僕の親友に捧げる

粒豆

文字の大きさ
7 / 11

淫夢2

しおりを挟む
「少年少女は、やがて大人になる。子供のうちはともかく、大人になった時に親友同士であまりにも距離が近かったら気持ち悪いと思う。
 ほどほどの距離を保たないといけなくなるんだ。
 どんなに近づきたくっても、それが難しくなる。
 そして、いつか君に『恋人』が出来た時、『親友』の優先順位は低くなる。
 当たり前だ。誰だって『恋人』と『友人』だったら恋人を取るのさ。
 恋人や伴侶、それから仕事なんかを優先し、友人との時間は次第に少なくなる。
 友人は時が経つに連れて、優先されなくなる。
 きっとそれが、大人になるということ。僕はそれが悲しい。
 きみにとっては、どうでもいいことなのだろうけれど。
 ……ねえ、僕のこれって『恋』なのかな?」

「……知らないよ」


香澄のことは、嫌いじゃなかった。
だけど好きでもなかった。
いや、嫌いだったかもしれない。
今となってはもう、よく分からない。
ただ、他に仲良くする人が居ないから、一緒に居ただけ。
コイツは時々凄く面倒臭いし、意味不明な事ばかり言うし。
他の友達が出来たならば、こんなヤツ、速攻で切ってやるのに。


「僕は恋愛感情というものがいまいちよく分からないよ。
 僕は君とずっと一緒に居る為に、君の一番になる為に、君に、優先される為に、
 その為に、君の恋人になりたいけれども、でも性行為をするのに抵抗がある。
 僕らの絆を肉欲で汚したくはないし、セックスをしたらもう僕らは友達ではなくなる。
 僕はもう逃げられなくなる。それが切ないのさ」


男にしては高いけど、女性そのものではないような香澄の声。
その中性的な声を、今でも覚えている。
その口から語られる言葉は、いつだって不思議だった。


「だけど『恋人同士』ではして、『友人同士』ではしないことって言ったらキスやセックスだろう?
 勿論セックスをしないカップルも世の中には居るのだろうけれど。
 友達から恋人へと関係を変える際に一番手っとり早いのはやっぱり性行為だから。
 僕たちの場合は、同性だから、尚更……。
 …………ふふ、恋ってなんだろうね。
 的欲求を抱かない恋愛感情があるのだとしたら、
 友情との区別はどうやってすればいいの?
 僕は君を愛しているけれど、この感情が友情なのか恋愛感情なのか分からないよ。
 君のこと、たまらなく好きなんだ。
 僕は君と会う為に産まれて来たのだと思うし、君とおしゃべりをする為だけに生きていたよ。
 そして、君と永遠になる為に…… 死んだのさ」


そんな風に言われても、当時はわけが分からなかった。
だけど、今なら少し分かるよ。
お前が言いたかったことの意味が。
分かるようになってしまったよ。
俺という人間との深い繋がりを求めていた、香澄。


「意味が分からない」


あの時の俺は、幼すぎてそんな冷たい返事しか出来なかった。

もし、あの日、あの時、俺がお前の告白に応えていたら……
そしたらお前は、死ななかった?
俺とお前が、もっと深く繋がれていたら、お前は死んだりしなかった?



「香澄……」

俺は香澄の頬に手を伸ばし、そのまま自分の顔を近づけた。
そして、触れるだけの口づけをする。
お前の気持ちに応え、俺たちの関係を『恋人』に変えていれば……

――そしたら、どうなった?

結局未来は、変わらないだろうか。
だけど、もしそんな事で運命を変えられるのなら、俺はお前の恋人になってやっても良かったよ。
夕焼けに染まる屋上で、暫く香澄と唇を合わせたままでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...