生まれ変わったら極道の娘になっていた

白湯子

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埋まった男と椿の花

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何と言うことだ。
このまま頭を埋め込んだままの忍を放置するわけにもいかない。私は慌てて物置へ行き、ノコギリを見つけた。
これがあれば…!
ノコギリを手にし急いで忍の素へ戻ると、忍がは自力で立ち上がろうとしていた。プリッとしたお尻を上下左右に振り、頑張っている。ついつい近所のおばちゃんのように影で見守ってしまう。

「……………はっ!椿か!?」

……………。
どうやら組関係の方は気配に敏感らしい。

「待たせてごめんなさい。今、助けるから。」

私は顔を傷付けないよう慎重にまわりを切っていく。ギコギコ……。
あぁ、工作の時間を思い出すわねぇ~。

「え、ちょ、何この不吉な音。………何をやっているんだ?」
「顔のまわりの床を切ってるの。」
「―っっ!!」
「あぁ!動かないで。顔に傷が出来てしまうわ。」
「ひっ!?インフォームドコンセント!!やる前に確認っっ!!」

体を揺らす忍の髪にノコギリの刃が触れた。

「あ、切れた。」
「ギャアアアアアアア!!」
「お、落ち着いて!ほぉーら、痛くないわよぉ?いい子ねぇ~!」
「もう、死にたい。」

15分後、何とか顔を抜くことが出来た。しかし、忍の顔は傷だらけだ。決して私のノコギリ技術が下手であったという訳ではない。顔で床を掘ったのだ。そりゃ、それに見合った傷はつく。

「救急箱を取ってくるわ。少し待ってて。」

胡座をかいて頭を抱えている忍にそう言い残し、救急箱の元へ向かうのであった。

*****

何ということだ………!椿にとんでもない醜態を晒してしまった。口が滑ったとき、自分でも訳が分からなくなり、いっそのこと穴に入りたいと思っていたら気づいた時には俺の頭は床の中だった。
きっと引かれてしまっただろう。……あぁ、死にたい。

しかし、なんて優しい女性なのだろう。奇行に走る俺を見捨てるわけでもなく、親身になって助けてくれる。今だって俺に手当をするために動いている。
何だこれは、幸せすぎる……!!
俺は今、とてつもない幸福感と死んでしまいたいという絶望感に挟まれている。

「椿……。」

あの女の名前である、花の名前を口にする。無意識のことに、恥ずかしくなり顔を手で覆う。
俺は中学生か……!
椿の花は春を呼ぶ花だ。あの女にふさわしい。俺にも春を運んでくれる。

「この世の春っ!」
「春はとっくの昔に終わっちゃったわねぇ。」
「―っ!?」

ガッツポーズをキメる俺の前にいつの間にか、困った顔をした椿が立っていた。
……うん。そんな表情も素敵た。

どんどん椿の花に魅入られていく。



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