んでいた。
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