悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません

由香

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番外編まとめ

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番外編① 兄視点

「過保護であることを、やめなかった理由」

 正直に言えば、俺は負けたのだと思っている。

 妹の恋に――ではない。
 妹の「成長」に、だ。

 セレフィーナがカインを選んだ日、俺は祝福の言葉を口にしながら、胸の奥で何かが静かに崩れるのを感じていた。

「兄さま」

 そう呼ばれるたび、この子はずっと俺たちの後ろにいる存在だと思っていた。

 だが違った。

 彼女は前を向き、誰かの手を取ることを選んだ。

(……当たり前のことだ)

 分かっている。
 分かっているのに、簡単には割り切れなかった。

 ――あの日。

 六歳の彼女を失いかけた、あの夜。

 俺は理解したのだ。
 守れなかった後悔は、一生消えないということを。

 だから誓った。

 過剰でもいい。
 嫌われてもいい。

 妹が生きて笑っているなら、それでいい。

 だが――

「兄さま、私、幸せです」

 その一言で、すべてが報われてしまった。

 カインの隣で笑う彼女は、守られるだけの存在ではなく、自分で未来を選ぶ女性だった。

(……敵わないな)

 過保護であることを、やめるつもりはない。
 だが、手放す覚悟はできた。

 それが兄というものだ。

 ――過保護は、愛情の形の一つなのだから。



番外編② 騎士視点

「最強騎士が、剣より重いものを持った日」

 最初は、護衛だった。

 次に、監視役。
 そして――気づけば、守りたい存在になっていた。

 セレフィーナ・ルヴェリエは、弱くはない。
 だが、無理をする。

 だから目を離せなかった。

 兄たちの圧は、正直きつかった。
 剣よりも、戦場よりも。

 だが、それでも退かなかった理由は一つ。

 彼女が、俺のそばで安心した顔をするからだ。

「怖くないです」

 そう言ったとき、俺はこの命の使い道を見つけたと思った。

 守ることは、支配ではない。
 近くにいることは、縛ることではない。

 それを、彼女が教えてくれた。

 恋をした自覚は、遅かった。

 だが覚悟は、誰よりも早かった。

 ――彼女の未来を奪わない。

 その誓いだけは、剣よりも重い。

 今日も彼女は、兄たちに囲まれている。

 それでいい。

 俺は、彼女が選んだ場所に立つ。

 最強騎士としてではなく、一人の男として。



番外編③ 新婚後日談

「過保護は、世代を越える」

「……静かですね」

 新居のリビングで、私はぽつりと呟いた。

 結婚して、三日目。
 兄たちはまだ来ていない。

(嵐の前の静けさでは……)

 隣でカインが紅茶を淹れながら言う。

「今日は来ないと言っていた」

「昨日も、そう言ってました」

「……そうだな」

 その瞬間。

 玄関が、鳴った。

 ――嫌な予感は、外れない。

「セレ!」

「引っ越し祝いだ」

「警備配置を確認しに来ました」

 三人、勢ぞろい。

(やっぱり……)

 だが、以前と違うのは――

「無理はするな」

「困ったら、言え」

「幸せでいることが最優先です」

 言葉が、柔らかい。

 私は思わず笑った。

「兄さまたち」

「何だ」

「ありがとうございます」

 カインが、私の手を取る。

 その仕草に、兄たちは少しだけ目を細めた。

「……まあ」

「認めた相手だからな」

「条件付きですが」

(条件は残るんだ)

 夜。

 静かになった部屋で、私は思う。

 悪役令嬢だった私が、こんな未来に辿り着くなんて。

 過保護で、騒がしくて、それでも――

 とても、幸せだ。

 破滅しない未来は、今日も平和で、少しうるさい。




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