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3章 魔術師科二階の学年

10.特別なローブ

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血の気がひいてしまって、レイニードに寄りかかっていたけれど、
冷たいレモネードを出されて飲んでいるうちに少しずつ回復してきた。
ルリナが時折心配そうな顔でこちらを見ていくるけれど、
他の三人はあまりこちらを見ないようにしてくれているらしい。
気を取り直すように、
ファルカとジングラッド先輩がわざと明るい声で話しているのがわかる。

「それで、ジングラッド先輩は振られたんですか?」

「おい。ファルカ。それはあんまりな質問だな。
 振られてないぞ。保留だって言っただろう!」

「だって、そんなに仲良さそうなのに、どうして保留なんですか?」

「そうね。ジンと婚約してもいいくらい好きだとは思っているのよ?
 だけど、私は一応王族なの。
 勝手に婚約を決められないのよ。
 こちらには…ジョージア王子の婚約者候補、
 のような扱いで留学してきているしね。」

「そうなんですか?」

「一応ね。断ってはいるのだけど。
 でも、ジョージア王子の婚約者が決まらないうちに、
 私たちが婚約するのはまずいのよね。
 ジンが横取りしたような形になってしまうでしょう?
 一度ジョージア王子とは話し合いしてみたいと思っているのだけど、なかなかね。
 求められてもいないのにこちらから断りを入れに行くのも失礼だしね…。」

「それは…確かにそうですね。」

「せめて、ジョージア王子が婚約者候補を決める段階になってくれたら、
 私を外してほしいと伝えることもできるのだけど…。
 レイニード、あなたの兄がジョージア王子の側近候補だと言ってたわよね?」

「はい。ライニードと言って、ジョランド公爵家の嫡男です。
 文官を目指していたのですが、卒業後はそのまま側近になるつもりのようです。
 学園でもジョージア王子と同じ学年ですから、いつも一緒にいます。」

「じゃあ、それとなく聞いておいてくれないかしら。
 ジョージア王子が婚約者を決める気があるのかどうか…。」

「わかりました。
 ライニードが知っているかはわかりませんが、聞いてみます。」

ぼんやりと話を聞いているうちに、皆がお弁当を食べ終わたようだ。
レイニードに寄りかかって休めたからか、気持ちも落ち着いてきた。
いつものように紅茶をいれようと、木のカップと紅茶ポットを出して、紅茶を注ぐ。

「先輩たちもいかがですか?」

「あらあら。そのローブ…。」

「あ。」

しまった。ついいつものようにローブの収納から出してしまっていた。
これは普通じゃないとルリナから言われていたのに。

「えーっと…あの。」

「ああ。驚いただけよ。
 そのローブ、ジンガ国の魔術具屋でしか取り扱っていないものだから、
 サウンザード国で見ると思わなかっただけなの。
 私のローブも同じところのものよ。」

「いいよな~そのローブ。
 俺も欲しいと思ってジンガ国に問い合わせたんだけど、
 しばらくは作るの無理って言われて。
 どうやって手に入れたの?」

「え?このローブって、ジンガ国のお店のなんですか?
 うちの父が注文してくれたもので、レイニードのも同じです。
 魔術師科に入学するのが決まってから注文してくれたものです。」

「エミリアの父親って魔術師じゃないよな?」

「はい。…そういえば、どうしてローブが必要だとか知っていたんでしょう?
 前にどこに注文したのか聞いたときには、
 いつかわかるよって誤魔化されたんですよね…。」

「いつかわかる…か。
 じゃあ、わかったら教えてよ。ちょっと興味ある。」

「わかりました。いつになるかわかりませんけど…。」


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