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46.会いたくない使者
二曲続けて踊ったら、のどが渇いて一度休憩することにする。
飲み物をもらってテラスに行こうとしたら、
ルークが近くにいた男性に話しかけられる。
「失礼、ルーク様ではないですか?」
「ああ、何か?」
「覚えていらっしゃいませんか?
ベントソン国の第三王子ユングです」
「ああ、デリア妃候補の国か」
どうやら話しかけてきた男性はデリア様の母国、
ベントソンの第三王子だったらしい。
「ええ、デリアが夜会に出席していないようだったので、
何かご存じありませんか?」
「あぁ、体調が悪かったようだな。欠席しているよ」
本当の理由は使者に会いたくないという理由だったが、
正直に話す必要はない。
ルークはデリア様に気を使って体調不良という理由にしたようだ。
「体調不良……ですか」
「ああ。だが、ベントソン国は、
デリア妃候補を出席させないつもりなんだと思っていたが」
「ええ?そんなことはありません」
「そうか?夜会のためのドレスなどは届いていないようだが」
「は?」
「妃候補が出たいと思っても、
ドレスも装飾品もなければ出られないだろう?」
なぜか第三王子は驚いているが、当然のことだ。
ドレスも装飾品もなく、どうやって出席できるというのだろうか。
みすぼらしい服装で出席してしまったら、
母国はそれだけ貧しい国だと言っているようなものだ。
「……何かの手違いがあったようです。
申し訳ございません」
「そうか。デリア妃候補のところは侍女も少ないし、
普段着るような服すら届いていないようだ。
ベントソン国は妃候補を出したくなかったのかと思っていた」
「そ、そんなことはございません!」
「そうか?妃候補とはいえ名ばかりの後宮だから、
放っておいてもいいとでも思っていたのではないのか?」
「いえ、本当に何かの手違いがあったようです。
すぐさまドレスを手配いたしますので!」
「それならいいのだが」
これで話は終わりかと思ったが、第三王子の用事はこれではなかったようだ。
「あ、あの!明日デリアに面会してもよろしいでしょうか?」
「面会?」
「ええ、後宮にいる妃候補に会うにはルーク様の許可がいると聞きまして。
この者をデリアに会わせたいのです」
第三王子は後ろにいた男を目で示した。
小柄なのにでっぷりと太った中年の男だった。
高価な装飾品をいくつも身に着けているので、裕福なのはわかるが、
そう思わせたいにしても少しやりすぎのように見える。
こんなにいくつもつけていたら邪魔になってしまうだろうに。
男と目が合ったら、にぃと笑いかけられ、
その気持ち悪さにルークの背に隠れてる。
「この男を面会?なんの用で?」
「ええ、この者はベントソン国のフェライデ公爵です。
デリアが国に戻ってきた後、公爵の後妻として嫁ぐ予定です。
その前に公爵がデリアの顔が見たいと言うので」
「ブレント・フェライデと申します。
いやぁ、一度も顔を見ずに娶るのもどうかと思いまして。
そこそこの美人だと聞いているのですがねぇ」
にやにや笑いながら腹をかいているこの男に、
デリア様が嫁がされる……。
親に売られると悲しんでいたのが本当になるとは。
「面会したいとの要望はわかった。
だが、面会をするかどうかは妃候補が決めることだ。
面会する気があるのか聞いておこう」
「デリアの意見など聞く必要ありませんよ」
「どうしてだ?」
「自分の夫になる者に逆らうわけありませんから」
「それはベントソン国の考えだろう。
妃候補として後宮にいる間はこちらに従ってもらう。
面会したくないと言われたらあきらめるように」
「……わ、わかりました」
ルークがにらみつけたからか、二人は引き下がっていった。
「何あれ。あれじゃデリア様が帰りたがらないのも当然だわ」
「まったくだ。面会はしないだろうな」
「デリア様がしたくないと言ったら、守ってあげられる?」
「大丈夫だよ。
今の後宮は入り込めないように警備を強化している。
むりやり入ろうとしたら捕まるだけだ」
「よかった……」
ほっとしたけれど、デリア様が帰った後あの男に売られるのは間違いない。
どうにかできないものかと思うけど、何もできずにもどかしい。
デリア様のことを考えていたら、私たちを見ている者が多いのに気がつく。
竜族の貴族たちがこちらを見ている。令息や令嬢ではなく、当主たち。
ルークに話しかけに来ようとしているのかもしれない。
「ねぇ、なんだか竜族の貴族がこっちを見てない?」
「多分、俺とリディに頼もうとしているんだろう。
竜王様の考えを変えてほしいと」
「あの税を取りたてるって言ったやつ?」
「ああ。今まで金を払うことなくこの国にいられたんだ。
税を取りたてられたら出て行かなくちゃいけない者もいるだろう。
竜王様の娘になったリディと側近の俺に頼もうとするのはわからなくもない」
「お願いを聞く気はないんでしょう?」
「ないね。当主たちに捕まる前に部屋に戻るか?」
「ええ、その方が良さそう。
いつのまにかラディとクレアもいないし、竜王様たちもいない。
めんどうなことに巻き込まれる前に帰りましょう?」
「ああ」
近付いて来ようとしている者に捕まらないように、
違う方向へと歩き出す。
焦って追いかけてきた者もいたが、気にせずに会場から出る。
部屋に戻った時には疲れてしまい、早々に休むことにした。
そして次の日、先に会場からいなくなっていたラディとクレアから、
意外な報告を受けることになった。
飲み物をもらってテラスに行こうとしたら、
ルークが近くにいた男性に話しかけられる。
「失礼、ルーク様ではないですか?」
「ああ、何か?」
「覚えていらっしゃいませんか?
ベントソン国の第三王子ユングです」
「ああ、デリア妃候補の国か」
どうやら話しかけてきた男性はデリア様の母国、
ベントソンの第三王子だったらしい。
「ええ、デリアが夜会に出席していないようだったので、
何かご存じありませんか?」
「あぁ、体調が悪かったようだな。欠席しているよ」
本当の理由は使者に会いたくないという理由だったが、
正直に話す必要はない。
ルークはデリア様に気を使って体調不良という理由にしたようだ。
「体調不良……ですか」
「ああ。だが、ベントソン国は、
デリア妃候補を出席させないつもりなんだと思っていたが」
「ええ?そんなことはありません」
「そうか?夜会のためのドレスなどは届いていないようだが」
「は?」
「妃候補が出たいと思っても、
ドレスも装飾品もなければ出られないだろう?」
なぜか第三王子は驚いているが、当然のことだ。
ドレスも装飾品もなく、どうやって出席できるというのだろうか。
みすぼらしい服装で出席してしまったら、
母国はそれだけ貧しい国だと言っているようなものだ。
「……何かの手違いがあったようです。
申し訳ございません」
「そうか。デリア妃候補のところは侍女も少ないし、
普段着るような服すら届いていないようだ。
ベントソン国は妃候補を出したくなかったのかと思っていた」
「そ、そんなことはございません!」
「そうか?妃候補とはいえ名ばかりの後宮だから、
放っておいてもいいとでも思っていたのではないのか?」
「いえ、本当に何かの手違いがあったようです。
すぐさまドレスを手配いたしますので!」
「それならいいのだが」
これで話は終わりかと思ったが、第三王子の用事はこれではなかったようだ。
「あ、あの!明日デリアに面会してもよろしいでしょうか?」
「面会?」
「ええ、後宮にいる妃候補に会うにはルーク様の許可がいると聞きまして。
この者をデリアに会わせたいのです」
第三王子は後ろにいた男を目で示した。
小柄なのにでっぷりと太った中年の男だった。
高価な装飾品をいくつも身に着けているので、裕福なのはわかるが、
そう思わせたいにしても少しやりすぎのように見える。
こんなにいくつもつけていたら邪魔になってしまうだろうに。
男と目が合ったら、にぃと笑いかけられ、
その気持ち悪さにルークの背に隠れてる。
「この男を面会?なんの用で?」
「ええ、この者はベントソン国のフェライデ公爵です。
デリアが国に戻ってきた後、公爵の後妻として嫁ぐ予定です。
その前に公爵がデリアの顔が見たいと言うので」
「ブレント・フェライデと申します。
いやぁ、一度も顔を見ずに娶るのもどうかと思いまして。
そこそこの美人だと聞いているのですがねぇ」
にやにや笑いながら腹をかいているこの男に、
デリア様が嫁がされる……。
親に売られると悲しんでいたのが本当になるとは。
「面会したいとの要望はわかった。
だが、面会をするかどうかは妃候補が決めることだ。
面会する気があるのか聞いておこう」
「デリアの意見など聞く必要ありませんよ」
「どうしてだ?」
「自分の夫になる者に逆らうわけありませんから」
「それはベントソン国の考えだろう。
妃候補として後宮にいる間はこちらに従ってもらう。
面会したくないと言われたらあきらめるように」
「……わ、わかりました」
ルークがにらみつけたからか、二人は引き下がっていった。
「何あれ。あれじゃデリア様が帰りたがらないのも当然だわ」
「まったくだ。面会はしないだろうな」
「デリア様がしたくないと言ったら、守ってあげられる?」
「大丈夫だよ。
今の後宮は入り込めないように警備を強化している。
むりやり入ろうとしたら捕まるだけだ」
「よかった……」
ほっとしたけれど、デリア様が帰った後あの男に売られるのは間違いない。
どうにかできないものかと思うけど、何もできずにもどかしい。
デリア様のことを考えていたら、私たちを見ている者が多いのに気がつく。
竜族の貴族たちがこちらを見ている。令息や令嬢ではなく、当主たち。
ルークに話しかけに来ようとしているのかもしれない。
「ねぇ、なんだか竜族の貴族がこっちを見てない?」
「多分、俺とリディに頼もうとしているんだろう。
竜王様の考えを変えてほしいと」
「あの税を取りたてるって言ったやつ?」
「ああ。今まで金を払うことなくこの国にいられたんだ。
税を取りたてられたら出て行かなくちゃいけない者もいるだろう。
竜王様の娘になったリディと側近の俺に頼もうとするのはわからなくもない」
「お願いを聞く気はないんでしょう?」
「ないね。当主たちに捕まる前に部屋に戻るか?」
「ええ、その方が良さそう。
いつのまにかラディとクレアもいないし、竜王様たちもいない。
めんどうなことに巻き込まれる前に帰りましょう?」
「ああ」
近付いて来ようとしている者に捕まらないように、
違う方向へと歩き出す。
焦って追いかけてきた者もいたが、気にせずに会場から出る。
部屋に戻った時には疲れてしまい、早々に休むことにした。
そして次の日、先に会場からいなくなっていたラディとクレアから、
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